第五章

「どうして!?・・・ミスティー?」


「さぁ、彩花様?クリスティア様ですよ?沢山浴びて下さいね?そして皆でローテンマリゼ様のモノになりましょう?」




戻って・・・いなかった?・・・

それとも今クリスティアが近づいて来たから?

もう・・・終わりだ・・・私・・・私・・・




パァァァァァァァァァ




絶望の状況で目を閉じた私だったけど、その一瞬の隙に結界が張り巡らされていた!!




「ん・・・あれ?・・・私?・・・ミスティーとクリスティアは?それにアーニャン?どうして?・・・」


「敵じゃないけど、敵を欺くには先ずは、味方からって言うでしょ?」


「じゃ・・・じゃぁ!もしかして!?・・・」


「うん!掛かった振りをして彩花に近づいた時に結界内に連れて行くだろうと踏んでいたよ・・・ミスティーは間違い無く元に戻っていた・・・恐らくクリスティアをこちらへ近づけようとしての策・・・だろうね?」


「アーニャン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「うっ・・・苦しい・・・ちょっと彩花?・・・気持ちは分かるけど・・・」




私は嬉しくて、安心して、思いきりアーニャンに抱きついた・・・




「でも、確かまだ3人残っているよね?」


「うん・・・・・ファランドーラとサミュールとセミュールよ・・・」


「恐らく彼女たちはここからかなり離れた方向へ進んでいるみたいだよ・・・今は夜だし性格に位置が把握し辛いからね・・・」


「うん、でも後少しだから頑張れる!!とりあえず、ミスティーたちが戻るのをここで待ってよう?」


「そうだね・・・ミスティーも、もう少し活躍してもらわないといけないみたいだし・・・」


「それにしても、どうして2人はクリスティアのオーラに負けなかったのかな?」


「私はフィールドを体から放出させてオーラと言うものを吸収しない様にしたんだ!恐らく多くの魔族たちはある程度のフィールドなら張れるはずだよ?」


「そうだったのか・・・じゃぁ、不意打ちだと結構際どい感じじゃないの?」


「そうだね・・・唐突にオーラを浴びてしまう・・・君たちの仲間の様な状態だとまずいかも・・・」




色々と話をしているとミスティーたちが戻って来た!!




「彩花・・・彩花ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




クリスティアが悲しそうな表情を浮かべて私を抱き締めて来た。




「うん・・・もう・・・大丈夫だよ?・・・」




クリスティアは常に凛々しく、気高き姫騎士をまとっていたけど、今は至って普通の少女だった・・・とても儚くて淡い感じの・・・

クリスティアの綺麗な髪の毛を私は優しく撫でた・・・




「ごめん・・・ごめんなさい・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!」




こんなに私を抱き締めて泣きじゃくるクリスティアは初めて見た・・・でも、クリスティアも色々と辛い想いをして来たのだろうと・・・そして今回は多分・・・私に対しての申し訳無い気持ちでいっぱいなのだろうと感じている・・・






「初めまして、私はアーニャン、丁度馬車で通り掛かった彩花を連れて来たんだ!」


「私は、クリスティア・・・クリスティア=カーマイオーネ・・・人間界から彩花と共にこちらへ転移して来た者・・・この度は、私の気の緩みの為、彩花が大変お世話になりました。私は、彩花をこの世界に連れて来ておきながら、この度の一件に巻き込まれてしまった。本当に申し訳無く思っています。それから、心の底からあなたには感謝致します。」


「ううん!困った時はお互い様でしょ?・・・それに、私も結構楽しんでるよ?」


「アーニャン・・・本当に恩に着ます。」




うん・・・透き通った凄き綺麗な瞳の奥には強い芯、そして大切な仲間を守ろうとする固い意志、そして、彩花たちとの深い絆・・・全てこの1人の少女の瞳が物語っている様だね・・・

やはり置き去りにしたのは自らの意志だったのだろう・・・彩花を守る為の・・・




「クリスティア!ファランドーラとサ・セ姉妹よ!ミスティーと私で彼女たちを元に戻すから!お願いね!!」


「あぁ!分かったよ!とりあえず人間である私、彩花とミスティー、そしてアーニャン?・・・君も協力してくれるかい?」


「うん!元よりそのつもりだよ?」


「ありがとう!この恩はいづれ!」


「まぁ、そんなに固く考え無くて良いよ?じゃぁ、彩花と私で組んで、クリスティアとミスティーで組んでみようか!恐らくそっちの方がそれぞれで、効率良く元に戻せるだろうから!」


「そうだね!分かった!!では、私たちはあちら側を探すから君たちは向こう側を探してくれないかい?・・・くれぐれもローテンマリゼに出くわしてしまったら大声を掛けて逃げて欲しい・・・下手に奴に接触していたら人間である私たちも奴のオーラに支配されてしまう・・・先に3人を戻してから改めて奴とコンタクトを取る事に・・・」




こうして私たちは二手に分かれて仲間を探す事にした。

クリスティアも元に戻った今、後はローテンマリゼと接触しなければ何とか・・・




「彩花、見付けたよ!あそこの女の子って・・・」


「うん・・・いるね!あれは、ファランドーラだね!じゃぁ、悪いけど、また「知らない場所へ迷い込んだ作戦!!」でお願いするね?」


「う・・・うん・・・分かったよ!彩花が行ってしまうと警戒されると思うからね・・・」




知らない場所へ迷い込んだ作戦!!か・・・そのままじゃないか・・・ネーミングセンスと言うものが・・・でも面白いね!彩花・・・そう言うの結構好きだよ!私は!

よし、声を掛けるとするか・・・フィールド・・・オン!




「あの・・・すみません?少し道をお尋ねしたいのですが・・・?」


「はい・・・こんな時間にどうかなさいましたか?」


「えぇ・・・次の街を探していたのですが確かこの近くだと思うのですが、たった今到着したもので・・・暗くて道に迷ってしまったみたいで・・・宿を探したいのですが、この時間だし・・・」


「じゃぁ、折角ですし私とご一緒しませんか?・・・♡」


「良いのですか!?・・・では・・・」




パァァァァァァァァァ




彩花・・・頼んだよ!?




「あら?・・・私はどうしてここへ?・・・彩花様ですね!?・・・全く・・・私は何もされていませんよ?全て自分の意志で・・・こうやって・・・あれ?・・・私、どうして眠くなって?・・・ローテンマリゼ様・・・一体どうして?・・・zzz・・・zzz・・・」


「ファランドーラ?もう少しで戻れるからね・・・」






クリスティアたち・・・




「ミスティー・・・そう言えば君たち魔族はフィールドが張れるとか・・・」


「はい・・・先の一件は唐突過ぎて間に合いませんでしたが、今回は先にフィールドを張っているので私は大丈夫です!ですが、クリスティア様は出来ませんので私が前を出ます。」


「よし、演技をしようか?」


「演技?・・・あぁ!そう言う事ですね!分かりました!」




演技・・・まだ私たちは洗脳状態である事をアピールし、安堵感を与え油断させその隙に結界内へ閉じ込める・・・、




「クリスティア?お待たせ!」




ミスティーと私が残りの仲間たちを探していると彩花たちが来てくれた!

