君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達はお尋ね者!?〜
高見 燈
第1章 お尋ね者の私と飛翠
プロローグ 古書店の案内
はぁ……。
その日は本当に最悪な日だった。
今……思うと。
私は、“
都内の高校に通う2年生。16歳。
今年で17です。
平凡な毎日を送るただの女子高生。
なのだが……。
私が住むのは東京とはいっても、かなり郊外。未だ田園風景が広がりそこに、高層ビルと大きな川が広がる。
ちょっと不思議な景色の広がる街。
堂々と都内に住んでます!とは、言えない場所だ。
高校も家から近くて、歩いて三十分圏内。まぁ、なのでどうしても行きたかった訳ではないが、選んだ場所でもあった。
そこにーー、小学校から完全な幼馴染みという名の“厄介なヤツ”と、通っている。
この日も……いつものように、学校に行って親友の“舞子”と、喋って帰ってくるつもりだったのに……。
その親友と“大喧嘩”をしてしまった。
原因はその“幼馴染み”だったりする。
私にとっては、ただの“俺様で面倒臭い男”なのだが……みんなにしてみれば、そうではないらしい。
たしかに。顔はいい。
綺麗系だし、背も高いし、クールビューティーだ。うん。それは、認める。
一日中見てても飽きない顔だ。
さらっさらの艶のある黒髪だし、線も細くてどうしたらそれ維持できんの? と、羨ましくなる髪だ。
それに目。スッとしてて凛々しい。あの目は私も、わりと好きだったりする。
いや。そうじゃないだろ。褒めてどーする。アイツのせいだっつーの。
とにかく……彼のお陰で、高校生活で唯一出来た親友を失った日だった。
とぼとぼと、歩いていると
ヴー……ヴー……
スマホが鳴る。
大通り歩くと、車の音で聞こえないのでバイブ設定にしてある。
セーラー服の胸ポケットで、振動した。
もぉ! だ〜れ?こんな時に!
今は誰とも話したくないんだよな……。
自然とスマホを取る手すらも、のろのろになる。
「うわ。まじ?」
画面表示されてるその名前に、私の顔はきっと引き攣っていただろう。
いや、とてつもなく嫌そうな顔をしていたであろう。
“
とりあえず通話に出る。
タップじゃ。
うるさいからね。でないと。
「はい? 何か御用ですか?
ふんっ! このぐらい嫌そうに喋れば諦めるだろう。どうせたいした用事じゃない。
メシ食わせろ。ぐらいだ。私に用なんて。
「あ。」
あ!? あ。ってなんだ?
なにその“ひと声”! それいる!? 掛けてきといて。
「
おーおー。そのハスキーなヴォイスも、今日は聞いててイラッとする。
「何か御用ですか? これから趣味に勤しむので切りますよ」
思いっきり嫌味っぽく言ってみた。それはもう刺々しく。
だが、返ってきたのは
「“
と、その一言だった。
それだけ言うと通話は切れたのだ。
一方的に。
はぁ?? なんなんだ。
ねぇ? なんなの? その勝手な感じ!!
ぽんっ!
私は少しイラつきながら、スマホを強くタップした。
“月読”は、私の通う古書店だ。
この通り沿いにある少しーー、妖しいお店だ。余り、繁盛しているとは思えない。
何故なら……。
私はその雑居ビルの前で立ち止まる。
地下にあるし、この狭い階段。
それに急なんです。
慣れてはいるけど、少しでも足踏み外したらすってんころりん。下までノンストップ。
転がり落ちて…ち〜ん。だね。きっと。
それに、このグレーのドア。
木製なんですけどね、なぜか……コテコテのグレーなんです。
セメントを、真似たんだろうか?
“OPEN“。木製のプレートはドアに掛けてある。いつでもこの表示。
反対のCLOSEは見た事がない。
二年ぐらい通ってるけど、定休日って言うのと、営業時間を知らない。
常にOPENだから、聞いたことがないのだ。
ガチャ。しっかりと開くそのドア。
中は薄暗い。そんなに広くないので、このうっすらオレンジライトで、充分ひかりは届く
古書のこの埃臭さとカビ臭さが、何とも言えない。心地よい。
棚は、所狭しと並んでいて、入り切らない本達も、積上げて床に放置されている。
なので、余計に狭い空間に見えてしまう。
「“
とは、この店“月読”の店主である。
おじいちゃん。なんだけど、歳はよくわからない。いつも、杖ついて作務衣みたいな格好してる。
白髪っぽい頭をしてるのはわかるんだけど、その髪は、束ねていてオールバックだし。
黒い眼鏡を掛けた一見……あぶない人。に見えるけど、そこそこ優しい。
表情がいつも笑ってる。にこにこと。
それならあぶないってのは、失礼だ!と、思われるかもしれないが……目が笑ってない。眼鏡の奥の目は、笑ってないのだ。
「いないのかな? まあ。いいか。」
珍しいな。いつもは声を掛けると奥から出て来るのに。
何度か見せて貰ったことのある、黒崎さんの“書斎”。と言ってもこじんまりとしていて、書籍と机しか置いてない個室。
三畳ぐらいの本当の個室だ。
そこで、いつも本を読んでいる。
暗いのに机の上のランプしかなくて、よく目が疲れないなぁ。と、思う。
私はお気に入りがあるので、その棚の前に向かう。ここの棚は下に台が無いから、本屋みたいに並んでない。
棚にしまってあるので、この狭い空間でも充分。立ち読みスペースになっている。
私が、好んで読むのは“王子様やお姫様”が登場する物語だ。ファンタジーの世界ではなく、完全なメルヘンの世界。
昔懐かしい人魚姫や、白雪姫、シンデレラ。
それらと変わらない“お姫様を愛する王子様”が、出て来る物語を読むのが日課。
一冊……手に取って開く。
「あれ? 間違えたかな?」
開いてびっくりしてしまった。
いつものメルヘンチックな走り書きではなく……何やら、ドラゴンみたいな絵が描いてある。それに炎みたいのを吐いている。
「いた。お前。よく飽きねーな。毎日」
でた! この声。
「飛翠」
である。身長180越え。なんでそんなにデカくなったんですか? 貴方は。と言うほど、デカい。
“
私の小学校からの幼馴染みだ。
高校までずるずると、一緒になってしまった。
この威圧的な態度も変わらない。
見下されてるから余計に感じるのかもしれない。
「なに読んでんだ? は? ファンタジー? とうとうそっちにまでいったか。」
飛翠が、私の持つ本を覗き混む。ライトブラウンの瞳。
イラッとする! この物の言い方!
「うるさいなー。ほっといてよ。私の勝手でしょ!」
覗きこんどいて、その言い方はなんなの!?と、思いつつもページを捲る。
紋章みたいな絵が描いてあった。
「え?」
その時だ。
その紋章が光ったんだ。
しかも紋章だけじゃなくて、私と飛翠の前にその光は、現れた。
白い光ーー。
それに包まれる。
視界が真っ白になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます