学生三人が異常な力をもって異世界転生!?
アーク
プロローグ
勇者編 第0話 新たな人生
―ここはどこなんだろう?目が覚めると暗い空間に立っていた、少し先にわずかに開いている扉がありその隙間からかすかに光が漏れている。
「私なんでこんな場所にいるんだろう……」こんな場所は見覚えがない、夢かと考えたりもしたけど起きている時と同じくらい感覚ははっきりしている、夢だとこんなにはっきりしていることはほとんど―というか今までなかった。
そう考えていると扉の前に白い霧のようなものが集まってきて人の形になった。あまりに不思議なことが連続で起きたためかもはやリアクションすら取れない。
「ようやくお目覚めですか……随分遅かったですね、天樹蛍さん。」呆れた女性の声が聞こえる。というよりいきなりそんなこと言われても私だって好きで寝てたわけじゃない。それになぜ私の名前を知っているんだろう。
「えっと……あなたは誰なんですか?それにここは……?」もしかしたら何か知っているかもしれないと思い訪ねてみる。
「私の名前はアルマ、ここは私が作り出した貴女が住んでいた世界とは別の世界の入り口です。」割と丁寧に説明してくれた。けどそれより気になったことが一つあった。
「私が住んでいた世界とは別の世界……?どういうこと?」
「覚えていないのですか?貴女は元々住んでいた世界で死んでしまったのですよ?」
「そういえば……確かあの時……」ぼんやりと自分の身に起きたことを思いだす。
―8月某日、私たちは夏休みの真っ最中だった。特に予定もなかったので学校でよく集まっていた友達を誘ってカラオケに来ていた。3時間くらいしかいなかったが盛り上げ上手な男子や私自身ネタ満載の曲を歌っていたのでかなり大盛り上がりだった。
「もうすぐ終わりかー……早いもんだねぇ……」楽しい時間はあっという間に過ぎるとよく言われるが全くその通りだと思う。でも友達が用事があると言っていたのでこれくらいの時間しかできなかった。会計を済ませてカラオケボックスを出て友達と別れて一人で家に帰っていた。
「暑い……コンビニにでも寄ってアイスでも買おっかな」天気予報では今日は30℃を超えると言っていた、アイスや冷たい飲み物でも口にしないとやってられないほどだった。そう思うといてもたってもいられずコンビニに向かってダッシュした。コンビニは冷房が効いていたはずだから多少汗をかいても問題ない、そう考えながら横断歩道を渡っていると横から大型トラックがすごいスピードで向かってきた。
―当然よけられるはずもなく私はトラックに撥ねられ吹っ飛んでいった。数メートルくらい飛んで頭から道路に激突した。すぐに視界が暗転していき周りの音もだんだん聞こえなくなった―あの時最後に見た景色はすがすがしいほどよく晴れた青空だった
「……思い出した。私トラックにはねられて死んだんだった」周囲確認をせずトラックにはねられて死亡、自分でも馬鹿だと突っ込みたくなるような死に方をしたものだ。それにしてもまさか小説とかでよくある異世界転生を自分自身が体験することになろうとは思いもしなかった。
「話は変わるのですが、貴女に一つお願いしたいことがあるのです」お願い?そう思いながら首をかしげているとアルマは自分の世界の現状を話し始めた。分かりやすくまとめるとこうだ、アルマの住む世界は様々な種族がいてそれなりに交流もあり栄えていたそうだ。けれどもある日突然魔物の活動が活発になり住民を襲うことが増えたのだそうだ、魔物が人を襲うことは不思議ではないのだがその頻度が増えてきているらしい。
「私も自分自身で原因を調査したりしていました、あの地に残る伝承などが書かれたものを読んでいきました。そこで一つの結論にたどり着きました。」
その結論というのが―魔王が復活したのではないか、ということだ。まぁゲームとかではよくあるような展開だ、そういうことがあっても不思議じゃない。それで自分一人だけではどうしようもできそうにないと思ったらしく。
「ですので……私に力を貸していただけませんか?このままでは魔物に支配され光が失われてしまいます……」
「分かりました、私でよければ力を貸しますよ」少し考えてから私は笑顔で返事をした。
正直に言うと不安のほうが大きかった、こんな大きな事態に私一人が加わっても何も良い方向に行くわけないんじゃないかと思っていた。けれどもこんな小説でしか見たことがない展開を生身で体験できるんなんて凄くラッキーなのではないかという気持ちもあった。それに一度死んでしまっている身、二度目の人生をこういう形で歩むのもいいんじゃないかな。
「ありがとうございます。実は貴女以外に二人をこの世界にお呼びしたのですが……貴女が寝ている間にもう旅立ちましたよ」
