09 せっかく友達になったのだから仲直りしたすぎる。【桜SIDE】


「ほら見てみなさい! デュナミス様自身認めたわ! あぁ、なんてお優しいデュナミス様。デュナミス様は本当にお優しいから、下民に注意できないでいたんですわね。素敵……っっ」

「……あぁ」

「デュナミス……」


 デュナミスは私から目を逸らし続ける。

 確かに私の態度が悪かったのなら謝ろう。でも、本当にそうなのかな。デュナミスルートは攻略していないから、貴女の心の中なんてよくわからないけどさ。

 ……今にも泣きそうな顔してるじゃん、デュナミス。

 私は拳をぐっと握りしめた。


「デュナミス、それが本当に本心なの?」

「! ほ、本当に決まっているだろう! というか様をつけろ様を! デュナミス様だろう! ま、全く、君のような無礼者と相部屋だなんてむ……虫唾が走るな!」

「うふふふ! それもそうですわね! よかったらデュナミス様、私達のお部屋で過ごされてはいかがですか? たっぷりおもてなし致しますわ」

「あ、あぁ。それは助かるな……」

「きゃあっ! デュナミス様がいらっしゃるわ! 早速お部屋にいきましょう!」

「デュナミス様、よろしければ私のベッドで眠っていただいてかまいませんのよ?」

「あ、あぁ。ありがとう」


 女の人達は顔色をすぐに変えて、黄色い声を上げながらデュナミスを連れて去っていこうとする。

 私はデュナミスの後ろ姿から目を離さない。

 偶然周りにいた妖精達が取り残された私を心配して、私の元へ寄ってきた。私はそんな優しい妖精達にありがとうと微笑む。

 そこで私はあることに気づく。そういえばマドレーヌおばあちゃんが言っていたのだ。妖精は、人間の心を感じ取ることが出来るんだと。

 

 ──ならば。


 私は大きく息を吸った。そして──


「それが!! デュナミスの、本心なの!? 本当にー!?」


 デュナミス達が立ち止まる。女の人達が呆れたような表情をこちらに向けた。


「なんてお下品な。あんなに大きな声で叫ぶだなんて! これだから田舎者は嫌なんですの」

「……、」

「ちょっと貴女! デュナミス様の本心はさっきデュナミス様自身から聞いたでしょう!? いい加減になさい!」

「違うよ。私は今、デュナミスに聞いたんじゃない」

「はぁ?」

「私は今──アイレムに質問しているの!」

「!!」


 そうすると、私の声に応えるようにデュナミスと契約している風の精──アイレムがデュナミスの髪から顔を出した。ふよふよと私の方へ寄ってくる。デュナミスはすぐにアイレムにこっちに来るように言ったが、アイレムは言うことを聞かない。

 私はアイレムにもう一度同じ質問をする。そして、アイレムは──


『……、……っ、うぅ、うわぁあぁあああああんん!!』


 妖精特有の甲高い声で、泣き出したのだ。


『サクラと一緒にいたいよぉおお!! せっかく、せっかく友達が出来たのにぃいいいい!! サクラが一緒じゃなきゃやだぁああああ!! サクラがいい、サクラがいいの!! 皆のばかぁああ! 私からサクラをとらないでぇええ!!!』


 おそらくデュナミスに好意を持っていたであろう女の人達はそんなアイレムの叫びに唖然としている。

 私はニッと笑った。そうして、アイレムをそっと手の平に乗せた。


「ありがとうアイレム。それがデュナミスの本心だね?」

『う、うん……ひっく、ご主人様と友人になった子は皆あの子達にいじめられちゃうの。だから、ご主人様は、大切なサクラを守りたくて、あんな酷いことをいっちゃったの……』

「そうなんだ。じゃあ、仲直りしないとね。……ねっ? デュナミス!」


 私はデュナミスを見上げる。デュナミスは顔を真っ赤にして震えていた。きっと今までで一番顔を真っ赤にしている。

 デュナミスのファンもどき達はすっかり石のように固まって、動かない。私はそんな彼女達の横を通り過ぎて、デュナミスの元へ走ったのだった。

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