どうやらファランドーラを元に戻してくれたみたいだ!

よし!一番手強い姉妹をこれなら何とか出来るかもしれない!




「彩花とミスティーは一番後ろへ!偶然最後のつわもの2人が残っているからね!直ぐに戻せる様に準備をしていて欲しい!私が先頭に出るからアーニャンは真ん中に!」


「それだとクリスティア様が・・・」


「彩花?覚えたかい?」


「うん・・・・バッチリだと思うよ!」




ファァァァ!!!!!




「なるほど!既に彩花様がフィールドの術をを吸収されたのですね!ですが、ご自身じゃなく相手に与えると言うのは我々も存じ上げない手法ですが・・・」


「実は、彩花には応用を用いた手法も自身で操る事が出来るみたいなんだ!!」


「そうだったのですか!?・・・だとすれば、自由に操る事が確実に出来る様になれば敵無しと言う事に!?」


「けれど、それだけ消費エネルギーも高い・・・あまり彩花の身に負荷が掛かり過ぎてしまうのは至って危険だから・・・今回はフィールドだから守備的な術だ!極めて負荷は最小限に抑えられるかと思ったからね・・・彩花?大丈夫かい?」


「うん!ほとんど私は負荷は掛かっていないよ?」




こうしてほぼ仲間全員を取り戻し、残るは、サミュールとセミュールのみとなった。

先に見付けたのはセミュールだった・・・




「ローテンマリゼじゃなくて良かった・・・じゃぁ、アーニャン「美少女魔族が真夜中に森を彷徨い助けを求めて・・・作戦!!!」行ってみよう♪」


「あ・・・ははは・・・もう楽しんでるみたいだね?・・・じゃぁ、行って来るよ!!」


「待てっ!!」


「ん?どうしたの?クリスティア?」


「アーニャン・・・すまないけれど、サミュールとセミュールは力が結構強いんだ!いざと言う時の為に私も周囲から取り囲む様にする!一緒に行って途中で分かれよう・・・そして、直ぐに結界が張れる様にミスティーは私の後ろを歩いてくれないか?彩花はいざと言う時の為にファランドーラと一緒に待機していて欲しい・・・彩花たちの方に誰かがやって来たら急いで私たちの方へ来て欲しい。」




なるほど・・・流石クリスティアだね!!

私はクリスティアの提案に乗り、途中までクリスティアと共に歩き、セミュールの近くに着いたと同時にクリスティアとファランドーラが周辺からセミュールの背後に周り私はそのまま正面から声を掛ける形になった。




「あの・・・夜分すみませんが、迷ってしまったみたいで・・・」


「あぁ・・・道にですか?・・・すみません、私も初めてここへ来て探し物をしていたのですが、姉さまがいないので私も迷子なんです・・・」




ダメだこりゃ・・・・常に「姉さま」と言ってベッタリだったから1人で行動が上手く出来ないのだろうな?・・・残念だ・・・実に・・・残念だ・・・

だが、丁度気が緩んだな!今の隙に・・・




「とお思いでしたか?さぁ、私のオーラを浴びなさい?ほら?フィールドなんて破ってあげるから♡」


「ちょっ・・・うわぁぁぁぁ!!!!!」


「ダメだアーニャン!逃げろ!!間に合わない・・・」




パァァァァァァァァァ




「う・・・私は・・・?ここって結界?・・・ミスティー?・・・なの?・・・私は何も受けていないはず・・・なのに?・・・どうし・・・て?・・・zzz・・・zzz・・・」


「ふぅ~・・・危機一髪と言った所でしょうか・・・」




「アーニャン!?大丈夫かっ!?」


「う・・・うん・・・やっぱり力が強いって言うのは身に染みて分かったよ!これだと残りの1人のお姉さんの方も・・・」


「よし、君はもう良いよ!とりあえず一番中心にいてくれ!サミュールは作戦を変えよう!」


「でも、どうする?妹でも結構勘が鋭いし初対面だったはずのアーニャンの様子も分かっていたみたいだったし・・・そのお姉さんとなるともっと鋭い気がするよ?」


「彩花?・・・もしかして、最初の魅了魔法って使えそうかい?」


「う~ん・・・やっていないから何とも言えないけど・・・」


「魔族の2人に聞きたい事がある・・・仮に今の元凶であるローテンマリゼのオーラと魅了魔法を互いに掛けた時、どっちの方がより効果が強い?」


「それは・・・能力者の強さに比例するのではないでしょうか?」


「そうだよね・・・どちらが強い術かと言う概念よりも誰が、どう言う強さの能力者の術であるかの方が肝心なんだよ・・・」


「彩花が魅了魔法を使い、恐らくサミュールはオーラを出して来るだろう・・・」


「えぇ・・・こればかりは彩花様が完全に覚醒した状態だとすれば彩花様の方が上手 (うわて)を行くでしょうが現状だと何とも・・・」


「いや、待てよ?・・・彩花は人間でオーラは吸収しにくい・・・それにフィールドを張ればどうだろう?」


「それなら時間稼ぎは出来ると思うよ?」


「そうですね・・・確かに人間は吸収はしない訳ではありませんが、クリスティア様に術が完全に吸収されるまでに時間を要していましたし、彩花様も素の状態でも時間は保てるかと思われますがフィールドを更に張る事により更に時間を稼ぐ事が可能になるのではないでしょうか!?」




作戦は決定だ!!後は彩花が・・・だが、この方法しかもう・・・

私は心苦しいけれど彩花に確認を取る事にした。




「彩花?・・・君はやれそうかい?・・・嫌なら断ってくれても・・・」


「やるよ!?勿論だよ!!これしか方法が無いだろうし・・・折角こんなチャンスがあるんだからやってみようよ?」




彩花・・・本当に君は強い子だよ・・・私も君をもっと見習わなければならない・・・




「じゃぁ、彩花もフィールドを張って?」


「うん!・・・」




ファァァァ!!!




