第四章

「zzz・・・zzz・・・」


「結構な時間眠ったままの様ですね・・・ひょっとするとただ眠っているだけなのでしょうか?・・・」


「う~ん・・・彩花の件も気になる所だけれど、この3人の魔族たちは一体どうなっているのだろうか?」


「ん・・・ん?・・・ここは?・・・」


「目が覚めたみたいです!早速チェックを入れてみる事にしましょう?おい、マゾ?ちゃんと起きてるか?」


「うぅっ・・・ごめんなさい・・・怖いです・・・」


「うん!成功の様ですね!」




ミスティーは二重人格者なのだろうか?

急に表情がドSそのものと言った感じになったのだが・・・




「すると・・・そちらの2人も!?・・・」


「私たち・・・一体何を?」


「姉さま、この方の表情が怖いです・・・」


「ミスティー?・・・もう大丈夫だからその如何にもSっ気の強い表情はそろそろ止めてもらおうか?・・・私まで・・・いや、何でも無い・・・」




何だ!?・・・新たな新発見か!?・・・私は、決してその様な性癖の持ち主では無いと悟っていたのだが、もしかして・・・いや、深く考えるのはよそう・・・




「あっ!!やっぱり2人って姉妹なんだね!?凄く似ているなって思っていたからきっとそうなんだろうなって思ってたよ!!」


「はい・・・私はサミュール。ここにいるセミュールとは双子で私が姉に当たります。」


「はい・・・そして私がそのセミュールと申します。生まれてからずっと姉さまとは共に行動して生きて参りました。」


「2人って凄く綺麗だよね・・・それなのに強いんでしょ?」


「えっ!?・・・あっ・・・よくその様な噂が流れる事がありますが・・・実の所どうなのでしょうか?・・・私たち姉妹もあまりその様な部分は意識していませんでしたので・・・」


「姉さま!?この間も鉄骨を運ぶアルバイトをしていましたが、圧倒的に私たちが一番運んでいたって褒めてくれました!!」


「あぁ・・・そうでした!!何故か力が皆さんよりも強いみたいでして・・・お恥ずかしいです・・・」




ふむ・・・私の聖剣ですら片手でチョチョイと扱えそうな話だな・・・試しに・・・




「すまないが、私のこの剣を片手で持って振りかざす事は出来るだろうか?」


「えっ!?・・・その様な高価な剣を私たちがでしょうか!?・・・」


「あぁ・・・ひょっとすると重い剣なんかでも扱えるのでは無いかと思ってね!」


「はい・・・それでは少しだけ・・・失礼致します・・・」




♪ブンッ!ブンブンブンッ!!!ジャキーン!!!!




♪パチパチパチ




「見事な剣裁き!!この剣を今まで軽々しく扱えた者はいなかった・・・君たちはきっと戦士にも向いている気がする・・・どうだい?魔王討伐に協力してはもらえないだろうか?」


「私たちがですか!?・・・セミュール?・・・現魔王には我々も痛く悪影響を受けています。今回の一件もそうですが、人様に多大なるご迷惑をお掛けしてしまうと言う事を含めそのお詫びとして我々も協力してみようかと思ったのですが・・・」


「はい!姉さまがそう言うのなら私も全力で協力させてもらう事にしましょう?」


「2人共・・・ありがとう!!感謝する。」


「良かったね!!これで私たちの旅も楽しくなるし、強くなるしで踏んだり蹴ったりだよね?」




し~ん・・・・・・




「踏んだり蹴ったり?・・・かい?・・・」


「あれ?・・・違った?・・・」


「願ったり叶ったりじゃないかな?・・・」


「監督さん?もう一度やり直してくれませんか?」




あははははは♪




「ボケをかましている場合では無いんだ!!もう一つ肝心な話が残っているんだ!!」


「彩花様の能力についてですね?」


「あぁ・・・先程、彩花が結界を張った後にここにいる3人が眠りに就き、元に戻った・・・これはどう言う事か彩花?分かるかい?」


「う~ん・・・私も結界は張れるんだけど、その後どうしてそうなったんだろう?」


「彩花様の本当の能力・・・私の能力を彩花様はいつの間にか習得されていました。」


「そうだ!君の本当の能力・・・それは・・・Energy Absorption (エナジーアブソープション)=エネルギー吸収と言うものだろう!!」


「エネルギー吸収!?・・・私が!?・・・それって無敵じゃないですか!?」


「無敵だ・・・あぁ・・・紛れも無く無敵だ!!・・・ただ、この能力は無敵な故に危険でもあるんだ・・・」


「えぇっ!?・・・どうしてなの?」


「彩花様?私の能力を習得させようとして習得されましたか?」


「ううん・・・習得も何も後から気付いたら使えていたって結果だから分からないよ?」


「えぇ・・・クリスティア様が仰る「危険」と言うワードは即ちその部分なのです!!」


「あぁ・・・知らず知らずの内に習得して行き、知らずの内に使いこなしていた・・・これが今回の様な場合は良い方向へ使っているのだが・・・けれど、逆の場合だとしたら?・・・」


「そう・・・か・・・無意識の内に危険な能力を使っちゃう可能性があるって言う事だよね!?・・・だとすれば私は・・・」


「あの・・・サミュールですが・・・」


「はい、知ってます!頭の右側にお花畑がある方・・・いや、花飾りをしている方がサミュールで、反対側の左側にお花畑・・・すみません、花飾りがある方がセミュールだよね?」


「姉さま、彩花さんにもお花畑を頭の頂上に作って差し上げてはどうでしょうか?」


「いや・・・少々シビアな話をしている所なので・・・すまないがサミュールが何か言いた気だった様だけれど・・・?」


「はい・・・恐らくなのですが・・・まだ彩花さんは自身の能力が覚醒し切っていないのではないでしょうか?覚醒すれば自由自在に自身の能力は操れるはず・・・」


「なるほど・・・では彩花を覚醒させる事が重要不可欠だと言う訳だね!・・・ありがとう!早速彩花をどうやって覚醒させるかについて話を移そう!!」




うわぁぁぁ!!私どうなっちゃうんだろう?・・・覚醒って何だか格好良いよね!!

