第10話
耳環……はっ!すっかり忘れてた。
耳環を買った事に満足しきってた俺は平静を装うと、アイテムボックスから耳環の入った箱を出した。
早速開けてみると、店で見た時以上に輝きを放ってるように見えた。
でもこれ……どうやってつけるんだ?
そう考えた俺は箱の中身を出していくと、中に説明書を見つけたので読んでみた。
なるほど……。
まず耳に穴を開けないといけないのか。さっそく中を確認すると、穴を開ける為の道具は箱の底で見つけた。
するとセリナはそれを手に取るとニコニコしながら言った。
「旦那様。耳を出して貰えますか?」
お……俺からか。
まぁ使い方も確認したかったし。
俺は膝をつくと耳を出した。
セリナは愛おしそうに耳に触れると……次の瞬間激しい痛みが襲いかかった。
「っつ!?」
予期せぬ痛みをグッと堪えた。
俺が痛みに耐える中、セリナは耳環の1つを手に取ると口付けをして耳へと付けてくれた。
すると耳元で「カチッ」と音が聞こえた。
何だろう?少し気になったけど、とにかく俺の左耳には耳環が輝いていた。
次はセリナの番だ。
セリナは膝をつくと右の耳を出した。
先ずは位置を確認するためセリナの耳を触ると、時折ビクッと震えるセリナが凄く可愛いかった。
ようやく位置も決まったので道具を耳にセットして聞いた。
「いい?開けるよ?」
俺がそう聞くとセリナは小さく頷いた。
カチンという甲高い音と同時にセリナの耳に穴が開いた。その瞬間かなりの痛みがセリナを襲い、苦痛に顔を歪めていた。
大丈夫?と声を掛けようとした俺に、激しい苦痛の中でセリナは必死に微笑んだ。
俺はすぐにもう一つの耳環を手に取ると、セリナに倣って口付けをして耳へと付けた。
その瞬間やはりカチッと音がした。
…ロック機能かな?
音の正体は分からなかったけど、セリナの右耳にも耳環が無事に付いて輝きを放っていた。
そして痛みもだいぶ引いてきたのか、セリナは嬉しそうに耳環に触れている。
その様子を眺めているとセリナと目が合った。
俺はセリナに近付き抱きしめると、セリナも俺を抱き返してくれた。
そんな中で俺はセリナに言った。
「ずっと一緒にいよう」
俺の言葉にセリナは「はいっ!」と涙を流しながら答えてくれた。
しばらく2人でゆっくりした後、俺はセリナに聞いた。
「さて、そろそろ寝よっか?」
俺の言葉にセリナも頷くと2人でベッドに入った。
直ぐにセリナがくっついてきたので手を肩に回し抱き寄せた。
するとその時お互いの耳環がコツンと当たった。
一瞬だが仄かに光ったように見えたのは気のせいか?
そんな事を考えていたら、セリナの寝息が聞こえ始めた。
俺はその様子に安心すると、昨日とは違ってすぐに深い眠りに落ちた。
翌朝目を覚ますとセリナは既に起きていて、体を起こす俺に声を掛けてきた。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「おはよう。今日はぐっすり寝れたよ!」
そう返事するとセリナは笑顔で「準備ができたら朝食に行きましょう!」と言ってきた。
……昨日とは立場が逆転したな。
ふとセリナに目をやると耳環がある右耳を出していた。
よほど嬉しいのだろうか?喜んでくれてるなら何よりだ。
俺はすぐに準備を済ませるとセリナと一緒に食堂へと向かった。
さっそく席に着くとウェイターさんは頼む前に料理を2人分出してくれた。
……優秀だな。
野菜炒めとパン、スープはやっぱり美味しかった。
料理を楽しみながら雑談する中でセリナが伏し目がちに聞いてきた。
「あの…旦那様…今日の予定って決まってますか?」
どうしたんだろ?行きたい場所でもあるのかな。
俺は「特に決まってないよ」と答えると、セリナが聞いてきた。
「でしたら1人でちょっと青果市場に行きたいのですが…ダメですか?」
良いよ全然おk……って
……え?
「1人で?」
セリナが1人で青果市場……大丈夫か?
こんなに可愛いセリナを1人で歩かせるなんて……いや、束縛はダメだ。彼女の意思を尊重するべきだろうけど……心配だ。
そんな事を考えていると表情を暗くしたセリナが言った。
「ダメなら良いんです」
悲しそうな顔のセリナを見て俺は決断した。
アイテムボックスから10万Gが入った袋を出すとセリナに渡して言った。
「よく分からないけど気をつけてね?」
セリナは嬉しそうに袋を受け取ると、駆け足で宿を出て青果市場へと向かった。
……心配だ。
後をつけるか?
いや…それじゃストーカーじゃないか。
でもなんでまた青果市場になんて行くんだ?
まさか……手料理でも作ってくれるのか?
そうか!そういう事か!!
俺は勝手に妄想すると喜びのあまりニヤニヤした。さて…じゃあ俺は腹を空かせてる為に町の散策の続きでもするか!
ハイテンションの俺も宿を出ると散歩を始めた。
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