Take 7
翌日。勇者召喚を始めてから4日目。今日も勇者召喚が始まる。
「『我、神に祈らん。我らが祖国を魔の手から守るための力を、我の手に。異界の勇者を時空を越えて、我らの救世主をここに喚ばん。我らが信ずる神の名の下に』――勇者召喚」
召喚の間が光に満たされる。
((((さて、今日は何がでるか))))
皆んなは勇者が召喚されることは微塵も考えてないらしい。
そして光も収まり召喚されたのは――
「グラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアア!!!!」
「「「「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!??」」」」
今回、召喚されたのは、竜だった。
竜は魔物の中で最強と呼ばれる絶対的存在だ。存在するだけで側の全生物に畏怖を与え、激怒させたならたった一つの
事実、今現在もその場にいた国王や騎士達は恐怖で震えている。騎士の中には気絶している者もいる。アレクやウルトは何とか耐えている。一方イリスや使い魔達はというと――
「おお! 今度は竜ですか。これの強さは上の上といったところですかね」
「ほお! これが竜か。初めて見たぞ。でっかいなぁ」
「師匠、私達とこいつが戦ったらどっちが勝ちますか?」
「んー、五分五分ですね。一対一ならあなた達は即死しますが、九匹が力を合わせればそれなりに戦えますよ」
――余裕だった。竜も威圧をしているが柳に風だ。むしろ風すら感じてないかもしれない。
『汝ら、我を召喚して何か用か?』
気絶する騎士が増える。鍛え上げられた騎士より耐えている国王はすごいかもしれない。
竜が話しかけるも、竜語なので誰にも伝わらない。しかし――
『あ、いえあなたに特に用事はないです』
『何?』
イリスが竜語で返す。
そして更に威圧が強くなる。
『勇者召喚をしてたんですが、失敗して間違えてあなたを召喚してしまったんです』
『そうか、勇者召喚の失敗か。すまんな勇者じゃなくてな』
『いえいえこちらこそすみませんね』
『それにしても勇者召喚か……魔王か?』
『はい』
『我を使えば早いんだがな』
『人間は分かりやすい希望が必要なんですよ』
『そうか。というかお主の魂、まさか先――』
『おっと、それは内緒です』
『そうか、すまぬ。そういえば威圧解いたほうが良いか?』
『む? なんであんなに倒れて? 貧弱な』
『いやいや、お主がおかしいだけだからな?』
威圧が解かれる。
気絶していないのは、アレク、ウルト、国王だけだった。騎士より耐えていた国王をよく見てみると、立ったまま気絶していた。なかなか器用だ。
『そうだ、あなた私の使い魔になりませんか?』
『断る、お主の側におると面倒ごとが増えそうだ』
『ちっ、仕方ありませんね、『強制支配』!』
『え、アッ!!??』
『ふう、これでよし』
『お主、前世と変わらず何と強引な』
『ふんっ、あなたさっきまで寝てたでしょ』
『うっ……』
『それにあなた暇でしょう? どうせ山にでも引きこもってたんじゃないんですか? ニートの癖に』
『ニ、ニート……お主よ、それはひどいぞ。我だってちゃんと竜達の王として……』
『それ、側近のヴァティスに任せてませんか?』
『え、いや、そ、そんなことないよ?』
『口調が変わってますが』
『え、いや、そんなことないよぉ?』
『ほら』
『だってぇ、あいつら全然言うこと来てくれないしぃ、ヴァティスの言うことしか聞かないんだよぉ?』
『ヴァティスはあなたのことを心から慕っているでしょう、それなら何の問題もありません』
『大問題だよぉ』
『王というのは誰だって部下に悩ませられるのです。運命です』
『認めたくない、そんな運命』
「あ、あのー、少しよろしいでしょうか」
完全復活したウルトが聞く。
「おっほん、人語はこうか? で、何だ?」
「イリスとあなた様はどういった関係で?」
「それは先代ま――」
「ただの主人と使い魔の関係ですが?」
「え、今先代何とかって……」
「気のせいですよ?」
「竜が首を押さえて苦しんでますが」
主に逆らったから、イリスに物理で強制的に首を締められている竜。
「というかその竜は」
「ゴホッゴホッ、あ、改めて自己紹介しよう。我は王竜ヴィステーゼ、全ての竜を支配する者だ」
「お、王……竜……?」
「おいおい、何で王竜がいるんだよ、普通の竜でいいだろ」
アレクの言うことはもっともだ。多くの竜がいる中で一匹しかいない王竜を召喚したのだ。
「それでは我はそろそろ帰らせてもらおう。主よ、あなたが何者かはさておいて、なにかあったら呼んでくれ、すぐに飛んで行こう」
「では、用もないのに呼んで良いですか?」
「それはやめてほしい」
「じゃああなたが帰った瞬間を狙って呼んで良いですか?」
「やめてくれ」
「じゃあ毎日呼んで良いですか?」
「やめろ、主ふざけないでいただきたい」
「冗談じゃないですか、ウルトさっさと送還してください」
「は、はい」
「え、そんな雑な。我王竜だぞ。あ、ちょ――」
王竜が送還された。王竜なのに雑な扱いをしているイリスに驚くも、イリスが言ってるから王竜を無視して送還したウルト。ウルトはウルトでメンタルが強いかもしれない。
王竜が送還されるまでに、気絶していた騎士達は全員起きていた。国王は早い内に起きていた。さすが国王。さすこく。
「そういえばイリス、さっき王竜と話してたよな。竜語?……だったかと思うんだがどういうことだ?」
「えっ、あー、秘密です」
「教えろ」
「ま、まあ私は世界最高の魔法使いですし、竜語とか使えて当然ですし。たまに竜魔法も使ってますし」
「へっ、竜魔法?」
魔法副団長が驚く。
それもそうだ、竜魔法は本来竜のみが使う魔法のことで人間には使えない、と論文まで出ているからだ。
「はい、たまに山とかぶっ飛ばしてますよ」
「あれかっ!?」
確かに今までにイリスのせいで地図を書き換えられたことは少ない。
「ど、どうやって……」
「ただ竜語を喋れれば使えますよ。まあ人間の喉では無理です。私は特別な方法を使っているので」
「そんな……」
まあイリス竜魔法問題はさておいて。
王竜が召喚されたことによって、少々混乱があったもの被害はなかったためにすぐに落ち着きを見せた。
「はぁ、よし次は昼からだ。解散!」
4日目の午前は王竜を召喚して終わった。またもやイリスは笑顔だった。
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