なにっ、私以外にも転生してきた人がいるというのか。これはぜひ会いに行かなくては。そう思って立ち上がり進もうとするとアルマに止められた。
「待ってください。貴女は今魂だけの存在、このままいっても誰にも気づかれませんよ。」
「……え?魂だけの存在?」しばらく考えているとそういえば死んだのだから魂だけなのは普通なのかなという結果に落ち着いた。
「とりあえずあちらの世界で普通に生きられるよう貴女に身体を与えます。そのままじっと動かないでくださいね」そういうと私の目の前に手をかざして何か呪文のようなものを唱え始めた。するとどんどん透けていたからだが生きている人と同じように変わっていく。
「おー……これであっちの世界でも普通に前生きていた世界と同じように生活できるんだね!」俄然テンションが上がってきた。
「まぁ身体を与えたのとは別にほかの力も与えましたが……あえてそれはいいません。近いうちに気付くことになりますから。」
え、なんかその言い方すごい怖いんですけど。みたいな表情を浮かべる
「これで準備は整いました。この扉を開けて私の世界へ行ってください。」そういうと人の形が崩れて霧となって消えていった。私は扉の目の前に立ち深呼吸をする。
「よし、行こう」そういって扉を開けた。ずっと暗闇にいたためか急に多くの光が入り眩しくて目を瞑る。
扉の先には美しい景色が広がっていた、雲一つない快晴広大な草原、私はさっきまでのことを忘れて魅入っていた。まさか転生していきなりこんな景色を見られるとは思っても見なかった。
「っと、いけないいけない。つい見惚れてしまった……いざ新天地へ!」私は2度目の人生の始まりの一歩を踏み出した。
ーが。
「……ん?」地面に足がつくような感触がなく足元を見ると―そこに地面はなかった、景色ばっかりに目が行って足元を見ることを忘れていた。気づいた時にはもう遅く地面へと向かった真っ逆さまに急速落下していった。
「ちょまっ嘘嘘うそでしょぉぉ!!??なんでこうなるのぉ!?」どうにかしようとむがくが抵抗もむなしくどんどん地面との距離は近づいていく。いくら一度死んだ身とはいえさすがにいきなり高所から転落なんてことになればこうなるはずだ。実際私だったそうしたんだから。
そうこうしているうちに地面との距離はどんどん縮まりついには背中から激突した。全身の骨が折れる音が頭の中に響いて視界が真っ赤に染まり意識が遠のいていく、私は人生二度目の死を迎えようとしていた。
「…い……おい…!大丈夫か!」突然誰かの声がして意識が呼び戻された。意識が戻った直後だからか体が固まったみたいに動かしにくい、うっすら目を開けるとぼんやりとしか見えないが鎧を着ている男性が私の顔を覗き込んでいるのが見えた。目が開いたのがわかると男性は驚いたような表情をして周りに声をかけている。起き上がろうと手を動かすと何かの液体に触れているのが分かった、なんだろうと思って自分の手を見てみると指に血がついていた。
「っ!?」
それを見た瞬間ぼんやりとしていた意識がはっきりとして叫びそうになったがなぜかうまく声が出ず息が漏れるだけだった。一旦息を整えてゆっくりと体を起き上がらせる、なんとなくどうなっているかは想像がつくがそれでも少し怖い。そう思いながら自分が倒れていた地面を見ると地面には大量の血がついていた。乾いてはいなかったからそこまで時間は経っていないようだけどこんなに血が流れてよく生きていたものだ。
「君!大丈夫か!?痛みはないか!?」衛生兵らしき人が慌てて質問攻めにしてくる。あれだけ高い場所から落ちたにも関わらずどこにも痛みは感じない。
「大丈夫です、痛みはありません」笑顔でそう答えると衛生兵は良かったといわんばかりにふぅー、と息を漏らした。
「それならいいが……念のため城の治療師に見てもらうことにする。そのほうが安心だろう」そういうと私はお姫様抱っこされた。少し戸惑い下ろしてもらおうとしたが断られてしまった。そのまま私は衛生兵と共に王国へ向かうことになった。
「彼女はいったい何者なんだ……?」衛生兵を見送った兵士は地面に飛び散っている血を見下ろしながら呟いた。ただの人間がこれほど大量に血を失えば普通は死ぬはず、なのに彼女は生きていた。それよりも疑問だったのがなぜ人間が倒れていたのか、そもそも彼女はどこから来たのか。考えれば考えるほど怪しい部分が出てくる。
「今考えてもわかりはしないか……彼女に直接聞くしかないようだな」そういうと馬に乗り王国のある方角へと馬を走らせた。
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