ありふれた日常


朝、起きた

晴れていた

だがおれは工場勤務なのでそんなことはどうでも良かった

関係なかった

太陽が出てようが出ていまいが

どうでもいいのだ

永久に続く地下労働のような仕事内容だった

だがその日は違った

日曜だったのだ

だからおれは工場へは行かず早朝市場へと出掛けることにした

レタス売りのおばちゃんに声を掛けられた

「そこのお兄ちゃん、レタス安いよ」

おれはレタスは間に合っていたので買わなかったが粋な会話を楽しんだ

家に帰ると少し遅めの朝食をとってシャワーを浴びた

勢いよく放射される水はおれの毛乳頭を容赦無く刺激し毛穴に溜まっていた汚れをまとめて洗い流してくれた

ふと視線を移すとカタツムリが浴室の壁を這っているのが見えた

おはよう

そう言って叩き潰した

シャワーを浴び終えてバスローブ姿で自室をうろついた

サイレンの音が近付いて来た

窓から覗くとパトカーから警官が降りこのマンションへと入って来るところが見えた

暫くすると扉を叩く猛烈な音が聞こえて来た

「警官ですけど! 中に入れてねっ」

お隣りさんは大変だ

おれは顔も罪状も知らない隣人の肩にそっと手を置いて語り掛けてやりたかった

言いたかった

何を?

「明日はきっといいことあるよ」

とかそんな無責任でどうでもいい言葉を

警官が扉をぶち破っておれの部屋に入って来た


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る