「よし、そろそろミスティーたちも戻って来るだろうし・・・」




「お待たせ致しました。無事に術は解除出来ました!」


「あの・・・後は姉さまとの事で色々とご迷惑をお掛けしました・・・」


「大丈夫だよ♪もう後はサミュールだけだから頑張ろう?」


「彩花さん・・・本当に色々とご迷惑を・・・」


「じゃぁ、作戦内容を2人にも伝えるね!」




私は結界内にいたミスティーとセミュールに作戦内容を伝えた。

よし!これで完璧だ!後はサミュールの居場所を・・・すると!?・・・




「あぁ~・・・残念だな・・・もう皆元に戻っちゃったんだ?」


「えっと・・・ローテ・・・ローテ・・・ローテーション?」


「ローテンマリゼだよ?・・・彩花?」


「そっ!!そうよ!!覚えているわ!ローテンマリゼ、あんたみたいな姑息な奴私は決して許さない!!」




どうしよう!?・・・サミュールを探すはずが先にこいつが現れちゃったよ・・・




「ローテンマリゼ様、今彩花を堕とす最中です・・・新たな仲間も加わりました。」




クリスティアがその様に言った・・・




「ふふっ♪そうかい!それは何よりだ!私の見間違えだった様だね!彩花のみ・・・か・・・けれど残念だね?その様な嘘はお見通しさ?」


「ローテンマリゼ様、では、どの様にすれば信じて頂けるのでしょうか?」


「そうだね・・・じゃぁ、私と口づけをしよう?」


「はい♡・・・喜んでさせて頂きます。このクリスティア、既に身も心もローテンマリゼ様のモノで御座います。」


「じゃぁ、こちらへおいで?仔猫ちゃん?」


「はい♡・・・ローテンマリゼ様♡」




グサッ!!!




「ぶふぉっ・・・・ぐっ・・・クリス・・・ティア・・・?君は・・・やはり・・・」


「悪いが貴様のやり口は我にはいけ好かない・・・最初は正々堂々としていた騎士精神を持っているのだろうと信じていたが、途中から私の身体が言う事を聞かなくなった・・・これは何かあると思ったが場を壊してしまうと更に危険だと感じた。仕方無くそのまま続けていたが、まさか貴様のオーラは人間にも効果がある事を知っていたとはな・・・わざと試合が長引く様動いていたのだな?」


「ふっ・・・流石・・・天下の姫騎士様と言った所かな・・・私も、元は騎士道に則り、騎士精神を持ち合わせていたのだよ・・・けれど・・・リリスティア様に命を救われた。私が丁度仲間を助ける事が出来ず自害するつもりだった時だった・・・リリスティア様はこの様な私に「死んじゃったら、もうお終いなんだよ?もっと自分を大切にしないといけないよ?」と・・・」




嘘だ!!あのリリスティアがそんなに優しい事言うはずが・・・ってリリスティアってどの様な性格なのだ!?どうして私は否定しているのだ!?


「それ以来私は一度は死んだ様なもの・・・以降はこの命、リリスティア様のモノだと言う想いで今日まで生きて来た・・・いいや、生きて来させて頂いたと言った方が正しいかもしれないね・・・」


「その様な経緯があったのか・・・それで貴様はリリスティアとやらの直属の眷属となった訳なのだな?」


「あぁ・・・その通りさ・・・でも・・・君に倒されて・・・本当に良かったと思っているよ・・・本当に・・・君には・・・君を・・・好きになってしまったから・・・心の底から・・・だから・・・君を・・・君だけは手に入れたいって・・・思ったんだ・・・」


「そうか・・・我が貴様の所へ堕ちた時、どう思った?貴様のオーラにやられてしまった私だったが・・・」


「あぁ・・・自分が間違えているのだと・・・素直に感じたよ・・・やはり、操ったり・・・心を書き換えたりするのは良くないね・・・皆?・・・本当にすまなかった・・・サミュールの方は、私が消えたら自然に元に戻るよ・・・オーラを発した本人が消えると受けた方は元に戻るからね・・・色々と迷惑を掛けたけれど・・・こんな事を言うのはおこがましい事だと承知の上だが・・・うぐっ・・・どうか・・・どうか・・・現魔王を・・・倒して欲しい・・・リリスティア様は・・・悪くは無いから・・・お願いだよ・・・それじゃぁ・・・皆・・・さよ・・なら・・・」




「死ぬ間際であれだけのセリフを淡々と喋られるなんてとてつも無く強い魔族だったんだねある意味凄いよ!?」


「彩花?・・・ちょっと黙ろうか?」






ローテンマリゼが息を引き取った後、アーニャンの位置情報を基に私たちはサミュールと再会する事に成功した。

サミュールも無事に元に戻っており、私たちは数日の間フルディートスにて休息を取る事にした。




「それにしても大変だったよ・・・」


「あぁ・・・私も今回は流石に・・・」




色々とあったけど、気が付いたら朝方になっていた。

私たちは、元いた宿に戻りひと眠りする事にした。

クリスティアたちも元々いた部屋に戻り再びお昼頃にお互いの状況を見て会う事にした。




「皆、ちゃんと眠れただろうか?彩花たちの方は?」


「うん!バッチリだよ!」


「じゃぁ、そろそろ・・・そう言えば、アーニャン、君はこの後どうするのだい?」


「う~ん・・・最初は彩花をここへ送り届ける目的だったんだけど・・・このパーティーって面白そうだよね!・・・私で良ければこの後も行動を共にしてもらえないかな?ちゃんと言って無かったけど、私の能力は位置情報やその周囲の様子や状況も見る事が出来るんだけど、実はね・・・これはあまり使わないから言わなかったんだけど、爆撃も出来るんだ!」


「それは心強い!!君さえ良ければ私たちのチームに入ってはくれないだろうか?」


「うん!アーニャンは頭の回転も凄く早いからきっと大活躍してくれると思う!!」


「あまり高く買われても相応の実力が発揮出来るかどうか分からないよ?」


「いいや!先の状況から、君がいてくれたおかげでこうして解決した!彩花の件も含めて、改めて心から感謝します。」


「そんな・・・頭を上げてよ?・・・私だって助けてもらっているんだし!」


「そうだよ!!私のオーラで支配出来ると思っていたら君が突然予期せぬ登場をしてくれたおかげで凄い展開に変わったんだよ?君なら魔王を倒す力になれるさ!もっと自信を持とうよ?」




えっと・・・最後のセリフってこのチームの中で誰が言うんだろう?

確か「私のオーラ」って言ってたような・・・




「おい、貴様?何故ここにいる?」


「えっ!?・・・嫌だなぁ・・・仲間の顔を忘れちゃったのかい?もう一度私のオーラで君を私にメロメロにしちゃうぞ♡」


「ちょっとそっちの広場へ出ろ!?」


「なっ!?・・何かな?・・・そんな殺気だった表情を浮かべて・・・ほら、私のオーラにやられていた時の君はとても可愛くて素敵だったよ?全身もとても綺麗で麗しく・・・」


「オーラでやられていた間に私の身体に何をしたぁぁぁl!!!!!!!!!!!ロードテスティードォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「うわぁぁぁぁぁぁl!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




