第3話 東北地方旅行記 その1

マイナス2度の霧を突っ切り、花巻におります。


秋田を発ったときは大雪でした。

ワイパーでは除けないくらいの湿ったぼた雪がフロントガラスに固着し、手で払いのけてから車を走らせました。

まずは北へ。弘前に向かい、ひとり芝居を観劇するためです。

太宰治「人間失格」

地元の演劇集団によるもので楽しみにしておりました。路面状況によりスピードが出せず、到着が遅れてギリギリで滑り込むことになりました。お客さんは満員で、あやうく立ち見になるところでした。緊張感のある良い役者、すばらしい公演でしたが、わたしは楽しめたとは言い切れませんでした。事前に太宰を読んで予習をきちんとしておきましたが、それが逆に細部に違和感を生んでしまったのです。こころが白紙の方がよいこともあるのですね。今後、気をつけたいと思います。


いまは太平洋側を南下し、山形へ映画を観に行く途中です。

深夜、盛岡から濃霧につつまれて、月も寂しく霞んでおりました。休憩のために花巻に寄ったのですが、どうせなら宮沢賢治記念館を再訪しようと朝を待っております。八時半開館だそうです。

田舎に似合わないコンクリートの構造物が目に入り、最近の銀河鉄道は高架を走るのかとも思いましたが、それはどうやら東北新幹線の線路で、かなたに新花巻の駅舎が闇夜にぼおっと浮き上がっておりました。なんだか恐ろしい気もしました。イーハトーヴというイメージからはかけ離れたなにかです。

駐車場で眠れずに筆をとったのですが、明るくなってからようやく頭のなかにも霧がおりてきたようです。

ちょっと手を休めることにします。

おやすみなさい。


下ノ「コンビニ」二居リマス

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る