第14話 霞敷く 立-4 正蔵の心中
逃げ帰るようにして八科稲荷神社を去ってから三日が経った。あの一件後、翌日に職員に問題提起をし、本庁が人員を手配してくれるまでは経験を積むという意味をも兼ねて一人ずつ派遣することになった。そしてそのさらに翌日——つまり、神社へ行った二日後から、人の手が実際に入るようになり、効果もあったのか眷属の狐が一匹ついてきてすぐに礼を伝えられた。
…しかし、今だ霞は出てくることができないでいるようだった。あの日何とか消える前に神木にたどり着けたものの、「しばらく休みますぅー…」との一言を言い残して姿を見せていないのだ。いい加減、心配にもなってくる。大丈夫だろうと正蔵が読んでいても不安が消えることは無く、それでいて葵が神木の傍らにいるともなればますます不安はよぎる。
「休んでいるだけだと思うので、多分大丈夫ですよ」と葵も言うが、片時も離れないその姿は病んで臥せったわが子の傍について離れない母親を想起させるものだった。
帰ってから毎日、今日は顔を出していないか、今日こそは元に戻っていないか、と見回ってみるのだが状況に進展はない。
…自分が許可してしまったからか?軽々にこういうことをしたものだから、無理がたたって九十九を失おうとしているのか?という嫌な予感が背筋を伝う。そのたびに本体である杜は無事なのだから、きっと末娘も大丈夫に決まっている、あしたにはきっと顔を出してくるだろう、と自分に言い聞かせて眠りにつく日々が続いた。
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