第13話『蕾』


ジジ・ラモローゾ:013


『蕾』  





 ジャノメエリカの蕾が膨らんできた。



「お祖母ちゃん! お祖母ちゃん!」


 お祖母ちゃんを呼ぶと、膝を庇いながらも急ぎ足で来てくれる。あ、ごめんと思った時にはドアを開けてる。わたしの声で『何かいいことがあったんだ』と思っているお祖母ちゃんの目は、もうニコニコと笑ってる。だから『急がせてごめん』を言いそびれた。


「ほらほら、蕾が膨らんできたよ!」


 お祖母ちゃんと顔を並べてジャノメエリカを観察……お祖母ちゃんの温もりを頬っぺたに感じる。嬉しい。


 満員電車とかで人の体温を感じると気持ちが悪い。


 授業中に先生が回ってきて、わたしが何かにつっかえていたりすると五十センチくらいに近づいてくることがある。むろん指導をするためだから文句なんか言わないんだけど、その近さで先生の体温を感じるのは気持ちが悪い。当然、その空間の空気を一緒に吸ってるわけだから、先生が吐いた空気を吸うワケ。短時間なら息を詰める。だって、先生がわたしの体の中に入って来るみたいで、どうしようもなく気持ち悪いから。


 ちょっと長くなったりしたら、あとで深呼吸を何度もして、新しい空気で肺を清める。


「そうね、少しだけ膨らんできたね」


 そう言って、わたしの顔を見る。その時に、ほんの0,5秒お祖母ちゃんはわたしの胸を見た(`#Д#´)!


「あ、あ……(`#Д#´)」


「セーターほころんでる。脱ぎなさい、繕ってあげるから」


「あ、そかそか(#*´ω`*#)」


「ん?」


「あ、なんでもないよ」


 繕ってもらう間、パソコンを見る。





『ジージのファイル』


 ジージは運動が苦手だった。だから、高校の最後の授業が終わった時『もうこれで一生体育の授業を受けなくて済む!』と喜んだ。


 教師になってからも、ジージは社会科だから関係ないと思っていた。


 でもね、担任を持っているとそうもいかないんだ。


 45人も生徒がいると、運動が嫌いな奴が居て体育祭を休むやつが出てくるんだよ。特にリレーとかに当ってるとズルをかますやつがね。


 そう言う時は、クラスの他の生徒に「代わりに走ってくれないか?」と頼むんだ。


 でもね、リレーは嫌われる。仕方がないからジージが走るんだよ。だれか走らないと穴が出来ちゃうからね。だれも文句を言わない、言わないどころか喜んでる。


 50メートルと200メートルに休まれた時は大変だったよ。バトンを100メートルに渡したら、すぐに次のリレー地点へ行って、100の生徒からバトンをもらって走るんだ。


 足がもつれて本部テント前(校長とかエライサンのテント)でズッコケて、みんなに笑われた。


 あくる日授業に行ったら黒板にこけた時の様子がマンガで書かれていた。


 生徒と一緒になってワハハハと笑うんだ。笑って、それから写真に撮る。描いたやつと、それからクラス全員と。なんか、面白くなってきた(^▽^)/


 でも、それって、授業だけ教えてるクラスでね。


 自分のクラスは……ま、機会があったら書くよ。




 繕ってもらったセーターを着てパンを買いに行く。サンドイッチを作ろうと思ってね。


 パン屋さんの事も書きたいんだけど、それは、また今度ね。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る