プス・・・プシュッ・・・




「死んだ?・・・」


「いや、こいつは無敵みたいな感じだろう・・・生きているよ!」


「ふっ・・・ごふっ・・・」


「さぁ、その首を切り落としてデュラハンにでもなるか?」


「いや・・・それだけは遠慮しておくよ・・・すまない・・・」




こうして新たな仲間が加わった直後、倒したはずのローテンマリゼが私たちの話に割り込んで来た・・・




「それで、貴様は何故ここに来た?」


「いや・・・君たち、特に人間であるクリスティアと彩花は、リリスティア様の事を悪く考えているんじゃないかと思ってね・・・」


「悪い奴だろう?」


「悪い奴よ!!・・・多分・・・」


「何か悪い夢でも見ていたのでは無いのだろうか?・・・リリスティア様は命を重んじる大変高貴なお方なのだよ・・・私が自害しようとしたあの日・・・強引に止めるのでは無く、優しい口調で私をなだめる様に色々とご自身の経験談なども踏まえながら私を助けてくれた・・・私がリリスティア様に眷属にして欲しいと願った時、リリスティア様は、安易なものでは無いから考え直した方が良いって仰って下さった。本当に相手の事を大切に出来るお方なんだ・・・」


「う~ん・・・まぁ、代理であって今の元凶では無いと言うのならまぁ、それだけローテンマリゼが言っているんだしそうなのかな?・・・」


「いや、惑わされるな!まだ我々が実際に見た訳では無いのだから!!いや、これは代理だからとかそう言った意味では無く・・・魔王だからな一応・・・」


「分かったよ・・・じゃぁ、一度呼んでみるから話をしてみなよ?リリスティア様?・・・リリスティア様~!!ローテンマリゼです。今、こちらへ来る事は可能でしょうか?・・・はい!ありがとう御座います・・・はい、ではお待ち申し上げております。」


「ちょっと、お待ち申し上げてって、来るの?」


「あぁ!今、丁度暇を持て余していらっしゃったみたいなんだ!!直ぐにこちらに来て下さるよ!」


「待て待て待て!!皆構えろ!!何が起こるか分からない!!」


「だから、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ!ほら、到着なさったよ?」




シュパッ・・・パァァァァァァァァァ




到着した事をローテンマリゼが告げると光のオーラと共に目の前に幼女?

らしき魔族が現れた!?

見た所、ツインテールの銀髪で綺麗な洋人形の様なスタイルをし、しっかりとした目線を向けている。だが、その透き通った紅の大きめの瞳は少しばかりその幼女風な魔族とは思えない妖艶さが醸し出されていた。




「お待たせ・・・ローテンマリゼ、もしかして一度消滅させられたの?」


「はい・・・実は・・・申し訳御座いません。」


「ううん!今こうして動けるなら良かったよ!それにしてもローテンマリゼが私を呼び寄せるなんて珍しいわね?どうかしたの?・・・って・・・あなたたちは!?・・・まさか!?・・・」




その幼女は私たち人間である私と彩花を見た途端その様なセリフを吐いてくれた・・・




「あぁ・・・我の名はクリスティア・・・クリスティア=カーマイオーネだ!」


「私は黒澤 彩花・・・あなたが魔王代理の・・・クリスティア?・・・じゃなかった・・・えっと・・・」


「おい!!彩花っ!?いくらなんでもそれは酷過ぎやしないか!?私の名前と間違えるなんて・・・」


「そうだよぅ~!!私はリリスティア!!リリスティア=カーマイオーネだよ!!」


「はぁ?・・・今・・・何と!?・・・」


「リリスティア!!リリスティア=カーマイオーネって言うの!そこのクリスティアって人間のお姉ちゃんと同じ・・・いわば名字に属する部分だよ!?」


「貴様ぁぁぁ!!カーマイオーネの名を汚すつもりかっ!?」


「もう・・・何をそんなに怒っているのか分からないけど・・・どうやらお姉ちゃんが人間界の・・・カーマイオーネ国の1人娘って事かな?」


「何故その事を!?・・・」




リリスティアと名乗る魔王代理はカーマイオーネ国の事を知っている様子だった!

一体どう言う事なのだ!?




「お姉ちゃんのパパとママは元気にやってる?」


「はぁ?・・・パパとママ・・・だと!?・・・」


「その様子だとまだ詳細を聞かされていなかったみたいだね!」


「ちょっと待て!?・・・さっきから何を言っているのだ!!貴様は一体何者なのだ!?」


「う~ん・・・どこから説明すれば分かってくれるかな・・・じゃぁ、先ず・・・人間界が魔王の命令、いいや、現魔王が魔族たちを洗脳し人間界へ送り、支配させる様仕向けた・・・それは分かってると思うけど、どう?」


「あぁ・・・それで我々の国や日本、彩花の住む国が滅ぼされようとしていたのだ!!」


「だよね?・・・それで、日本と言う国にいた能力者・・・つまり対魔師って言ったかな?・・・その勇敢な能力者たちが魔族と対立し、何とか滅ぼされずにきょうまで来ている・・・」


「どうしてそんなに詳しく!!?」


「まぁ、待ってよ!・・・現魔王は悪い評判でそう言う事を仕向ける様な奴なんだけど・・・先代の魔王様たちは皆、人間界とは仲良くやって行こうと頑張っていらっしゃったの!だから今の魔王は初めて悪さを仕掛けた張本人である事は間違い無いよ!現に今も休息を取るとか言い出しちゃって何処か分からない場所でのんびりくつろいでいるみたいだし・・・急遽会った事も無い私が代理としてここ数か月の間魔界を管理しなくちゃいけなくなっちゃうし・・・本当いい迷惑だよ!!」


「そっ・・・そうだな・・・確かに・・・それに休息って何なのだ!?」


「まぁ、ずっとあんな所でじっとしていたら確かに気が滅入るって言うの?分からなくも無いんだけどね・・・ただ現魔王のやろうとしている事は私も許す訳にはいかないよ・・・先代の魔王様たちが築き上げて来た魔界・・・そして仲良くなれた人間界の皆も・・・それを全部壊そうとしている!!ねぇ、お姉ちゃんたち!?お願いがあるんだけど、現魔王を倒して欲しいんだ!」


「無論、そのつもりで私も彩花もここへ来た!だからその話はもうお終いだ!!」


「そうか・・・なら良かったよ!武運を祈ってるね!じゃぁ私はこれで・・・ってあれ?どうして?何で止めるの?あれ?お姉ちゃんオーラが・・・凄く恐ろしいオーラが出てるけど?・・・」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・




「待て?・・・まだ肝心な話が残っているだろ?」


「リリスティアには何の事か・・・あはは・・・?」


「貴様、さっきカーマイオーネと言ったな?何故だ?」


「えぇ~っと・・・あっ!いけないそろそろ帰らないと皆が困ってるんだった・・・じゃぁ、これで・・・」


「逃がさんぞ?・・・同じカーマイオーネ同士仲良く話でもしようじゃないか?」


「あの!?・・・顔が怖いんですけど?・・・何で怒ってるの?」


「いいや?私は何も怒っていないぞ?・・・それよりカーマイオーネ国とはどう言った関係なのだ?」




私が脅しを掛けリリスティアはようやく口にする事にしたみたいだ!!




