七月は華の病
薺 佑季
二つの花
白雪姫の女騎士
少しホコリが舞う階段裏の影で、私より背が高い憧れの人が顔を変えて私を抱きしめている。
「…声、出しちゃだめだよ」
私の髪を細い指で耳の後ろに流し分け耳元でそう囁くと、階段を上っていく女子生徒の話し声が聞こえる。
しばらくその話し声が続くと次第に遠くなり、また静かな空間となった。
「ぁ…あの…しら、ゆき先輩…?」
「ん?」
抱きしめながらも少し顔を引き目を合わせた白雪先輩の顔は優しく微笑み、ゆっくりと優しいキスをし私は目を閉じた。
× × ×
「ゆずちゃん!もう少し声をまっすぐ通るようにお腹に声をいれて!」
「はっ、はいっ!」
私、
一年生だというのにまさかのメインのヒロイン、姫役カズハの役やるなんて…
どうやらこの部では演劇に力を入れやすいように一年目の文化祭では一年生は全員役をやるらしい。その中でもヒロイン役に私が抜擢されたのだ。理由はほんわかしていて役に似合っているから、だと…。
「カズハ様!だめですっ!
しかしヒロイン役としてもこの役は悪くないとは思う。なんといっても物語のもう一人のメイン、女侍イロハ役は私の憧れ、
白雪先輩は学園の騎士、『白雪姫の女騎士』とまで言われている。
それも納得いく。白い肌に似合う美人顔。しなやかに伸びる黒髪。ハキハキしてみんなに優しくスポーツも勉強も万能と…文武両道。
そう、まるで白雪姫が女騎士になったかのように美しいのだ。
「イロハ…ありがとう。そなたには助けてもらってばかりだわ…」
白雪先輩の頬を撫で優しく微笑む。触れた頬は思っていたよりふにっとしていて、女騎士といわれてはいるがやはり女性なだけあって肌のケアはしているのだろう。
触れていた手の指が少し唇に触れたそのとき、少し白雪先輩の顔が緩み少し顔を赤らめた。その表情の変化に思わず小声を出してしまう。
「ぇ…」
「よいのです。私めはカズハ様のお命を守ること、それが定めです。ですので簡単にカズハ様のお命を絶とうとするのはやめてくださいませ…。」
白雪先輩はすぐ顔を戻し、私の小声をかき消すように言われたセリフ。私はハッとし次のセリフを追う。
「イロハ…。」
「…はぁーいっ!相変わらず白雪さんいいねぇ、ゆずちゃんも一年生だといえど負けてないよ~!もしかしたら先輩たちよりうまいかも…」
「ちょっと
周りが、演劇部監督役の倫子先輩の発言に慌て笑いが出る。
「揺河さんありがとう。さっきの演技も動きも顔もよかったわ。…でもあなたにはちょっと変わった私が見えたかもね、ごめんなさいね。」
「え、あっいえ!ありがとうございます!大丈夫です、ちょっと意外でビックリしただけで…」
「ふふっ…」
言葉を返してると白雪先輩がすこし笑う。
「?、どうしました白雪先輩。」
「いえ…可愛いなって。」
!!
かわ…いい……?やっぱりあの噂は本当だった…?
「ゆずちゃんはもう上がっていいわよ~、白雪さん次のシーンいくよ~」
「あ、呼ばれてるわ。さっきも言ったけど今日の演技良かったわよ。お疲れ様、ゆずさん」
「へっ…あっ、お疲れ様ですっ!」
下の名前…呼ばれた……。
少し頬を赤らめ微笑む白雪先輩はとても美しく、呼ばれた下の名前がとてもうれしく感じた。
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