第5話 行く前には準備がいる!
ーー王都イレーネ。
そこに向かおうと意気込んだ私だったが、黒崎さんに止められた。
外に出た時だった。
「まあ。待ちなさい。そのままで行った所で、あの“モザ草原”の、サイキックや“ダークウルフ”らに、やられるだけだ。」
黒崎さんは、右手に金色の光を出した。
太陽の陽射しが照らす森の中だ。
その丸太小屋の前で、黒崎さんの右手は輝いた。
なんだか……眩しいと言うより、神々しい。
「本来なら、こんなカタチではなく……ちゃんとした“形式”があるんだが、この際。仕方あるまい。初期装備を授けよう」
え? なに? なんだって?
初期装備?
私の頭は?がたくさんだ。
そしてーー、これを受け取ったら二度と……元の世界に帰れないんじゃないかと、不安が過ぎったのだ。
飛翠も私も、黒崎さんから目が離せない。
「まずは“飛翠くん”だな。君はこれだ。」
黒崎さんの右手に出てきたのは“剣”だ。
「え? なんか長くない??」
その剣は、大きい。
何となくではあるが、良くマンガや映画などで観る、剣。ソードと呼ばれるものよりも、刃が長い。
「君の体格からすると、これぐらいが丁度よい。“
と、右手に持つ黒崎さんだが、その身長は私より若干……低い。黒崎さんより、剣は長いんじゃないだろうか。
150は超えている。
黒崎さんは、そんな“大剣”を、右手で軽々と持ち飛翠に差し出したのだ。
その手に光っていた金色の光は、消えていた。
柄と呼ばれる部分は、黒のグリップみたいになっていた。刃よりも細いので、見てるだけで重そうなんだけど……。
飛翠はそれを軽々と持つと、少し離れてぶんっ! ぶんっ! と、片手で振り回した。
なんとまー……ここまで“剣”が似合うとは思わなかったよ。
グリップみたいな持ち手だからか、握りやすいのか、右手で振り回していた。
刃は銀色で、光に反射している。
ただ、長刀みたいに長い。
「確かに軽いな。金属バットぐらいか? 長さも鉄パイプみてーだし。」
と、飛翠は言うと剣の刃をまじまじと見つめている。
発想がどうしてそう野蛮なんだ。
明らかにじゃないか。
「その剣は“
黒崎さんは、飛翠を真っ直ぐと見つめるとそう言った。
飛翠は、剣の刃を右肩に乗せた。
担ぐ様に。
なんで……サマになるんだ。そんなに。剣なんか持った事……無いよね?
イケメンのチカラは、ぱねーっす。
「さて。次は“
黒崎さんはそう言うと、右手に金色の光を出し始めたのだ。
私……? え? 待って。剣とか言うの!?ムリ!! 私はこの御方と違ってぶんぶんと、振り回せません!
女のコですから!
とても不安になりながら、黒崎さんを見上げた。黒崎さんの右手に出たのは、長細い棒の様なものだった。
それは、銀色に光り輝くなんだか……カンフーの棍棒の様に見えた。
「“ロッド”じゃ。」
と、黒崎さんは差し出したのだ。
私はそれを受け取った。
長い……。160近い私の身長よりも長い。飛翠よりは、低いか。
あ。でも……軽い。
それに、先の方が少し太い。これなら叩けそうだ。
持ち手は硬くて本当に鉄パイプみたいなんだけど、その先端は少し太くて頑丈そうだ。
何よりも円筒なので握りやすい。
流石に……くるくると回せそうにはないが。
ん〜……だけど、地味だよね。
なんか装飾もないし。ただの銀色の棒だ。
「ロッドって……なんか頭の方に冠みたいのとか、円みたいのとかついてて、華やかだと思ったけど。」
と、私はそう聞いた。
そうそう。なんかファンタジーのアニメ見た時に、翼とかついてたロッドをカワイイ女のコが、振ってたのを思いだしたのだ。
華やかなイメージがある。
これは、ただの銀の棒だ。
飛翠の言う、鉄パイプと何ら変わりはない。
「初期の武器だからな。それも“進化”する。“
「審判の心……? え? なにそれ。」
「“意味”はそのうちわかる。」
黒崎さんは、私の心配の顔を他所に笑っている。その紫の右眼がどうしても、気になる。
と言うより……武器までもらってしまった。
え? なんか完全なゲームみたいな展開になってきた。
これは……ヤバい気がする。
あの“
ウソでしょっ!?
