姫神の女たちⅠ 蓬莱梓巫女 【ノーマル版】

あけましておめでとう

「美子、遅かったじゃないの！」

「茜姉さん、忙しかったのよ、突然呼びつけて、何のようよ！」

「まぁ、とにかく私の船室へいきましょう、カウントダウン＆ハッピーニューイヤーパーティーには、もう少し時間があるから」

「この間、東京聖女女学校で、カントリー・ミュージックを披露したのよね、大好評だったと聞いたの」

「だから歳越しと、新年のパーティーにミュージシャンをしてよ！」

「えっ」

「たしかエラムで新年の行事にでるのよね、でも１２時半までなら大丈夫でしょう、アナーヒターなら朝までにエラムへ行けるでしょう、時差もあることですし♪」

　カウントダウン＆ハッピーニューイヤーパーティーは、１１時から始まりました。

「本日は歌姫を呼んでいます、なかなかの美女ですよ、でも酷い色魔ですから、毒牙にかからないようにね！」

「皆さんは、この歌姫の時の名前は知らないでしょうが本人は知っている方もいるでしょう、ではヴィーナス・セリムさんをご紹介しましょう！」

　茜さん、酷い紹介をしていますが、フランソワーズさんとヴァランちゃんはエラムの人間、伝説的なヴィーナス・セリムの歌と聞いて、瞳を輝かせています。

　美子さん、背中のあいたかなりセクシーなドレスで登場です、どうやら茜さんに強要されたようです。

　ギターを弾きながら、シーシャンティ――イギリスの船乗りたちの労働歌――を次々と歌っています。

　ドランクン・セイラーを皮切りに、スペインの女たち、ホール・アウェイ・ジョー、ブロー・ザ・マン・ダウン、ワップ・ジャンボリー、さよなら　さよなら。

　いよいよ１２時に近付いてきました。

　ここで歓喜の歌の歌詞が配られます、合唱部分が指定されています。

「皆さん、来るべき新しい年を皆で迎えましょう、皆で力を合わせ迎え入れるのです、この蓬莱の明日に神の祝福がありますように！」

　そして定番の歓喜の歌を歌い始めました。

　集まっていた女性たちは、引きずられるように声を揃えます、そして新しい年がやってきます。

　美子さん、カウントダウンを始めました。

　そして新しき年がやってきたのです。

「あけましておめでとうございます！今年は良き年になりますように、皆さんに祝福あれ！蓬莱に輝かしい光がみちますように！」

　そして椿姫より、乾杯の歌を歌い始めました。

　最後にカルメンより闘牛士の歌を歌います。

　ここで、こんなことは滅多な事に言わないフランソワーズさんが声をかけました。

「できましたら、アメージング・グレースを！」

　美子さん、エラムで歌った歌詞で歌い始めました。

　♪

　胸を吹き抜く　神の風よ

　迷いの霧を　払い給う

　救いを背にし　罪は深く

　悔いる日々にも　風は吹き抜け

　重ねた涙を　癒すように

　荒んだ心に　道は示され……

　慈愛に満ちた　安らぐ風よ

　背中を押され　世界は開く

　星の世界に　舟を浮かべて

　私は唄う　神の愛を

　光に満ちた　世界を目指し

　諸人と共に　力を尽くさん……

　♪

　そして『あけましておめでとう』と再び言葉にして、美子さんは下船していきました。

　宇賀さんはしみじみ、この歌詞をかみしめていました。

　稲田さんに、

「まさに蓬莱に送られたことばなのでしょうね…」

　光に満ちた　世界を目指し

　諸人と共に　力を尽くさん……

「美子さまの決意でしょうね、有難い事です」

　稲田真白の感想に、宇賀真琴は心底同意しました。

　この後、宇賀真琴はクリームヒルトに協力し、蓬莱世界が落ち着くと、惑星蓬莱の執政官となったのでした。

　かなりの未来になりますが、惑星蓬莱が直轄惑星に昇格したのは、宇賀真琴の力が大きかったようです。

　ＦＩＮ