「う~ん・・・実は、カーマイオーネ国が滅ぼされて掛けた時、そこにいる彩花お姉ちゃんのパパたちも呼んだよね?」


「あぁ!確かに、日本には対魔師と呼ばれる魔族と戦える能力者がいると知り早速日本にいる対魔師を探していた・・・そして見付けたのが鷹人たちだった。」


「うん・・・リリスティアも鷹人とは仲が良いからね!知ってたよ!」


「何っ!?・・・貴様が鷹人と仲が良いだと!?・・・どう言う意味だそれは!!」


「私も実はその時人間界へ出向いていたんだよ!それで実際洗脳され切ってしまった魔族たちの前へ出て戦う事が色々とまずい状況だったんだ!!だから私は影で色々と魔族たちの情報を鷹人たちに伝えていたんだ!!」


「それは真 (まこと)か!?」


「うん・・・少々面倒だけど一度人間界へ戻って鷹人たちに聞いてみれば分かると思うけど・・・」


「じゃぁ、早速・・・」


「本当にお姉ちゃんって私の事信じてくれないんだね?・・・」




私とリリスティアが過去のカーマイオーネ国の魔族たちの侵略について話をしていると・・・




「その、リリスティアが言っている事って事実だと思うよ?」


「アーニャン?・・・どうしてそう思える?」


「うん・・・瞳を見つめていれば分かるよ!透き通っていて、紅いけど、とても澄んでいて、芯が通った目をしている。」


「いや・・・瞳だけでその様な・・・」


「まるで、クリスティアの瞳と同じ様に見えるよ!」


「何っ!?・・・こいつと私の瞳が同じ様に見える!?・・・アーニャン・・・少し疲れているのだろう?休むと良い・・・さっ!早く・・・」


「いやいやいや・・・そうじゃなくて・・・それよりどうしてクリスティアたちは彼女を忌み嫌うの?ローテンマリゼの言っていた事や今話をしている事、こうやって私たちの前にいるのに何か仕掛けて来る事もしない・・・本当は気付いているんでしょ?リリスティアが悪くないって事に・・・」


「アーニャン・・・」


「うん・・・まぁ、私も確かに代理さんは本当に悪い魔族なのかな?とか考えた事はあったけど・・・どうしても生理的な感じで避けていたのかもしれない・・・クリスティアも私と同じ気持ちだったと思うんだけど・・・その理由がどうしても私には分からなくて・・・」


「話を続けるよ?・・・その後無事に魔族たちを倒した・・・でもこっち側の立場からすると操られていた魔族たちが支配する様にと命令されていただけだったから、辛い立場なんだけどね・・・それで、鷹人とカーマイオーネ国の・・・お姉ちゃんのパパとママも何とか無事に落ち着く事が出来て、私も帰って来た訳・・・」


「ん?・・・それはよく分かった・・・だが、貴様の名前が何故カーマイオーネだと言うのかをまだ聞いていない・・・」


「あぁ・・・もう忘れちゃったんだね!?・・・まぁ、それは時期に話をする事にしよう?・・・恐らく今思い出しちゃうと混乱しちゃうといけないから・・・」


「・・・・・・あぁ・・・・あぁぁぁ!?・・・・思い出した!!思い出しぞ!?貴様ぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「ちょっ!!クリスティア!?・・・何を思い出したのっ!?私はまだ何も・・・」


「こいつだよ!!こいつ、人間界で悪さしていたんだよ!!それで私も彩花も一度こいつに洗脳されて・・・貴様、あの後消滅したはずでは!?・・・」


「あちゃ~・・・思い出しちゃったのか・・・でもあれも作戦の一つだったんだよね・・・」


「何が作戦だ!!あの様な痴態を晒させておきながら!!貴様、成敗してやる!覚悟っ!!!」


「待って待って、落ち着いて・・・クリスティア?」


「アーニャン、止めないでくれ!!こいつは・・・こいつは!!」


「能力が上がったよね?お姉ちゃんたち?」


「何をっ!?・・・言って・・・まっ!?まさか、貴様、私たちの能力を・・・?」


「そうだよ?鷹人たちに頼まれたからね!彼女たちは能力が絶大な状態にまで上げる事が出来るからその補助をして欲しいって言われたからやったんだよ!ちょっと荒療治だったけどね・・・」


「じゃぁ、あの時の一連の事件は!?・・・」


「うん・・・全部その為に仕向けた事だよ!?・・・こうやって真実を知ろうとしなければ誤った方向に事が進んじゃうよね?だから記憶を少し消させてもらったんだ・・・能力が完全に覚醒した時に本当の事を告げようと思ったからね・・・ごめんね?黙ってて・・・」


「リリスティア・・・貴様と言う奴は・・・・・」


「ニシシ~♪」


「それはさておき、記憶が戻ったと同時にまた一つとんでも無い事も同時に思い出してしまったのだ・・・」


「そっ!?・・・それは言わない方が・・・ねっ?クリスティアお姉ちゃん?」


「こいつ・・・私の分身の様なものなのだ・・・」




えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!??????




「ちょっと待って下さい!?・・・それは一体どう言う意味なのでしょうか?」


「クリスティアだけ思い出しちゃったみたいだけど私はまだ記憶が・・・あれ?・・・私も何か・・・う~ん・・・思い出せそうな気が・・・・・あっ!?・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!?思い出したよ!!!!!!!あの時、私たち操られてしまって・・・それから記憶が曖昧だったままだったよ・・・リリスティアァァァ!!!!!!!」


「彩花、待ってくれ!?そこはもう終わった・・・こいつは私たちを覚醒させる手助けをしてくれていたんだよ!?だからその話は悪いけど、頭に来たのは分かるがもうお終い・・・」


「うん・・・分かった・・・じゃぁ、その後の分身って・・・あぁぁぁ!!!!!!そうか!?」


「あぁ!その通りだ・・・私が先のカーマイオーネ国の侵略の際にある魔族から洗脳されてしまい、姿や精神、肉体から全てを変えられてしまった・・・その姿が・・・」


「そう!私だよ!?だから私はお姉ちゃん(クリスティア)であり、リリスティアでもあるの!」


「でも、今ここには2人存在しているよね?」


「アーニャンの言っている事は正しい!確かに今ここには私とリリスティア、全く別の肉体で存在している。けれど、元は私たちは1つの肉体であり、1人の人間・魔族として存在していたんだ!!」


「まぁ、私も悪い魔族に洗脳されていたからその頃は悪い事もしていたんだけど・・・現魔王の企みの一つだったみたい・・・私も正気を取り戻して消滅したかと思ったんだけど、何故か生きてた・・・それからは「我は魔界を綺麗に再建させるのだ!!」って」




♪ゴツンッ




「イタッ!!!どうして殴るの?ちょっとお姉ちゃんみたいに凛々しく言ってみただけでしょ?・・・まぁ、私も正気を取り戻してからは魔界を良くしたいなってずっと思ってるんだ・・・」


「ねぇ?特に1つの肉体に戻らなくても大丈夫なの?2人共?」


「あぁ・・・私は大丈夫だよ!」


「うん・・・こんな状態になった事例が過去にも無いからね・・・今の所はリリスティアも大丈夫だよ!!」


「そうか・・・全く思い出したくない過去を・・・」


「だから時期に話すって言ったんだけどな・・・ちなみにリリスティアと言う名前の由来は・・・私を洗脳したのがリリスティーと言う魔族で私の本名がクリスティアだったから併せてリリスティアって名前にしたの♪」




♪ゴツンッ!!




