第23話 雪が降った!

 佐藤花子は難病患者である。

 彼女が生まれたのは東海地方の海沿い、非常に温暖な地域である。

「お母さん……雪が見たいよぉ」

 花子は母親にそういった。東海地方南部は極めて温暖であり、不治の病を患っている花子にとって極めて良好な環境であった。しかしながら、花子は雪を見たいと母親にせがむ。

 母親は困り果ててしまう。

 そのまま月日が流れ、徐々に花子の体は弱っていった。

 花子の体は枯れ木の如くやつれて行き、だれの身にも死ぬことは明らかでした。

「雪、見せられなくてごめんね……」

 花子の母親は、そんなことをぼそりと居ました。

 すると……

「ゆ、き」

 花子はそうぼそりといいました。

「え?」

 母親が外を見ると、外に白いものがふわふわと舞っていたのです。

 それを見て、花子は嬉しそうな顔で死にました。

 花子が見た雪、それはしろばんばとも呼ばれる雪虫でした。



          了

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る