第12話『寒いんだよね』


ジジ・ラモローゾ:012


『寒いんだよね』  






 エアコンの設定を25度にする。



 ほんとは24度にしたいんだけど、24度の設定にすると22度になってしまう。


 エアコンがポンコツだからとお祖母ちゃんは言う。


 たしかに、こないだまでは室外機が動かずに、お祖母ちゃんは「買い換えようか」と言っていた。


 だけど、思いついて室外機の掃除をやったら元気に動くようになった。


 ちょっと嬉しかった。


 25度設定にすると正直に25度になるんだけど、それでは暑い!


 だから24度設定にするんだけど22度まで下がってしまう。


 わたしが直してやったと言うのに、わたしがカムファタブルと思う23度にはなってくれない。


 だから、時々25度と23度を切り替える。




『ジージのファイル』


 ジージが高校生だった頃はエアコンどころかストーブも無かった。


 いくら昔でも、これには、みんな文句を言っていた。


 だって、小学校でも中学校でもちゃんとストーブはあったからだ。


 文句を言うとね、先生に答えは、こうだった。


「うちの校舎は戦後に建てられた鉄筋コンクリートだ。教室は全部南側にある、朝の一時寒くても、すぐに暖まる。これくらいで寒がっていては強い大人になれないぞ。ほら、二時間目の今、教室の温度は24度もある」


 先生は、そう言って寒暖計を水戸黄門の印籠みたいに見せるんだよ。


 それで、みんな恐れ入ってしまうんだけど、こんな生徒がいたんだ。


「黒板の横、それも目の高さの陽の当たるところでは正確に測れたとは言えません。生徒の座席、それも脚の位置で測らないと実際的ではないと思います」


「じゃ、次の機会には、君たちの席で測ってみよう」


「先生、もう測ってあります」


 そう言うと、そいつは窓側のA子の席に仕掛けて置いた寒暖計を示した。14度しかなかったね。


 それから、そいつは提案してね。教室のあちこち十か所に寒暖計を設置して一週間の変化を正式に測ることになったんだ。


 その結果、あくる年からは全教室にガスストーブが付けられるようになった。


 実証的な提案というのは大事だし、強いよね。


 ジージたちは、職員室にはストーブが入ってるのに! という苦情で迫るつもりでいたんだけどね。そいつは賢かったよ。


 みんなそいつに感謝したんだけどね、そいつの狙いは他にあった。


 十数年後に同窓会をやったら、A子はそいつの嫁さんになっていたよ。


 なかなかやるもんだ。




 なるほど……。


 ジージの部屋は、あたし一人で使ってるから、測ってあげて彼氏にするような男の子はいない。


 でもね、部屋の温度をいろんなところで測ってみるというのはアイデアだよ。


 測ってみたら、窓側の机の所が一番暖かいことを発見。


 でもね、ごっつい机を動かすのは大変だから、やっぱ辛抱。




 じゃ、またね。


 

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