第63話 恋の話 六

 「はい。彼は人生のしばらくの間、ノルウェーのショルデンという田舎町に小屋を建てそこで1人思索に耽っていました。その時期彼は本当に1人で、外部との連絡などを絶って、哲学の研究のみをその田舎でやっていたんです。

 そんな彼の生き方が興味深くて、また少しうらやましくて、それで彼の業績にも僕は注目するようになりました。」

「なるほど。確かにそれは興味深いですね。」

 そう言いながら平沢さんはコーヒーを飲む。

その一瞬、平沢さんは下を向きながら僕の方を見、上目遣いになる。

またそんな平沢さんを、僕は無意識に見つめる。

 「中野さん、どうかされました?」

「いえいえ何でもないです。」

そんな様子を平沢さんは見てそう言い、僕は恥ずかしくなって目を逸らす。

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