異世界召喚NG集

シュタ・カリーナ

プロローグ

文章力の低さに問題がありますが、ぜひお読みください。


――――――――――――――――――――


「よし、では勇者召喚を始めよう」


 王城に存在する、召喚の間にて今まさに勇者召喚が行われようとしていた。


 勇者召喚とは、ここアートルド王国王家に神話の時代から伝わる伝説の魔法のことだ。ニホンという異世界の国から勇者を一人、又は複数人喚ぶことができるそうだ。さらに、召喚された者は強大な力を持ち、魔王を討伐することができるとも伝えられている。


 そんな大魔法を使うことが決定されたのは、つい一週間ほど前のことだ。


 ◇◇◇


(はぁー、暇じゃのう。まあ、戦争なんかよりはましだがな。そろそろお茶休憩でもするか)


 執務室にていつもの仕事を行なっていた、と見せかけてボーッとしていたアートルド王国国王エレス・ハイドルフォン・アートルド――今年で35を迎えるが妻どころか彼女もいない――は、お茶を用意し口に含む。


「国王陛下! 魔族領側国境警備隊より伝言です! 」

「ぶふっー!? 」


 大声とともに扉を勢いよく開け放つ、王国軍兵士。

 飲みかけていた茶を吹き出す、国王。


「危なっ、あと少しで儂の書類が……。おっほん、で何様だ? 」


 国王らしく威厳のある声で聞く。そして、一度落ち着き、飲みかけていた茶をまた、口に含み――


「はい、それが魔族領側国境警備隊より、魔族による殲滅級魔法を確認したとのこと。これによる負傷者はいません。また、国境警備隊が確認したところ、魔法を放った魔族は封印を解いた魔王だそうです」

「ぶふっー!? ぬわっ!? 儂の大事な書類がっ」


 驚きの発言に飲みかけていた茶をまた吹き出し、書類を駄目にしてしまった国王陛下。

 先程よりも多く茶を含んでいたため他の書類もびしょ濡れだ。


「というか、今なんと言った! 」

「魔王の存在を確認したと……」

「ついにこの時が来たか……これは早々に対処せねばならんな。お前、これより緊急会議を行う。他の者を緊急招集せよ。尚、警備隊はそのまま監視を続けよ」

「はっ、畏まりました。失礼します」


 魔王――それは暴虐の限りを尽くしてこの世の全てを征服しようとしている魔族を統べる王。200年前に勇者に敗れたが死ぬことはなく、強力な封印を施した。これによって200年間安泰の日々が続いていたが、その封印が今解かれたという。


 威厳のある声で兵士に指示を出す。

 兵士は、緊急時でも慌てず的確に指示を出す国王を心から尊敬していたが、当の本人は――


(えっ、マジで? 魔王、復活しちゃったの? ないわぁー、儂の代で復活とか、ないわぁー。儂の子孫の代で復活してくれよぉ。あ、儂まだ妻すらおらんのじゃった)


 ――現実逃避していた。

 しかし、混乱していても的確な指示を出せるのは、さすが国王と言ったところか。



 報告を受けてから数時間が経ち、大会議室にて大臣達と騎士団団長、魔法騎士団団長、王国召喚術師、国王専属メイド兼メイド総長など錚々たるメンバーが召集されていた。


「ではこれより魔王対策緊急会議を行う。まずは――」


 会議が始まった。皆は、魔王復活ということを知り、動揺を隠せていなかったが、国王の冷静な判断と指示により、慌てることなく着々と話が進んでいった。一名、居眠りをしていた人がいたが……


