第六章 ヴァランティーヌの物語 修学旅行
京都は呼ぶよ
吉川ヴァランティーヌは、聖ブリジッタ女子学園山陽校付属女子小学校の六年生。
見てくれとは大違いのお転婆娘、毎日騒々しく日々を過ごしている。
そして付属女子小学校の六年生にも修学旅行が……
行く前から、異様にテンションがアップのヴァランティーヌ。
行先は千年の古都京都、さてどうなる事やら……
* * * * *
十月半ばともなると、いくら温暖な瀬戸内といえど、多少は肌寒くなってくる。
聖ブリジッタ女子学園山陽校付属女子小学校六年の吉川ヴァランティーヌに、そんなことは関係ないようで、毎日元気一杯、お友達の明子ちゃんと遊ぶのだが、今日は違っているようだ……
宇賀ビルのいつもの喫茶ルーム、二人は真剣に相談していました。
「珍しいのね、二人がおやつを取りに来ないなんて、どうしたの?」
いつもなら、油揚げ専門店コン太一号店に顔を出し、森彰子にお菓子をもらう二人なのです。
「あっ森さん!忘れていた!」
「待っててね、持ってきてあげるから、今日は私の作ったスコーンよ、ココアもサービスしてあげるから」
持ってきてもらったスコーンを、躊躇無くいただきながら、
「ねぇ森さん、お願いがあるの?」
「なあに?」
「あのね、こんど修学旅行なの、でね、ヘヤーバンドを買いに来たの、でもね、なにが似合うかわからなくて……」
「そうね、聖ブリジッタの小学校も、修学旅行の季節だったわね、今年はどこへ行くの?」
「京都!」
と、二人がはもっています。
「それで、お洒落をしたいわけね、女の子ですものね、でもヘヤーバンドはいいの、校則うるさいでしょう?」
「大変なの、スカートのすそが短いとか、髪は束ねろとか、ソックスまで指定するのよ!」
「でも、ヘヤーバンドはOK!」
と、明子ちゃんがいいます。
「そこのファイブハンドレッドで買うの?」
「お母さんがお小遣いの中でなら、買ってもいいって、だからできるだけ安いお店がいいの!」
明子ちゃんのお母さん、かなりしっかりしつけをしています。
「分かったわ、お姉さんが一緒に行ってあげる、いまお店、暇だから」
喜んだ二人は、森さんの手を引っ張ってお店に入ります。
「あら、森さま」
「今日は可愛い娘さんの付き添いなの、ヘヤーバンドあるかしら?」
「こちらに少しばかり置いております」
「これなどどうかしら?」
「もっとキラキラしたのがいい!」
「じゃあ、これは?ビーズが一杯付いているわよ?」
「色が暗いわ!」
かなりいいますよ、この二人は……
結局、細いヘヤーバンドで、ラメがあしらわれたパステルのヘヤーバンドを三本、お買い上げとなりました。
一つ百五十円、三つでお小遣いのうちに入るようです。
「三つも買ってどうするの?」
「コーディネイトするの!二ついっぺんにつけると可愛いわ、これなら服を変えても、ヘヤーバンドの組み合わせを変えれば、使えるわ」
「ヴァランちゃんとおそろいで、少し違うというのがいいのよ」
頑張ったお陰で、極めて満足なお買い物が出来たようですが……
「二人とも帰らなくていいの、そろそろ五時よ」
なんと一時から、四時間も粘っていた二人でした。
やれやれ、貴子さんとフランソワーズさんに、電話しといたほうがよさそうね……
しかし森さん、幼い二人のお買い物に付き合って、すこし癒された気分でもありました。
ヴァランちゃん、あわてて帰ったお陰で、なんとか夕ご飯に間に合ったようです。
このごろはフランソワーズさん、浮田貴子さんに教えてもらったようで、料理などをしてくれます。
もっとも、浮田惣菜商店から購入したものを、温めるとか、炒めるとかするだけですけど、格段の進歩です。
ご飯を食べながら、ヴァランちゃん、購入したヘヤーバンドを持ち出し、とっかえひっかえ組み合わせを変え、クリームヒルトとフランソワーズに聞くのです。
「ねぇ、これがいい?私の髪に似合う?」
ひとしきりヘヤーバンドを見せびらかしたヴァランちゃん、次に大事そうに持っている紙を、持ち出しました。
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