第68話 恋の話 十一

 「中野さん、この後お時間あります?」

「はい。僕は大丈夫です!」

「ではあそこのレストランに行きませんか?」

「はい、喜んで!」

プラネタリウム上映後、僕たちは夕食をとるため近くのレストランに向かう。

 そしてそこで僕は先にパスタを注文し、後で平沢さんが同じパスタを注文する。

 …僕は何気にパスタが好きだ。もちろん、僕はおしゃれな方ではないし、「おしゃれ」を気にしてパスタが好きなわけではない。でもあのトマトソースの香りはいいし、和風のものではない麺の味も固さなんかも大好きだ。

 「あっ、何か平沢さんとかぶっちゃいましたね…。すみません。」

「いえ、謝る必要はないと思います。

 私の方が後で注文しましたし、このパスタ確かにおいしそうですし。」

 そう言われた僕は、「平沢さんと同じ」というだけで少し嬉しくなった。

 しかし、僕はその時少しだけ困ってしまう。なぜなら、僕は平沢さんとこれだけ長い時間過ごしたことがないからだ。

『どうしよう…。何を話せば…?』

僕がそう思い、場に少しだけ沈黙が流れる。

 こんな時、物事に対する経験値が浅い自分が恨めしくなる。

 …そしてその沈黙を破ったのは、平沢さんの方であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る