料理の達人
おれの店で
ぬいぐるみが定食を食べていやがる
金を払えばまあ別にいいんだけど
どうやら金は無さそうなんだ
おれは店を閉めて
久しぶりに電車で出掛けることにした
東京はどこもかしこもブロッコリー栽培だらけだった
時代の波に乗り遅れるわけにはいかないって
隣りの顔色、伺って
「うちもそろそろブロッコリーやろうかしら?」
なんて
お前らみんな頭悪すぎだぜ
おれは道のど真ん中を歩いた
知らない奴に声をかけられた
「あなたは健康に気遣っていますか? あの川を眺めてご覧なさい、アヒルは皆、減塩に気をつけていますよ」
嘘をつけ
おれを怪しい団体に加入させようとしやがって
田舎者だからって搾取されたりしないぞっ
おれは今日は食材の調達に来たんだ
脇目も振らず歩いた
馴染みの店に到着した
「良い、宇宙人の肉が入ってるよ」
店主はここにいながらも精神だけが遥か彼方へと遠ざかっていた
「なあ、どうしちまったんだよ?」
おれは尋ねた
店主は言った
「長旅ご苦労さん、まずは搾りたて毛虫汁で喉を潤してね」
ビタミンゼットを多量に含む毛虫汁は頻尿の軽減にも効果があるという説明は七十分にも及んだ
おれは帰ることにした
有名店のドーナツを買った
店員にビンタされた
おれの髪型がどうとか喚いていた
家に辿り着いたらまだぬいぐるみが定食を食べていた
もうずっとそこにいろよ
半ば諦めたように見つめていたら帰った
………まさかあいつおれの嫁じゃないよな?
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