勇者の役目

 話をちゃんと聞くために馬車を降りてから耳を傾ける。昼間は元気にしていたのにどうしてそんなことに。どう聞くか考えあぐねている俺の様子に気付いてか朝日の方からそれを話し始めてくれた。


「……さっき何の気もなしに明日の用件について検索をかけてみたんです………」


 あの使い魔にそんな予知じみたことが出来るのは予想外だったがそれよりも驚いたのは用件の内容だった。


「返ってきた答えは戦争の為に勇者を前線に出す………」


 ウェイザー婆さんと話してたことがまさかそんな近くに迫っているとは思ってもみなかった。そして速攻を仕掛けるつもりなのかは知らないが禁じ手に近い朝日を戦わせるとは。確かに勇者朝日は強い、雑に一番槍として出しても大打撃を与えるほどに。だがその後に残る問題があることを王は理解していないのか。


「………私は人を殺さなきゃいけないんですか………?」


「どんな気持ちで殺せばいいんですか……?」


 朝日は残酷な質問を投げかけてくる。そしてその全てが元勇者経験者の俺に深く刺さる。恐らく朝日はその事を知っている。故に問いかけてきたのだろう。責める意味ではなく対処法として。期待されているところ悪いが俺にそれを答えることは出来ない。その質問に答えるということは俺の答えが少なくとも間違いではないと教えることになるのだから。だから俺は泣き続ける朝日の手を握り一言だけ呟いた。


「大丈夫だよ、そんなに心配する必要はないから……その為に俺がいるんだからな………」

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