 会議で決まったことは次の通りだ。

 魔王領側国境警備隊の兵士の増員や勇者召喚、各国の同盟などだ。


「――ではこれにて、魔王対策緊急会議を終了する。各自、与えられた仕事を全うせよ! 解散! 」


 国王の号令により、大臣達は各々席を立ち国のために人類のために動き始める。

 騎士団団長と魔法団団長、召喚術師、国王専属メイドは国王と共に残っていた。


「はぁー、めっちゃ緊張したんじゃけど。やだなぁ。はぁーーーーー――」

「国王陛下! ため息が長いです! 」


 国王専属メイド兼メイド総長ミリナ・アステル――国王より10歳以上若く、騎士一人なら互角の強さを持つ戦う謎メイド――は、国王に喝をいれる。


「あだっ!? ため息ぐらいついても良いじゃろう!? というか、なぜ叩いた!? 」

「国王たる者、人前ではみっともない姿を晒さないでください」

「人前って、今はお前らしかおらんじゃろう!?」

「ダメです! 」

「あだっ!? 今、なぜ叩いた!? 儂、国王なんじゃが!? 」

「陛下、ミリナさんとコントやってないで、話を進めましょう」


 騎士団団長アレク・ラック・カイレイ――25歳の時に騎士団団長の座にまで上り詰めた強者で、それ以外にこれといった特徴がない男――が言う。彼は至って真面目なようだ。


「いや、コントなんかやっておら――」

「そうですよ、早く魔王に私の深淵魔法を知らしめたいです」


 24歳にして厨二病を発症している魔法団団長イリス・ラック・マーテンダー――21歳で魔法団団長の座に上り詰めた実力を持っているが、魔法バカな上に中二病という、この世でそれなりに面倒なタイプの魔法っ娘――が、国王の言葉を遮って言う。


「あの、儂の話を――」

「うるさいぞ! イリス! 」

「あうっ、うるさいとは何ですか! 」

「どこに魔王に突っ込む馬鹿がいるんだよ! 」

「ここです! 」

「自分で言うか!? 」


 前言撤回。アレクは真面目ではなかった。


 今、2組がコントを繰り広げていた。話が全く進まない。この場には真面目な人がいないのか。


「いい加減にしてくださいよ! 」


 いや、いた。

 机を思い切り叩き、声を上げた王国召喚術師ウルト・ラック・ウォーレンが。

 彼は、滅多に怒らず、敵にも優しいが、今の状況に激怒した。魔王復活という緊張事態にコントを繰り広げているからだ。

 日常でもよくあるだろう。普段は怒らない優しい人が怒ると恐ろしく怖いということが。今はまさにそういう状況だった。


 あの冷徹で国王にも屈せず意見を主張できるミリナでさえ怯えているのだ。他の者も怯えないはずがない。


「では、話を進めましょう」


 ウルトはいつもの優しい口調と笑顔で言った。

 激怒していた状況から一転、いつもの彼に戻ったことで、恐怖が少し増した……と思う。


 4人は「あ、はい」と返事をして落ち着いた。


「ごほん、では勇者召喚についてじゃったか? 」

「陛下、勇者など必要ありません。なぜなら! 全属性魔法の使い手にして世界最強の魔法使いの私がいるからで――」

「イリス、そういうことはさっきの会議中に言ってくれ。それに勇者召喚は決定事項じゃ」

「なら、勇者にの知識を授けてやりま――」

「すまんが勇者に魔法を教えるのは副団長じゃぞ? 」

「え、な、なぜあいつが……」

「え、いや、だって、お前教えるの下手だろう? 感覚派じゃし……」

「何を言いますか! 感覚を掴んでこその魔法です! あんな理論派なんて聞きたくありません! 」

「まあ、お前がなんと言おうと、会議中、お前が寝ている間に決まったことじゃ。それにお前も賛成しておったじゃろう? 」

「私は賛成なんかして……はっ」

「儂がちゃんと「それで良いか? 」と聞いたら「はぁい」と返事しておったからのぉ」

「くっ、国王のくせに小癪な……」

「お前は一言余計なんだよ! 陛下、すみません。後でしっかり言っておきますので」


 イリスの鎮静剤であるアレクがイリスを黙らせる。

 国王は部下に「妻もいないくせに」と言われ、少ししょげていた。


「…………」

「陛下? 」

「あ、ああ、頼むぞ。さて、ウルトよ、喚べるまでどのくらいかかる? 」

「はい……およそ一ヶ月あれば」

「よし、では早急に取り掛かってくれ。準備が出来次第、儂に報告してくれ」

「はい、了解しました」


 勇者召喚についての話が終わり、皆が解散していく。

 ウルトは早速、書庫にて召喚するための魔法陣が書いてある書物を探しにかかる。

 アレクは約二時間に渡ってイリスに説教をしていた。

 イリスは説教が長くなることを想定して、分身を作り魔法の研究を始めた。ある意味天才である。


 一方、国王はというと、勇者が喚ばれてきた時のカッコよく、かつ国王らしい威厳のあるセリフと動作の練習に日々、打ち込むのだった。

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