第58話 恋の話 一

 「もうすぐ2月、ですね…。」

「そうですね。」

 その日は1月の終わり。長かった冬ももうすぐ終わると言えば終わるが、まだ2月も寒いよな…僕はふとそんなことを考える。

 …その日、僕は平沢さんと一緒に大学近くのカフェにいた。

 その日の平沢さんの服装は、ベージュの長めのコートの中にうすいピンクのセーター。もちろんその服装はとてもおしゃれで、毎回同じような雰囲気のコーディネートしかできない僕はそのことに多少恥ずかしくなる。

 「それで、今日は―?」

「あ、きょ、今日は僕が最近ハマっている哲学者の『ヴィトゲンシュタイン』についてお伝えしたいと思いまして…。」

 …そこでなぜか妙に緊張し、少し嚙んでしまう僕であった。

 「それは、心身問題関連の哲学者ですか?」

「いえ、少し違うのですが…。

 …心身問題の方が良かったですか?」

僕がそう訊き返すと、

「いえいえ大丈夫です。

 中野さんの話、続けてください。」

「ありがとうございます!

 ではお話しします。」

 そう言って僕は、ヴィトゲンシュタインについて語り始める。

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