解答編

解答

 さて、この師弟の手紙がやり取りされるおよそ一年前。

 この国の偉い人の家で、一つの事件が起きました。


「不覚……命は助かったが……どうするか」

「……貴方様はこの国の民を導くお方。確かに、この度刺客は何とも大事なものを盗みました」

 この国は、そもそもが一人の英雄によって成り立った国。一人の偉大な英雄によって建国された国でした。

 その英雄は独裁者になることなく、民をいつくしみました。

 しかしながら、それが気に食わない隣の国から刺客を差し向けられ、襲われたのです。

 英雄は九死に一生を得ました。

 しかしながら、英雄は英雄を英雄とするための大事なものを失いました。

 こうして、英雄は英雄ではなくなり、その大事なものを国民にも使わないように強要しました。

 彼が、最初で最後に行った独裁でした。

 彼から失われたものは……



































  e音


  襲われたことで顔面麻痺を起こし、どうしてもeの音を出せなくなったのです。

  だから、先述の手紙にはe音が入っていませんでした。

  えけせてねへめれげぜでべぺ

  この音は、禁止されたのです。



            とっぴんぱらりのぷぅ

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