兄
そこから家までの帰り道で、兄に遭遇した。
「何やってんだ」
「そっちこそ。何やってたの。僕は母さんから買い物頼まれて、帰ってたとこ」
そう言われ兄の手元を見ると、買い物袋を持っている。
中から人参やじゃが芋が見えていることを考えると、
「今晩はカレーか」
「ハズレ。肉じゃがだってさ」
楽しそうに笑う兄を見ていると、先程までの怒りも緩和されてきた。
一緒に帰ることも久しぶりなので、浮き足だってしまう。
「なぁ暁夜」
「どうしたの」
一対一であれば、流石に逃れられないだろう。率直に俺は問う。
「真奈のこと、どう思ってんの」
「どうって」
いつも通りの穏やかな声に、少し緊張感が混じった。
「例えばほら、可愛いなとか、付き合いたいとか」
「そんなこと言われても……いきなりどうしたの、伊月変だよ」
表情にはっきり困惑の色が浮かんだ。目も逸らされるし、顔も赤い。
俺はもう一歩踏み出して
「じゃあ俺がアイツのこと好きだ、告白するって言っても良いんだな」
と切り出した。
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