「痛っ!!!もう・・・そんなにリリスティアの頭を殴らないでよ?・・・自分で自分を殴っているもんだよ?そんなにマゾなのお姉ちゃんって?」


「五月蠅いっ!!私がマゾなのかサドなのかノーマルなのか貴様が一番知っている事だろうがっ!?」


「(ニヤッ)・・・そうだねぇ~♪実はこのクリスティアお姉ちゃんって見た目に寄らず・・・」




パコンッ!!ゴツンッ!!!バキッ!!!!




「はひ・・・ごべんだざい・・・もういいばじぇん・・・(はい、ごめんなさい、もう言いません)」


「最後の音が随分と迫力があったのですが・・・リリスティアさん大丈夫でしょうか?」


「う・・・うん・・・大丈夫・・・リリスティアはこのお姉ちゃんの分身だから!強いんだよね体が・・・ごふっ!!!」


「いや・・・すまない、少々やり過ぎてしまった様だ・・・許せ?」




一先ずリリスティアは良い魔族だとはっきりと分かった私たち・・・

それに過去の記憶も、どうしてリリスティアに対して嫌悪感を抱いていたのか全てがすっきりと解決したからもうリリスティアに嫌悪感は抱かなくなった私たち・・・




「リリスティアって可愛いよね・・・クリスティアの分身だって分かったから更に・・・」


「う・・・リリスティア、そろそろ帰らなきゃ・・・色々と代理でも大変なんだよ・・・それに魔王が帰って来たらまずいからね色々と・・・噂では魔王はかなりの実力の持ち主らしいから皆気を付けてね!また何かあったら呼んでね?これ渡しておくし!」




そう言ってリリスティアからもらった通信機の様なものを私たちは所持する事になった。

実はリリスティア、容姿はどう見ても幼女ではあるが、実力は魔王に匹敵する程の強さである。ただ、魔王代理にも抜擢される程上層部の方からも注目されている手前下手に動く事は出来ない・・・

私たちにその通信機を渡した後、ローテンマリゼと共に魔王城へ帰って行った。




「リリスティア・・・クリスティアの分身・・・か・・・何だか怒濤に過ぎて行ったよね?」


「アーニャン・・・君は本当に冷静だね!私が逆に見習わなければならないよ・・・」


「いや・・・私が同じ立場だとしてもクリスティアみたいになってたと思うよ・・・」


「リリスティアってクリスティアと全く違う感じだよね・・・でも何故か似ているって思える雰囲気もある気がするよ・・・」


「まぁ・・・私の分身だからね・・・一応・・・でもどうも私は慣れない・・・」


「頭も良さそうだし、あの様な幼い感じでも相当出来ると言う話が・・・」


「でも姉さま、リリスティアって噂自体が結構出回らないですよね?あれだけ出来るのであればもっと評判が高くなっていても不思議では無いのでは?」


「リリスティアって名前も如何にも「リリス」っぽいですよね♪可愛いです♪」


「ファランドーラって可愛いものに執着しちゃうからな・・・まぁ、分からなくはないけれど・・・」


「もう、リリスティアの話は止めておこう・・・私が恥ずかしくなって来たよ・・・」




色々とまたしても起こりつつ私たちはフルディートスを出た。

次なる街へと仲間も増え、馬車も2台になり、私たちは引き続き魔王を倒す為に進んで行く事にした・・・




「はぁ・・・本当に世話しなかったな・・・流石の私もかなり疲れてしまったよ・・・」


「まぁ、クリスティアは特にだろうけど・・・私も記憶が戻ったし結構衝撃的だったよ・・・」


「お二人は少しお休み下さい。次の街までかなり時間が掛かりますし・・・」


「ありがとう、ファランドーラ・・・お言葉に甘える事にするよ・・・」


「うん・・・ありがとう、私もちょっと休ませてもらうね?」




私たちは疲れもあってか馬車の中で次の街へ到着するまで眠る事にした。




アーゼンフォーレ・・・夕刻に到着・・・




「彩花様?クリスティア様?到着しましたよ?」


「ん・・・もう、着いたのか?・・・」


「みたい・・・だね・・・」




ファランドーラに起こされて私たちはアーゼンフォーレと言う街へ辿り着いた。

この街も人間界で言う所のヨーロッパの方にある様なイメージの街並みだ・・・




「さて・・・宿を・・・あっ!あそこなんてどうだろう?」




近くに見付けた少し洒落た宿に泊まる事にした!




バタンッ!!




「いらっしゃいませ~♪ようこそ・・・歌劇の宿へ~♪」




バタンッ!!




「どうしたの?クリスティア?ここに泊まるんでしょ?」


「あぁ・・・そうなのだけれど・・・」




バタンッ!!




「いらっしゃいませぇ~♪空きのお部屋は~御座いますぅ~♪♪♪」




バタンッ!!




「ちょっとどうして閉めちゃうの?これじゃぁ、私たち泊まれないよ?」


「いや・・・分かってるよ・・・分かってるのだけれど・・・ここは止めておこう?」




バタンッ!!




「ちょっと・・・落ち着いて?大丈夫だから!ねっ!?何もしないし、歌劇が見られる宿だから!」




「うん・・・クリスティア・・・やっぱり他を当たろう?」


「おいおいおい・・・一晩共にした仲じゃないか?そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫だから・・・ね?」




どう言う状況になっているかと言うと・・・

クリスティアが素敵な感じの宿があるからそこに泊まろうよと言い、扉を開けました・・・

クリスティアが扉を閉めてしまったので私がそれだと泊まれないよ?と言いました・・・

クリスティアは目が疲れているのだろうか?と思い再び宿の扉を開けました・・・

また扉を閉めてしまいました・・・

すると、扉が開いて中にいた宿主と思われる魔族が出て来て、説得して来ました。

さて、ここで何が問題なのかと言いますと・・・

歌劇が見られる宿と言う所では無いんです!むしろ歌劇なんて見られるなんてこちらから泊まりたい衝動に駆られますよね?

ではどこで私も止めておこうと決心したのか・・・それは!!




