第三章

第21話

 話は現在に戻って……。


 マオがニワトリ達とともに、教会を襲い、そしてニワトリを強奪した。

 しかも、魔族になってしまったかもしれない……。


 その言葉を聞いたアキラとジンレイは黙りこんでしまった。

 ただそれは、マオのそんな行動に驚いてと言う訳ではない。


 と言うのも二人が共通して、マオがそのような行動をした理由を。


 《マオがアキラをからかう事が非常に大好きだから、マオがアキラへの嫌がらせとしてそんなことをしたんだろう》


 と考えている為、今更そんな行動をとったところで。


 ((ついにやったな……))


 とその行動に呆れ。


 ((と言うか、魔属化するってファンタジー過ぎだろう……。 その話が本当なら大ニュースだって……))


 と割と現実的に考えるのであった。



 さて、そんな二人と全く違うのが、愛情と発情の表裏一体を体現したツカサだろう。

 呆れた顔で黙りこむ二人と違い。


 「ま、マオが魔族になっただと!? つまりマオは悪落ち、悪落ちしたと言うことだな!? あぁ、きっとセクシーな大人の体に羽が生えたようなまがまがしい姿に……。 もう我慢できん! こうなっては魔族になったマオの姿を見にいってくる!」


 そう言って部屋を飛び出すのであった。

 そして、残された三人は。


 (((もう勝手にしてくれ……)))


 と思いながらため息をつくのであった。

 そして、そんな空気を破るように。


 「……とりあえずお前ら、マオを見つけたら連絡くれ!」


 祭はそんな言葉を残して去っていき。


 「アキラ、とりあえず追加の肉まんを要求する。 コンビニで買った肉まんが尽きた……」

 「分かった今から作るぞ、俺も何か気を紛らわせたいし……」


 アキラは肉まんを作り、ジンレイは座って出来上がるのを待つのであった。


 …………。


 「ありがとう、送ってくれて!」

 「コケ! コッコッコッコ」(良いってことよマオ嬢ちゃん、お前は俺たちを助けてくれたからな! んじゃ、またな!)

 「じゃあね~!」


 さて、自分の部屋から着替えを回収したマオはニワトリの背中に乗せてもらい、魔王城まで送ってもらった。

 今やマオは、ニワトリ達と深い仲で結ばれている。

 それは、当然教会襲撃の功労者と言うのもあるが、ニワトリのリーダー格が何だかんだ認めている節があるからなのかもしれない。


 「セラちゃんただいま~」

 「おぉマオ、よく帰ってきた! 早速だがお主に渡すものがある!」

 「ん? 何?」


 さて、魔王城と名前だけは立派な小屋へと帰ってきたマオに、セラティアは手のひらサイズの黒く丸いエネルギー体を差し出し。


 「これは魔王の力の塊じゃ! これを体に受け入れれば魔王になり、強さも人間とは比べ物にならないほど強くなるはずじゃ!」


 そうマオに嬉しそうな顔を浮かべて告げるのだが、マオは二つの疑問を持つことになる。

 それは。


 「でも、それだと魔王であるセラちゃんはどうなるの? あと何か身体の変化とか起きたりしない?」


 という疑問だった。

 しかしセラティアはそう聞かれるのは予想していたらしく。


 「ふむ、やはりその点が気になったか! これはあくまで魔王の力を渡すだけじゃ、別に命が無くなるわけではない! まぁ、我は魔王でなくなるから、弱くなってしまうが、それでも我はそこそこ強いから問題ないぞ! 身体の変化については聞いたことがないぞ、あくまで力を得る様なもんじゃし問題ないじゃろう!」


 まるで事前に練習していたかのように、スラスラ言葉に詰まることなく、マオの質問に答えた。

 だがそれでもマオの問いかけは尽きない。


 「で、でもどうして私なの!? 私、レベル低いんだよ!? しかも仲良くなってまだ時間もたってないんだよ!」


 しかしこれは、質問というより、マオの気遣いだったりする。

 自分のような弱い者より向いているものがいるんじゃないか?

 しかも、魔王になるまで早すぎないか?

 そんな思いを含んだ問いかけだった。


 それを聞いたセラティアは、「クカカ!」と笑い声を短くあげると、嬉しそうな表情でマオにこう説明する。


 「マオ、我はなマオを認めておるのじゃぞ。 あっという間にクックキング達の心をつかみ、そして慕われた力を! そう、お主にはきっと、魔物すら惹き付けるカリスマがあるんじゃよ! ……もしかしたら、初めて出会ったとき、我がお主に声をかけたのも、お主のカリスマに引き付けられていたのかもしれぬのう……」


 その説明はマオにとって大変嬉しいものだった。

 そして気分を良くしたマオは。


 「へ? 嬉しいね~そう言われると! そしたら私、魔王になっちゃう!」


 と宣言した。

 そんな時だった


 「わっはっはっは、ならばマオ! この魔王の力を受けとるが……」

 「マオ~、悪落ちした姿を見に……じゃなくて、大人になった姿を目に焼き付けに来たぞ~」

 「つ、ツカサお兄ちゃん!? どうしてここに!? と言うか何でここが分かったの!?」

 「それは、空気中に残っていたマオの香りを辿ってきたからに決まっているだろう!」

 「うわぁぁぁぁぁぁ! それより我が魔王城の窓ガラスがぁぁぁぁぁぁ!?」


 ツカサが窓ガラスを叩き割り、魔王城へと飛び込んできたのは。

 そして、窓ガラスが割れたことに驚くセラティアをよそに、ツカサは早速。


 「さて、悪落ちした姿を……ん? 何も変化がないのだが?」

 「いや、ツカサお兄ちゃん、なにを言いたいか、よくわかんないんだけど……」

 「へ? 悪落ちしたわけではないのか!?」

 「いや、悪落ちってなんの話よツカサお兄ちゃん……」


 マオの今の姿をじっくり眺めるのだが、全く変化のないことに軽く驚き、そしてそんなツカサの発言にマオは呆れた目でツカサを眺めるのであった。

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