眠れない日の話

小鳥遊奏多

1日目

今日はなんだか眠れない。

明日の仕事が嫌とか、遠足の前日とかではない。かといって、充実していないから眠れないわけではない。なんなら、仕事は定時に終わらせて、楽しみにしていたイチゴのケーキを食べ、なんの不満もない状態。なのに、眠れない。


おそらくはお正月休みで不規則な生活をしてしまい、体内時計が壊れてしまったからなのだろう。

とはいえ何もしないわけに行かない。少しでも眠気を誘うためにストレッチをしてみたり、本当は逆効果だけどスマホを見てみたり。はたまた、難しめの本を読んでみたり。

全部やってみたけど、全然眠気は襲ってこない。そうこうしている間に、時計の針は4時を指している。

とてもいい時間だ。寝るには遅すぎるけど、明日の仕事を考えると起きてもいられない。

20歳の私は布団に入ると、すっと寝れていたのだがここ最近は眠れない。大学生までは仲良くやれていたはずの大親友・布団の突然の裏切り。裏切られてはいないが、そんな気分になった。ああ懐かしや。すやすや寝ていた頃の私。


チクタクチクタク……。


時計を置いていないから、そんな音はするはずもない。なのに、何故か聞こえるような気がする。そう、少し深夜テンションになってきたのである。

そして、深夜テンションの私は思いつく。

「そうだ、こういう時こそコタツに入ろう。そしたら、少しは眠くなるはず」と思い立つとすぐさま、布団からコタツに移動。

そんな浅はかな考えで人間が眠くなるはずはない。依然として、眠気は起きない。眠気は起きないってなんだか、不思議な表現で少しむず痒い。


チクタクチクタク……。


するはずもない音。時間は静かに過ぎていく。

こうなったら、少しでも眠くなることを考えよう。……。

しばらく考えてみたが、私には眠くなるような議題がなかった。


そうだ、温かい飲み物でも飲もう。お腹が温まると、眠くなると聞いたことがある。思いついたと同時に冷蔵庫から牛乳を取り出し、ココアの粉をマグカップへ。牛乳を入れて、レンジにかけた。

牛乳が人肌程度まで、温まるのにかかった時間は約2分。温め完了の音がなり、レンジから取りだしスプーンで混ぜる。

想像以上に熱い。熱いから、飲めない。そうなると、ぬるくなるまでコタツでゴロゴロしていよう。

ゴロゴロを決意した私は、再度コタツに入る。コタツの中は完全に暖まっていて、少し暑い。


チクタクチクタク……


あるはずのない時計は朝の5時を指している。少しずつ外も明るくなってきた。

ああ、なんで今になって眠気が……。いつもこうだ。ココアとか、コーンポタージュを冷ます間に眠気は襲ってくる。

6時30分には起きなければ、会社に遅刻してしまうのにこんな時間に眠気が来てしまった。あと、1時間半も眠れない。だけど、脳は眠れと信号を送ってくる。今寝てしまったら、確実に遅刻コースではないか。

明日の私はきっと起きられる、と自分に言い聞かせる。

そんなことより、私のまぶたは落ちてきている。もう我慢の限界だ。我が親友・布団の元へ行こう。と思ったが、もう起き上がることは出来ない。

私の思考は完全に停止し、身体が思うように動かない。でも、なんとかほふく前進で布団へ近づく。

だが、コタツの魔力には勝てない。


もう限界だ。


そう感じた私は、静かに目を閉じた。



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眠れない日の話 小鳥遊奏多 @kanata_T

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