「私が引き金なのかい?この、ローテンマリゼが宿を経営しているからなのだろうか?」


「はい、その通りです・・・それでは失礼致します。」


「待って待って・・・ただで良いから!!君たちには色々と迷惑を掛けてしまったからサービスするから・・・お願いだから泊まって行って欲しいんだ!!君たちが最初のお客様だから・・・」


「はぁ・・・・まぁ、それ程言うのであれば・・・私たちも無料で提供してくれるのであればこれ以上助かる事は無いからね・・・皆も、仕方が無いと思ってここにしても良いかな?」


「酷い・・・仕方が無いだなんて・・・うぅ・・・」


「それにしても、どうしてローテンマリゼがこんな所で!?確かリリスティアと一緒に魔王城に帰ったと思ったのに?・・・」


「あぁ・・・帰ったよ?でも魔王城にいても私がやる仕事も無いからリリスティア様に協力してあげてくれって言われたからね・・・宿はお金も掛かって冒険中常に必要な場所だからその負担を軽減出来たら少しでも気持ちが楽になれるかと思ってね?・・・」


「そうか・・・まぁ、確かにあり難いと言えばあり難いが・・・」


「結構広いからゆっくりして行ってよ?」


「ありがとう・・・じゃぁ、折角だもんねお言葉に甘えるとして・・・歌劇とか言ってたけど・・・?」


「あぁ・・・それは見てからのお楽しみだよ?さぁ、部屋まで荷物を運ぶから・・・お~い!最初のお客様だよ?荷物を運んで差し上げて?」


「はぁぁぁい♪かしこまりましたぁ♪・・・ようこそ、いらっしゃいました!ゆっくりして行って下さいね♪」


「あ・・・あぁ・・・ありがとう・・・」




何人かの従業員らしき綺麗な女魔族たちが私たちの荷物を持ち部屋へ運んでくれた・・・




「凄く広くて綺麗だよね・・・」


「凄いですね・・・まさか先程までリリスティアと共に帰って行ったはずなのにもう、この様な宿まで作って・・・それに従業員の方も複数名いらっしゃる様ですし・・・」


「姉さま、お風呂がかなり広いみたいです!私泳いで良いでしょうか?」


「あら・・・ダメよ?お風呂で遊泳は禁止よ?また広い海に連れて行ってあげるから今日は我慢しなさい?」




えっ!?・・・お風呂で泳ごうと思っていたの!?・・・

結構年齢的に上だろうと思うんだけれど・・・・流石に世間をあまり知らない私でさえそれはご法度だろうと分かっているけれど・・・一体どう言う教育を受けて来た?セミュールよ!?




「はぁぁぁ・・・全員泊まれる部屋とか最高じゃないですかぁ!!」


「そうだよね・・・普通の宿だとこれだけのメンバーだと分かれちゃうもんね・・・」


「お気に召して頂けた様で何より・・・さて、当宿の自慢の食事もこの後ご用意致します。それまでの間、大浴場でおくつろぎ頂くか、このままお部屋にて待機して頂いても構いません。何なりとご用命下さい。」


「うん!ありがとう・・・ローテンマリゼってこう言うお仕事が合ってる気がするね!!」


「あぁ・・・あり・・・ありがとう御座います・・・一応、私も姫騎士だったのですが・・・元・・・ですが・・・」


「何っ!?・・・君も姫騎士だったのか!?・・・普通に女騎士では無くて?」


「えぇ・・・魔界のとある城の娘だったんだ・・・ある日、現魔王のせいで、城が滅ぼされてしまいその時に私も戦った・・・けれど・・・私は生き延びたけれど、私の大切なある親友の魔族も一緒に戦っていた・・・その子は・・・」


「そうだったのか・・・随分と辛い目に遭って来たようだな・・・そうとは知らず色々と無礼を働いてしまった・・・すまない・・・」


「あっ!?・・・いや・・・まぁ・・・」


「マリゼ?お食事を先に召し上がられるのかしら?それとも・・・ってこれは失礼致しました。私、この宿の料理とお風呂を担当しております、アスタリーゼと申します。本日はよくぞお越し下さいました。どうぞごゆっくりお過ごし下さいませ。」


「あぁ・・・アスタ?ごめんね、少し話をしていたから・・・食事をそろそろお願いするよ!・・・あぁ・・・今、話をしていた私の親友のアスタリーゼ・・・そして、こちらが人間界からやって来てくれた、クリスティアと黒澤 彩花だよ!現魔王を倒してくれるって事で活躍中だ!」


「あら・・・それは、色々と大変だったのでは?・・・何かあれば私たち全力で協力させて頂きます。どうか、現魔王を倒して頂きたいです・・・私たちの仲間も魔王に操られた魔族たちに殺されてしまいました・・・」




おや?・・・ちょっと凄くシリアスな話の最中なのだけれど・・・




「えぇ・・・魔界のとある城の娘だったんだ・・・ある日、現魔王のせいで、城が滅ぼされてしまいその時に私も戦った・・・けれど・・・私は生き延びたけれど、私の大切なある親友の魔族も一緒に戦っていた・・・その子は・・・」




↑この様な事を言っていた事を再び思い出してみよう・・・

その「私は生き延びたけれど、私の大切なある親友の魔族も一緒に戦っていた・・・その子は・・・」




ふむ・・・不自然な文体だな?・・・

色々とツッコミどころが満載だ!

ここは少し話を割ってでも確認しておくことにしよう・・・




「ローテンマリゼ?先程親友騎士の話をしていたね?その親友騎士がこちらのアスタリーゼだよね?」


「あぁ!そうだよ?それが何か?・・・」


「えぇっと・・・私は生き延びたけれど・・・の後にアスタリーゼの話が入っていたからつい・・・」


「あぁ・・・そうか!?・・・いやぁ・・・すまない・・・確かに私もここにいるアスタリーゼも無事だったのだけれど、他に一緒にいた女騎士たちが殺されてしまったのだよ・・・それで私は・・・アスタは私が自害しようとした時には近くにいなくてリリスティア様に助けられてその後、知ったんだ・・・」


「そうだったのか・・・すまない、余計な所で話を蒸し返してしまったみたいだ・・・」


「いいや・・・忘れてはいけないのだよ・・・私は・・・あの城の姫として、そして大事な仲間を失った騎士としても・・・」


「ローテンマリゼ?私もとても似た様な経緯がある・・・共に生きて行こう・・・その犠牲になってしまった大切な仲間の為にも・・・」


「クリスティア・・・・・あぁ・・・勿論だよ!私たちは生きて行く。必ず・・・これから先、絶対に忘れてはいけない・・・ずっと眠った仲間と一緒にこの先もずっと・・・」


「マリゼ?あまり湿っぽい話は・・・」


「ごめんごめん・・・そうだね!じゃぁ、当宿の自慢の料理、それから・・・食べた後は大浴場でくつろいでね?出来たら呼ぶからそれまで部屋でゆっくりしていてくれれば良いよ!」




ローテンマリゼ・・・私は君を誤解していた様だ・・・

まぁ、オーラの一件は許せないけれど、君がどの様な境遇に置かれ、どの様に大切な仲間を想い、感じ、何処へ向かおうとしているのか・・・私に無い部分も多く持っている・・・

私もまだまだだな・・・




「皆さん!お待たせ致しました。当宿の夕食になります。どうぞごゆっくりとお召し上がり下さい。」


「うわぁぁぁ!!!凄く豪華だよね!!」


「姉さま?こんなに食べたら普通ならいくらくらいするものなのでしょうか?」


「あら?・・・こう言う場所でその様な事は言わない様にしましょう?」




うん・・・間違い無いな!育ち方が姉より緩い!!緩過ぎる!!




