第39話
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
これはここ数日アキラがよく口にした言葉ベスト3である。
だが、アキラは一生懸命頑張ってマオを助けようとしている証拠ではないだろうか?
小さい頃から付き合いがあり、そしてからかわれながらも多くの時を一緒に過ごしてきた。
その積み重ねが無かったことにされるのは耐えがたいものではないだろうか?
まぁ結局マオは助かるのだが……。
だから彼は、一生懸命挑み続ける。
不思議と見た覚えのあるこのダンジョンに運命を感じて!
まぁ動画で似たダンジョンを見たことあるからなのだが……。
そんな幸運の低いアキラは!
「ぬぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
消滅5日前であった今日も、モンスターから終われて逃げ回り、そんな悲鳴をあげて協会送りになった。
「あ、アキラちょっと待……」
そして、レイジの話を聞く前に教会を飛び出してダンジョンへ向かうのであった。
…………。
さて、その頃ジンレイは。
「……アキラの肉まんが食べれないとイライラするな……」
アキラに餌付けされている効果が発揮されていた。
彼女の口は、あのジューシーな味わいを求めているのか、ヨダレがだらーっと垂れ流しにされている。
本来ならスマホで連絡を取り、マオが消滅しなくなったことを報告するのだが、アキラは家にも戻らずダンジョンへ潜り続けている為、スマホの充電ができずにバッテリー切れを起こしている模様である。
だが、そんなことを知らないジンレイは、行方不明のアキラの心配をしてしまう。
そして。
「このまま、あの肉まんの味を失うのは人類の損失だな……。 たぶん教会をにいけば会えるだろう」
そう思った彼女は、アキラに伝えるた自分の部屋を出て、協会へ足を運ぼうとしたその時。
「教会には行かせないわ! 絶対アキラに私が無事なことを伝えさせてあげないんだから!」
扉を出たすぐ、モンスターAことマオが立ちふさがる。
当然ジンレイは。
「どうして邪魔をするんだ?」
そう問いかけるのだが、その質問にマオは大笑いしながら答える。
「あっはっはっは! だってそうした方がアキラが嫌がるじゃん! 面白いじゃん!」
マオはどこまでいってもマオのようだ。
それは、アキラに嫌がらせしてきた習慣からなのか?
いずれにせよ、継続が体に染みることを表すいい例なのではないだろうか?
だが、アキラの肉まんを継続して食べてきたジンレイも引くわけにはいかない。
だから彼女は珍しく血走らせた目を見開いて、マオに脅しをかける。
「私はアキラの肉まんを五日も我慢しているんだ……。 五日だ、これは不名誉な記録だぞ……」
「い、いや……。 別に不名誉じゃないと思うんだけど……」
「不名誉だ、これは不名誉な事実だ……。 だから邪魔するようなら容赦はしない……」
その迫力はマオも一歩後ろに下がってしまう迫力があった。
だがしかし、マオは今回、勝算を持っていた。
と言うのも。
「ふっふっふ……。 やってみなさいよ……。 私は遂に、魔王の力をモノにしたのだから!」
ジンレイが願った「マオを幽霊じゃないようにしてほしい」と言う言い方を宝石は。
幽霊じゃないようにする(幽霊以外)=人間か魔族=人間と魔族のハーフ
と言う風に判断したらしい。
どうやらジンレイの言い方が悪かったようだ。
その為、マオには今、吸血鬼のような牙が生えているし、マオの特殊スキルで全部1になるような事態も起きていない。
つまり、彼女は運良く強くなれたのだ!
「さぁジンレイ、覚悟しなさい!」
そして今、(半分)魔王であるマオとの決戦を迎えることになった勇者ジンレイは、最後の戦いに挑むのであった!
だが戦いは10秒で終わりを迎えた。
ジンレイは懐からキャロライナの瓶を取り出すと、それを一瞬でマオの口のなかに、そして口の回りをビニールテープでぐるぐる巻きにした。
結果としてマオは、辛さのあまり、地面をのたうち回りながら、必死にテープを取ろうとしている。
「もが、もがが~」(ちょ、ごめんなさい! だから助けて!)
そして、そんな泣き顔浮かべて助けを求めるマオの事など気にせず、ジンレイは、教会へと足を進めていった。
…………。
「ん? おめぇか?」
「アキラが来るまで待たせてもらうぞ」
「なるほどな……。 あんにゃろう、『マオは無事だぞ』って祭からの伝言、棺桶からすぐ飛び出して出ていくから聞いてくれないんだよ……。 だからおめぇに任せるぜ!」
「分かった」
教会にやって来たジンレイは協会の長椅子に座っていたレイジとそんな会話をした後、ジンレイはレイジの列の一番後ろへ座ったその瞬間。
ゴトッ!
棺桶が祭壇の前に出現し、それが床へゴトッと落ちる。
そして。
「急げ! ん? ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ジンレイは棺桶から飛び出して出ていこうとするアキラに、残ったキャロライナの粉末をかけるのであった。
…………。
「ジンレイ、お前な……。 目がむちゃくちゃ痛かったんだぞ……」
「話を聞かずに飛び出していると聞いたからだ」
「だが、やり方ってモノがあるだろ、やり方ってものが!」
「悪かった、だから肉まんを作れ!」
夕暮れも帰り道、二人はそんな会話をしながら寮へと足を進めている。
ただ、そんな中でも、二人の顔はややにこやかに見える。
そんな二人は森のトンネルを潜り、地面の一点を照らす様に取り付けられた電柱の明かりを横切り……。
そんな道を歩いた最後には、とても高い鉄の柵に囲まれた寮が見えて来る。
それがジンレイやアキラ達が住む寮、そう、エーテリアルである。
そして、アキラが自分の部屋に戻り、肉まんの餃子をしようと扉を開けたその先には。
「げほ……。 ち、違うぞアキラ! 私はパンツを見に来ただけだ。 これはその……たまたま目についた銃のようなこれの引き金を引いたらだな……」
勝手に部屋に侵入し、レイジが作った銃もどきの引き金を引き、部屋ごと真っ白になったツカサの姿だった。
そして、それにつられてか。
「おぉジンレイ、事は済んだみたいじゃな。 良ければ魔王城についての話をしたいんじゃが……」
「ジンレイ、覚悟!」
セラティアと唇を張らしたマオがそう言いながらやって来る。
それは、彼の人徳でもあるかもしれないが、HP1だからと言って卑屈にならず、そしてそれを笑いに変えてくれる、そんなところが彼のいい点ではないだろうか?
結局、どんなデメリットも使い方次第では、長所になり得る、それを彼は教えているのかもしれない。
「ふん!」
「甘いわねジンレイ! パンチなんて私に通じないわ!」
「ぐえ!」
だからと言って、彼が友情シールドにされなくなると言うことは永遠にないのだろうが……。
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