第85話 恋の話 二十八

 そして私は小学生になりました。小学生になった私もほとんど笑わず、そのため他の児童から、これは今で言うといじめに当たるのでしょう、そういった嫌がらせを受けるようになりました。しかし私はゾンビです。当時は「いじめ」という概念も分からず、それを受けて「辛い」という感情も持ち合わせておらず、私は淡々としていました。

 しかし両親はそうではありません。私がいじめられていると知った時、両親は本当に悲しそうでした。もちろん私はゾンビなので人の感情に疎い所がありますが、不思議と両親の感情には敏感でした。そして、「そんな両親を悲しませたくない。」という感情は、自分にもありました。―いえ、それは感情ではないのかもしれません。ただ私は両親の悲しむ顔は見たくなかった。

 そして私は、私がいじめられている理由、両親が悲しむ理由を自分なりに考えます。それは―、私が笑わないことからくるものである、そう結論を出すのに、幼い私でもそう時間はかかりませんでした。

 そこから私は工夫を始めます。それは、私がいわゆる「面白い場面」で、意図的に笑うということです。

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