ちらっと飛翠を見れば、ぶんぶんと勇ましく剣を振り回してる。
子供がおもちゃの武器で、なんとか戦隊! とか、やってるみたいに。
「後は……コレだ。」
と、黒崎さんはブラウンの作務衣から巾着を取り出した。布きれの様な巾着だった。
けれど、深い緑色をしていた。
巾着を開けると中から、宝石の様に煌めく“石”みたいのを出した。
「これは”魔石“と呼ばれるものだ。この世界”イシュタリア“の元素が、塊になったものだ。」
イシュタリア? ああ。そうか。ここはそう言う名前の“世界”だった。
そういえば言ってたっけ。
黒崎さんはその中から石を三つ。
取り出すと掌に乗せた。
私と飛翠は自然と、黒崎さんの方に集う。
飛翠は剣を地面に刺し、覗きこむ。
「これは“紅炎石”。」
どれも丸い石なんだけど、凄くキレイ。
ダイヤモンドみたいにキラキラしている。
黒崎さんが、持っているのは真紅に煌めく丸い石だ。宝石の塊みたいにキラキラしている。
でも、結構大きい。
「ビー玉より大きいよね?」
「スーパーボールってわかるか? それに似てる」
私の問に飛翠がそう言った。
私は首を振る。
「知らない。なにそれ。スーパーでしか売ってないの?」
「あー……悪かった。忘れろ。」
飛翠は空を仰ぐ様に上を見ると、そう言った。
んん? なんで呆れられたんだ?? え? なに?? 気になるんだけど。
ごほん。
と、黒崎さんが咳払いした。
話の“コシ”を折ったからだろう。
どうもすみません。
「良いか? この“紅炎石”を武器に装着させる。そうすると“炎の魔法”が使える様になる。ただし、どの武器にも三つ。までしか装着出来んから途中で取り換える事になる。」
と、黒崎さんはそう言った。
「え? それってなんだか大変じゃない? だって途中で付け替えたり出来るの?」
あんなバカでかい“サイ”みたいな怪物とかと、戦ってる時に付け替えろ? それってかなりの上級者なんじゃなかろうか。
「大丈夫だ。その話はちと、長くなる。後で教えてやるから。とりあえず。“紅炎石”。それからこっちは、“白氷石”。“紫雷石”」
と、三色の“煌めく宝玉”みたいな石を出した。どれも本当に綺麗だ。
中でも私が気に入ったのは、“白氷石”とやらだ。丸い石は透明の水晶みたいなのに、中にうっすらと煌めく水色の結晶。
そう。雪の結晶が入っている。
「キレー……」
光に当てるときらきらと水色に煌めく。
水晶と結晶のコラボが、何とも美しい。
「これ。いいな。」
飛翠が手にしたのは紫の宝玉だ。
私も覗く。
「凄い! 何これ? 金!?」
紫に煌めく宝玉の中には、金色の稲妻の形をした結晶が煌めいていた。
飛翠は、その稲妻の金が気に入ったんだろう。
絶対。
となると……気になるよね。
私は紅い宝玉も手にした。
「あ。やっぱり。」
真紅の宝玉の中に煌めくオレンジ色の、火を表したカタチ。メラメラ燃える様な。
それも結晶になっていた。
「その中に入っているのが“元素”の塊だ。周りは元素を傷つけない為に、創りだした器だ。それも天然だ。元素の力を秘めているから“魔石”と、呼んでいる。」
黒崎さんは、杖を手にしながらそう言った。
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