Take 8
昼過ぎ。
八回目の勇者召喚が行われる。
「『我、神に祈らん。我らが祖国を魔の手から守るための力を、我の手に。異界の勇者を時空を越えて、我らの救世主をここに喚ばん。我らが信ずる神の名の下に』――勇者召喚」
召喚の間が光に満たされる。
((((人か魔物か……魔物だったら嫌だなぁ))))
騎士達は呑気なことを考えている間に何かが召喚される。
今回、召喚されたのは――
「あ? ここはどこだ?」
「「「「よかった人だ……てか誰だ?」」」」
「お前らこそ誰だ……って、王国騎士か?」
召喚されたのは一人の冒険者だった。しかも戦闘中か終わった後かは知らないが返り血がつき剣を携えていた。
また勇者召喚が失敗したようだ。
アレクが前に出て事情を話す。
「この度は申し訳ございません。私は騎士団団長アレク・ラック・カイレイです。」
「俺はSランク冒険者アイゼン・トールドだ。あと敬語はやめろアレク」
「やっぱりアイゼンだったか。久しぶりだな」
「アレクさん、その方はお知り合いですか?」
「ああ古くからの友人だ。俺も数年は冒険者をしててな。その時に会ったのがこいつだ。パーティーを組んだりしてな。今や俺は騎士団団長、アイゼンは最強冒険者だ。それにしても懐かしいなぁ」
「おいおい、今もお忍びでやってるだろ?」
「お、おいお前、それ言うなよ。お忍びの意味がねえだろ」
「お忍びで冒険者? ずるいですよアレク! 私も冒険したい!」
「したいのかよ。なら今度ついてくるか?」
「行きます。ついでにこの子達も連れて行きます」
「分かったよ」
「なんだ? そのスライム」
「名前なら知ってんじゃねぇか? あいつらは――」
出番がきたとばかりに張り切るノネットスライム。
「俺らは!」
「九属性を司る」
「精霊的魔物」
「「「「「「ノネットスライム!」」」」」」
「俺は火属性を――」
「――ま、そう言うことだ」
「ノネットスライム……初めてみるな」
ノネットスライムの自己紹介を遮るアレクら二人。
「おい! お前ら! この子達のカッコいい自己紹介を無視しないでください! ほらみてください。クリムゾン君が泣いてますよ」
「う、うぐっ、ひぐっ」
「おい、スライムがどうやって泣いてんだ」
「魔法じゃねぇか?」
「そんなこと言わないでください! お前らは最低か! 自己紹介を無視しただけでなく泣いてるのを魔法だと言うとは……この外道が! 悪魔! 人でなし!」
「そこまでいうなよ!」
「師匠、もういいぜ。あいつらが外道だと証明されたんだからよ」
「クリムゾン君……そうですねあいつらが外道だと分かっただけ良しとしましょう」
「おい誰が外道だって?」
「あなた達二人です」
アレクとイリスの喧嘩が始まる。
「ウルトよ、さっさと送還せよ」
「はい、わかりました」
「おっと待ってくれ」
「どうしました?」
「このまま歩いて帰るわ。今の拠点は王都にしててな、ちょうど戦闘も終わったところで王都に帰ろうかとしていたのだ」
「そうですか、分かりました。では使用人と私が門まで連れて行きます。陛下、私はこれで。どうせ次は明日でしょう?」
「う、うむそうじゃが……どうせって、まあ良い。行ってこい」
「はい」
アイゼンをウルトと使用人数名で門に連れて行く。
「はぁー、また失敗か。お主ら! 次の勇者召喚は明日じゃ! 解散!」
その日も勇者召喚を失敗して終わった。
ちなみにアレクとイリスはまだ喧嘩をしていた。
「ちょーと、待ったっっーーーー!」
大声が響き渡る。
そして先ほどの男が走って戻ってくる。
「今すぐ送還してくれ!」
「急にどうしたんだ?」
「忘れ物だ! あの場に剣以外の荷物があることすっかり忘れてた!」
「なんだそういうことか。ウルト、送還させてやれ」
「はい、分かりました。ではそちらの魔法陣の上に乗ってください」
「おうわざわざすまねぇな」
「いえいえ、お気になさらず。では送還します」
彼は無事送還された。
「あいつ昔から忘れ物が多くてな。変わってねぇなぁ」
「アイゼン様ーっ、剣を忘れてますーっ」
「はぁー」
彼は忘れ物をとりに送還されたが今度は剣を忘れたそうだ。
「あとで俺がギルドに持ってくわ」
「ありがとうございます」
こうして一頓着あったものの今日の勇者召喚を終える。
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