08 せっかく友達ができたのに通せんぼされてしまった。【桜SIDE】

※桜sideは百合注意。蓮sideはBL注意。お好きな方だけ読む方もいらっしゃるかもしれないので、タイトルの横にどちらサイドなのかつけることにしました※



「やったぁ!」


 蓮と別れてから女子寮へ行くと、なんと私の相部屋相手はデュナミスだったのだ!

 私は思わずデュナミスに抱き付いた。デュナミスは変な声を上げる。


「やったねデュナミス! 私達ずっと一緒だよ!」

「あ、あぁ。そ、そそそれは嬉しいのだが……サクラはスキンシップが激しくないか?」

「え!? あ、ごめん」


 デュナミスは心臓を抑え、真っ赤な顔で俯いていた。私はデュナミスから慌てて離れる。

 確かにずっと蓮といたから距離感がおかしくなっていたのかもしれない。蓮は私がハグしてもはいはいって甘やかしてくれるからつい……。

 そうだ、デュナミスは蓮ではないのだ。友達といえど他人なんだ。親しき仲にも礼儀ありだぞ私。

 反省、反省……。……でも、ハグできないなんてちょっと寂しい……。

 私の中では既に蓮不足が発生していた。もうしばらく会えないかもしれないなんて……まぁ、兄離れするべきなんだろうけどさ、私も。

 がっくりと肩を落としていたら、デュナミスが耐え切れないとばかりに私の頭を撫でる。


「わ、わわ分かったから! 私に抱き付いてもいい。ただし抱き付く時は私に聞いてくれ。君に抱き付かれるのは嫌いなわけではないんだ。というか、むしろ……。で、でも人にこう接してもらったことはないので、耐性がない。心臓が破裂しそうになるから、前もって許可をとってくれ……」

「! 分かった。ありがとう、デュナミス」

「いや礼を言うのはこちらだよ。こんな私なんかと、友達に……。……すまないなサクラ。私には実は今まで友人というものがいなかった。だから友人とどう接していいのかよく分かっていないんだ。今みたいに君を傷つけるかもしれない」


 デュナミスは申し訳なさそうに目を伏せた。

 私は首をブンブンと横に振る。


「いやいや、私の距離感がおかしかっただけだから。普通は仲良くなったばかりの友達に抱き付いたりしないよ。びっくりさせてごめんね。それにしても、デュナミスに友達がいないってほんと?! 皆、絶対デュナミスと友達になりたがると思うんだけど」


 だってこんなに美人なんだし。性格だって相手のことをよく考えてくれるいい子だ。それにエボルシオン王国総騎士団長の娘という高スペックさ。それなのにどうして?

 そう尋ねるとデュナミスは苦笑した。


「私も友人を作る努力はしたんだ。しかし周りの女性達と友達になろうとしても何故か私の恋人じゃないと嫌と泣き出したりしてな……。私は女なので、彼女達の想いには答えられないというのに……」

「あぁ、納得」


 うんうん、そういえばゲームでもデュナミスは男の子より女の子にモテているイメージがあった。

 そりゃ、友人になろうなんて恋愛対象外って言われているようなものだもんね。納得納得。

 

「じゃあ、私が貴女の初めての友達なんだね。すっごく嬉しい!」

「! ……あ、あぁ。と、友達……だな!」


 二人で頬を染めてにっこりし合う。そうして、自分達の部屋に行こうと女子寮のロビーを出た。

 ……しかし、私達は自分達の部屋に行けなかった。何故なら綺麗なドレスを着た貴族っぽい女の人達に通せんぼされたからだ。

 え、なんでこの人達、私をこんなに睨んでいるの?


「いい加減にしなさい、下民! さっきから聞いていれば、デュナミス様を困らせるようなことをして! デュナミス様は皆のものなのよ! デュナミス様、こちらに!」

「あ、え、ちょっと君達……」


 デュナミスが強く腕を引かれて、女の人達の背後に隠される。私はキッと女の人達を睨みつけた。

 なんとなく、通せんぼされた理由を察したからだ。


「いい? 貴女は編入生らしいから知らなかっただろうけど、そもそもデュナミス様はあの栄えあるエボルシオン王国騎士団総団長の娘。つまり貴女とは地位が違うの! 下民ごときがデュナミス様とご友人なんて笑わせるわ! 相部屋の相手だろうがなんだろうが、本来は自分から話しかけること自体、貴女がしてはいけない事なのよ」

「!! …………っ、」


 私はチラリとデュナミスを見る。デュナミスの心が知りたかった。

 デュナミスにとって私の態度が嫌だったのなら、確かに私が悪い。


 ──でも、デュナミス自身は? 


 デュナミスは、私から視線を合わせなかった。そして──




「──、あ、あぁ。そうだ。迷惑だったんだ。サクラ、君のその態度は許されるものではない。私に近づけないでくれ──」



***

次の更新は1時間後の19時頃。

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