「凄いよ!!私これ食べるの初めて!!良かったぁこのパーティーに加われて♪」


「アーニャンさんは本当に楽しい方ですね♪私も何だか楽しくなって来ました♪」


「ファランドーラがそんな風に言うなんて本当にアーニャンさんって凄い方なのですね!」




わいわいと楽しく食事をして、あっと言う間にお風呂の時間になり・・・




「凄いよ!!どうしてこんなに無駄に広いの!?」




彩花?・・・君も大概だね・・・きっと育ち・・・じゃないなこれは生まれついての性分なのだろう・・・まさかあの2人の娘なのに育ちが悪いなんて考えられないよ・・・




「あぁぁぁ・・・これは良いね・・・私も久しぶりだよ!こうやって浸かるのは♪」


「広いし熱さも丁度良いですね・・・」


「ちょっとミスティーがおっさんチックだよ!」


「そんなっ!?・・・私は普通に・・・」


「ははは・・・まぁ、これだけ素敵な浴場ならこうもなるよ・・・」


「姉さま?泳ぎたい・・・」


「ダメよ?泳いだらもう海には連れていけないわ?」


「分かりました・・・(しゅん・・・)」




そんなに泳ぎたかったのか?・・・一体どう言う心理なのだろうか?




お風呂から上がり、ラウンジの様な場所を案内された私たちは、椅子へ座り待つ事に・・・

すると!?




「皆様、本日は当宿、アスタローテンへご宿泊、感謝致します。」




♪パチパチパチパチパチ・・・・・・




「当宿のもう一つの自慢は今から始まる歌劇です!では、早速ご覧下さい、皆様のひと時の安らぎの始まり始まり~!!」




そうアナウンスが終わると部屋は暗くなり、舞台の幕が上がった・・・すると!?




「♪我は~姫騎士~・・・」


「♪私は~女騎士~・・・」


二人「♪二人は~親友であり~・・・同じ場所を守る~防人(さきもり)~」




そうだ・・・主役はローテンマリゼでそのパートナーであるアスタリーゼだ!!

自身の経験を踏まえた歌劇を披露したローテンマリゼとアスタリーゼ・・・そして宿の従業員たち・・・ローテンマリゼやアスタリーゼの歌声もとても心に響く綺麗な歌声であり、気高き凛々しい如何にも姫騎士そのものである。

私は途中、嗚咽はあげる程泣いた・・・

そして、仲間たちも涙を流していた。

素敵だ!!そして綺麗だった・・・

これ程胸を掴まれる演技は初めて見た。

感動を覚えた私は感極まり思わずスタンディングオベーションを・・・

そうすると周りの皆も同じ様に立ちあがり拍手喝采となった。




「ローテンマリゼ・・・そしてアスタリーゼ、素晴らしい歌劇だったよ!」


「そうかい!?・・・喜んでもらえたみたいで何よりだよ・・・」


「こちらの方こそ、感動してもらえたみたいでやった甲斐がありました。」


「2人の絆の深さも・・・仲間を大切に想う気持ちも・・・凄く伝わって来ましたぁぁぁ・・・うぐっ・・・えぐっ・・・」




あぁ・・・その通りだよ・・・凄く伝わって来たよ・・・彩花が感動のあまり鼻水が垂れ流し状態で顔が凄い事になっている事に・・・

私は彩花にハンカチを渡すと・・・




「えぐ・・・えぐ・・・あじがどう・・・グリズヂア・・・チーン・・・ふんっ・・・」




えぇぇぇぇぇ~!?・・・・鼻もかんじゃうの!?・・・それだけは・・・いや・・・そんな小さい事でとやかく言うなクリスティア・・・だが・・・だがあのハンカチは私のお気に入りの物だったのだ・・・




「はい、ありがとう・・・クリスティア・・・このハンカチ凄く良い香りがしたよ?クリスティアの匂いかな?・・・おかげでスッキリしたよ?本当にありがとう♪」




うん・・・良かった・・・これで・・・彩花が笑顔になれたから・・・それで・・・それで・・・うぐっ・・・グスッ・・・鷹人と舞花?・・・この子をきちんと育てて欲しかった・・・




「今日は本当に良かった・・・彼女たちもこれからは幸せになって欲しい・・・」


「そうだよね・・・あんなに感動させられちゃったら私も応援したくなっちゃうよ!!」




さて、今日は良い夢が見られそうだ・・・

私はとても清々しい気持ちで床に就いた・・・・




翌日・・・・・




「そう言えば、この宿ってどうやって作ったの?」


「あぁ・・・これは一種の結界の様なものだよ!実はアスタが結界内に住める能力を持っていてね・・・それを活用させてもらってるんだ!」


「そんな便利な能力もあるんだね・・・」


「じゃぁ、こんな豪華な宿も直ぐに消えちゃうんだ!?」


「元より君たちのサポートをする目的だったからね、君たちが移動したらそれに対応しなければならないから、次の街にはまたこの様な結界を張って泊まってもらえる様にするから!」


「助かるよ・・・私たちも結構宿を探すのが手間だったからね・・・これからも、君たちが迷惑じゃなければお願いさせてもらいたい・・・色々と勝手を言っているのは承知の上なのだけれど・・・」


「いいや・・・喜んで協力させてもらうよ!だから君はもっと誰かを頼るべきなんじゃないかな?」


「ローテンマリゼ・・・」




見透かされていた・・・私が誰かを頼るのを極力控えている事を・・・

やはり私より長い間生きて来た魔族だと言う事だな・・・私ももっと精進しなければならない・・・

私と彩花も・・・このローテンマリゼとアスタリーゼの様な仲になれるのだろうか?




「同じものはこの世には2つは存在しない・・・」


「えっ!?・・・何故私が考えている事を!?」


「分かるさ・・・君の目を見ていると・・・大方、私たちの様になりたいと思ってくれているのだろう?・・・本当の事を言うとなれないよ・・・」


「あぁ・・・分かってる・・・」


「けれど・・・絆の深さや相手を思いやる気持ち、それは個々それぞれのものだよ・・・同じじゃなくても十分だと思う・・・自分が誰にも負けないと思える気持ちの強さを持っていれば何も恐れる必要は無いよ・・・」




やはりローテンマリゼは凄いのだろう・・・

さぁ、そろそろ次なるステージへ!!








































第五章 ローテンマリゼの本音!?・・・そしてあの魔族が遂にベールを脱いだ!?・・・歌劇だと!?まさかっ!? END

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