第22話 プロローグ 二十二

  「あ、でも、そのコート汚れてないですか?」

「―大丈夫です。」

そう言ってその人はその場を立ち去ろうとする。

 「あ、あの…。」

 「―どうかされました?」

『僕、何やってるんだろう…?』

 完全に立ち上がったその人はその場から離れようとするが、なぜか僕はその人を呼び止めてしまう。それは僕にもよく分からない感情からくるものであった。ただ、

 『この人には何かがある。自分と似たものが、何かある。』

 僕は何の確信もないにも関わらず、そう思ってしまった。

 「い、いえ、ただ…。」

 そこまで言った僕に対して彼女は、

「あ、私、そういうのはちょっと―。」

そう言う。

「…えっ!?」

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