35 せっかく双子でまた巡り会えたのだから最期まで一緒にいよう!【桜SIDE】
ローズが悪魔の体内をあれこれ探っている間、デュナミスは恐る恐る私の方に寄ってくる。
「お、おい? これはどういう状況なんだサクラ」
「えっと、話すと長くなるんだけど……」
すると私はデュナミスの背後に誰かが倒れていることに気づいた。そばかすが特徴の、前髪で目を隠している男の子だ。どうやらデュナミスの試験のペアのモーブ君というらしい。私はそっとモーブ君の身体を抱いて、顔を覗きこむ。呼吸はしているようなので、本当に気絶しているだけか。よかった。軽く声をかけると、「んん」と口から洩れる。
「……? こ、ここは……俺は一体……? ……!! ひぃいいっ!? あの悪魔は!? 俺はついに悪魔に食われたのか!?!?! ここは天国!?!?」
「あはは、ちゃんと生きてるよ。悪魔はもう大丈夫。私の妖精が今成敗してるから」
「っ!!!!!」
男の子が石像のように硬くなった。どこか気分でも悪いのだろうか。そう尋ねるとブンブン首を横に振った。
「いえいえいえとんでもないです! む、むしろ……いい……です!!」
「? そっか。それならよかったです」
「さ、サクラ! モーブ君は私が看ておくから大丈夫だ! ……まったく、これだから人タラシは……!!」
デュナミスが慌ててモーブ君を私から奪う。するとその時だ。ローズが陽気な声を上げた。
「──サクラ! あったわよ! 貴女のお兄さんネ!」
「!」
私はすぐに立ち上がる。するとローズの手から小さなエメラルド色の火の玉が私の方へ寄ってきた。火の玉は私の目の前にふよふよ佇む。私は無意識にその火の玉の名前を呼んでいた。
「……蓮……、」
「────、」
その言葉と共に、私の涙も零れる。蓮は私を慰めるように私の顔を一周した。私は涙を拭う。
そんな火の玉姿になっても、蓮は私を想ってくれるんだね。分かっていたけどやっぱり蓮は私の大切なお兄ちゃんだ。……こんな事、本人の前では絶対に言わないけど!
「早く目を覚ましなさいよ! 馬鹿蓮!」
「────!!」
魂は頷いたような動きをすると、まるで空気に溶けたかのように消えた。私はすぐさま走った。足が痛い。喉も血の味がする。今日はなんだってこんなに走らないといけないの! これも全部蓮のせいにしてやるんだから!! 絶対に毎日私にクッキーを作ってくる刑にしないと気が済まない!
すると突然私の足が空振りをする。どうやらローズが私の両脇に手を挟んで宙に持ち上げたようだ。
「再会は早い方がいいでしょ? 飛ばすわよ!」
「ローズ! ……ありがとう!」
ローズが先ほどの湖まで飛んで私を連れて行ってくれた。
そしてそこには──レックス様に抱きしめられている見慣れた後ろ姿。
……って、なにあいつレックス様に抱きしめられてんの!? ずるくない!?
私はすぐにローズに下ろしてもらって、そのままの勢いでその後姿の尻を蹴ってやる。「いてぇ!」とこれまた聞き慣れた声が辺りに響いた。
「──おい!! 何するんだよサクラ!!」
「ふーんだ! 私より先に(レックス様に)抱きしめられてる方が悪いんですけど!?」
「あ、こ、こここれはふ、不可抗力だ!」
蓮はレックス様の腕から抜け出すと、私の前に立つ。そうしてふっと優しく笑った。ゆっくり私の頭を撫でる。いつもみたいに。
「サクラ、ありがとな」
「~~~~~~~っっ!! ……うっ、ば、ば、ばぁーかっっ!!」
私はその場で泣き崩れた。その上から蓮が優しく私を抱きしめる。
──もう二度と会えないかと思った。また離れ離れになるんだと。
──でも、蓮はここにいる。ここにいるんだ!!!
私は気が済むまで、蓮の胸の中で泣いた。今日は蓮のせいで泣きっぱなしだ。
──その後、私達は気絶した悪魔を連れてガーネット先生達に事情を話した。
まさか森に悪魔がいるとは思わなかった先生達は大慌てで試験を中止し、生徒達の無事を確かめる。幸い、私達以外に悪魔の被害にあった生徒はローズの言う通りいなかった。悪魔の魔力を感じ取ったガーネット先生の
どうしてすぐに先生達に報告しなかったのかとこっぴどく叱られたけれども、ひとまず被害に合った私達は一足先に保健室に行くことを許してもらえた。私は「足が痛い」とごねて、蓮の背中に飛び乗る。
「蓮のせいでここまで足が痛いんだから蓮が背負ってよね!!」
「うぉっ。あぶねぇな! ……ハイハイ、分かったよ」
「うむ、サクラと言ったか? よかったら余が背負うぞ。レンは疲れているだろうしな」
「え!? あ、い、いえいえいえいえいえいえ!! とんでもございませんです!! レックス様の背中なんて乗れません!! もれなく私が爆発します!!」
「そ、そうか」
「……おい! いいのか桜? 今の絶対レックスと距離を縮めるチャンスだっただろ!!」
蓮がそう私に小声で言った。私はそんな蓮の頭を小突く。「いてっ」と間抜けな声が返ってきた。蓮の肩に回す腕の力を少し強め、小さい頃から変わらないその背中に頬をくっつける。
「──いいの! 今は
私がそう言うと、蓮は少しの間静かになって「そうかよ」とぶっきらぼうに返してきた──。
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