美月

第1話

わたしはひとり、カラオケボックスへ向かった。

高校生のわたし。


すごく内気だった。

内気というよりは病的に人が恐かった。


家には情緒不安定な母親と、3歳の妹。

わたしが何か失敗すると、母は空っぽのスーツケースを持ち妹を胸に抱き、もうわたしはあなたの面倒は見られません、と出て行く。

幼い頃は泣き叫んで母親と妹を追った。


中学生になると、その光景にも慣れてくる。

そして少し自分の意見も言えるようになっていた。

すると母親は、わたしの意見を聞き自分に勝ち目がないと悟ると、玄関で土下座し、わたしが悪う御座いました、許してください、と言いながら泣き叫ぶ。


そんな毎日、わたしは学校でもほぼ人と喋らないでいた。

わたしのどの言葉、態度で人を怒らせ、豹変させてしまうか分からなかったから。


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