オッサンの真実

宮瀬直

花粉症①

 今朝、学校に向かう電車の中で、隣に座ったオッサンがスマートフォンを見ながら涙を浮かべていた。

 それに加えて何度もズルズルと鼻をすするから、気になって横目で見たら、その人の目はもう真っ赤になっていた。――おそらく、花粉症。

 ちゃんとマスクしてくりゃ良いのに。こんなに晴れていて風も強けりゃ、花粉がバンバン飛ぶことくらいわかるだろうに。


「はあ……」


 誰にも聞こえないくらいの小さなため息をついて、いつものように音楽を聴こうとした時だった。


「大丈夫ですか?」


 その声に、イヤホンを掴んだ手が止まる。

 顔を上げると、自分と同じ制服に身を包んだ一人の女の子がオッサンに声をかけていた。――同じクラスの白石しらいしさんだった。

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