第20話嘘つきⅡ

主のない馬は今思えば不可解な点がいくつかある

そうだ、何も別に主が負けるまでいくたばるまで動いてはいけないということはアなかった


なのに、動かなかった「いな動けなかったのだ

ある方にに出会い、その通りに動かされた


だからー―動けなかった

だが、今主が死んだ今それをかなぐりすてる、

主のために、戦う本来の馬になる

そうだいくらい裂ぱくの気合で倒せるとは言えーー本物の夜行さんは

その実力は

こんなやせ衰えた小娘一人を殺すのはわけないだろう

陽は、互いに一撃で滅びる「ところにいたわけだ

ただし夜行さんは、力を使うわけにはいかなかった

だからせめてもの呪詛を吐いたのだ、この娘の心が壊れるようにと

折れるようにとそれでも折れない

だから、今馬は涙を流し永田「敵」を殺そうとする

ゆっくりと引き金が引かれる――馬の脚は蹴ろうとする

その実力、幾多の人間を怪力自慢の男を

剣士を

格闘かを

その実力は、ほかの馬を殺し――場合によっては肉食獣をも殺すぐらいの

力を持つ蹴りは「

人間が喰らってはひとたまりもない、それは別に彼女だけではない

人間全般が喰らってはいけない

一撃でも貰ったらアウトなものだったということだ

でも――でも通じない

効くことはない

なぜなら

「終わりだ」

眉間に矢が刺さってるから

もう馬は動くことはできない

うそだろ

主人の仇も打ててないのに

おのれおのれおのれ

馬は嘆く力不足を、馬は怒る人間という存在を

皮肉なことに、馬が主に対して抱いていたのは忠節

人間の「美徳」である

最後の最後に、いや、最後の最後までこの馬は「本能」に勝ち続けた

主への忠義で動いていた

(「なぁ馬よ)

「わが馬よーーお前に名前をやろう

醜い人間ではなく、お前ならば名前をやれる

春雨というのはどうだろう)

生まれた時に引き取ってくれた大恩人

いや、大恩妖というべきか、それは「春雨」という名前をくれた

忠義を尽くすことを許してくれたなのに、なのに、ああ体動かない

でもーーでも、倒したい

倒せねばならん

だから最後に一撃だけ

顔面にけりを放つだが、

だがよわよわしい蹴りでは、いくら貧相だからって人の顔面は打ち抜けない

打ち抜くことはできない

そのままずるりと倒れる

申し訳ありません主という思いと、くたばれという思いをつけて彼はそのまま倒れる

倒れていく

最後の最後まで彼の敵をにらみ続けて

咆哮はない、声を上げることもしない

静かに平行世界から戻ってくる


(あとは元気を養うだけだ)

そしてーーーアの男を倒そう

そして今度こそ――お六に、本を買ってやろうそう考える


主主ふがいありませんでした

「冥界」で彼は主に答える

「大丈夫だ」

「大丈夫だ」


「どうだ今度こそ」「はい、今度こそは」

「「醜い人間どもを倒しましょう」」

高笑いと馬の荒い鼻息の音が鳴り響く


そしてそのまま、光にさらわれていく

そしてーー彼ら二人は、楽しそうに光に揺られながら来世の、いや、今度の

転生について考える


次も、また二人であるために

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