ある戦争の一幕

文屋旅人

ある戦争の一幕

「おい、新人緊張しているのかい?」

 軍曹が僕に声をかける。

「ええ、緊張してます。あの糞ったれどもは数ばかりは我々を圧倒しています」

 僕はあいつらに憎悪をぶつけたい。あいつらのせいで父は死んだんだ。

 だけど、実際のそれを見ると……体が震える。

「安心しろ、我々は軍隊だ。暴徒に負けない、そうだろう?」

 軍曹が笑う。

 そのおかげで、ルイス機関銃を持っている僕の震えは収まった。

 どどどどど、と音がする。

「来たぜ!」

 軍曹の声がする。

 僕は前を見た。

 来た、来た、来た、来やがった! あの悪魔たちが音を立てて、こっちに来た!

「Fire!」

「OK!」

 すぐさま機関銃をぶっ放す。

 奴らは悲鳴を上げて瞬く間に肉塊となる。

「Fuuuuuck! 悪は死んだ!」

 喜びのあまり、叫んでしまう。

「メレディス少佐の立てた作戦は見事だぜ! 我らの国に勝利を!」

 軍曹が叫ぶ。

「勝利を!」

 僕も叫んだ。

 なんてすがすがしい!

 勝てる、僕らは勝てるんだ!

 あの悪魔を蹂躙し、僕らの大地を取り戻すんだ!












 この二人が所属している軍隊はオーストラリア軍。

 彼らが戦う相手は二万を越えんとばかりに増えたエミュー。

 人とエミューの戦いが始まった。













 そしてオーストラリアは負けた(史実)



          了

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ある戦争の一幕 文屋旅人 @Tabito-Funnya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