超人なのかな?よくロボットアニメとか男の子が好きそうな漫画とかアニメで出て来そうな言葉だよね!?・・・




「↑と彩花は想像しているだろうが、いわば、まだ彩花は己の能力について把握出来ていないだけと言った所だろうか?」


「そうですね・・・彩花さんが実際にどれ程の能力や強さを持っているのかを先ず確認した後、その能力をどの様にして引き出して行くのか・・・戦いの中で育んで行くのか?日々鍛錬しながら覚醒させて行くのか?はたまたある日突然覚醒してしまうのか!?・・・様々な可能性がありますので・・・先ずはご自身で出せる精一杯の能力などを確認して行くと言うのでどうでしょうか?」


「あぁ!!それが良さそうだね・・・じゃぁ、明日はこの街からも出る予定だから道中どこか影響を受けない場所で確認する事にしよう!!」






翌日・・・




モーレサとは分かれ、新たな仲間に加わったサ・セコンビ・・・いや、サミュールとセミュールを率いて私たちは次なる街を目指す事にした。

道中で彩花の能力チェックを行う予定でもあるのだが・・・




「あの・・・道中お気を付けて・・・この先辺りからは悪い魔族たちも合間で出て来る可能性があると思われますので、どうかお忘れの無き様・・・


「モーレサも気を付けてね・・・モーレサ可愛いから直ぐに堕とされちゃいそうで不安だよ・・・」




いや・・・一番堕とされる率が高いのは君の方だと思うよ・・・彩花?




「では、我々はこれで・・・旅館の皆さまにもお世話になりました。」


「また、帰られる際には是非ともお立ち寄り下さいませ。従業員一同心よりお待ち申し上げております。どうぞ、ご武運を・・・」




そう・・・帰られる際と言うのは私たちが魔王を倒し帰って来る事を称しているのだ!

現魔王に悪影響を受けている魔族たちの為に、そして・・・我々の世界の悪い魔族たちの一連の騒動・・・決して許す訳にはいかない!




「さぁ・・・馬車も準備が整いました。次の街へと参りましょう!」




道中にて・・・




「この辺りから道も分岐して行ったりします。それに先程モーレサさんが仰っていた通り、悪い魔族たちが現れる事も報告されています。どうか、街へ到着するまでの間は気を許さない様になさって下さい。」


「あぁ!・・・分かったよ。」


「少し、魔王の事や周辺に関する情報を探していたのですが、やはり魔王は強い洗脳を掛ける事が出来るみたいです・・・それにこれまでに操られた魔族たちが私たちの所に現れた時に能力を持っていましたが、これも元々持ち合わせていた能力をそのまま強化させて使う場合や新たに魔王が与えている能力と言うものもあるそうです。」


「そうなのか!?・・・では、能力を元々持っていない魔族を洗脳した場合は能力を新たに魔王から与えると言う事なのだろうか!?」


「その通りです!・・・きっとたちの悪い魔王なのでしょう・・・」


「ふむ・・・そもそも何故洗脳なのだ?・・・魔王はどの様にして相手を洗脳しているのだろうか?・・・それを知らなければ知らない間に我々も手を着けられてしまうかもしれない・・・」


「それが、手法に関して言えば四十八手の様で多種多様な洗脳方法で相手を眷属にするみたいです・・・」


「これはまた厄介な・・・」




ミュールが色々と魔王の事について調べてくれていた。

今の話から推測するに、魔王の能力はどうやら「洗脳」であるだろうと考えられる・・・

けれど、その方法や手段がありとあらゆる手を使う為対策を立てられないのも現状・・・

では、どの様にして奴と戦えば良いのか!?




「彩花様?あの辺りなど丁度良いと思われます・・・如何でしょうか?一度確認されますか?」


「うん!!やっておくよ!今後の為にも・・・良い方向で使えれば良いけど、やっぱり悪い方向に使っちゃったらピンチだからね!!」




ファランドーラが適当な場所が見付かったからと声を掛けてくれた!

私たちは、一度馬車から降りて樹木なども無い、広い野原の様な場所へ移動し、私の能力がどう言うものであるのかをチェックする事にした!!




「では、これより彩花の能力の確認を行う!彩花?真ん中へ立って?」


「うん・・・」




カク・・・カク・・・カク・・・カク・・・




「彩花?・・・そんなに緊張しなくても大丈夫だよ?・・・むしろ見ているこちらまで緊張感が高まって来るから・・・」


「う・・・うん・・・分かった・・・じゃぁ、この辺りで良いかな?・・・」


「はい、丁度良いでしょう。では、彩花さん?先ず始めに、目を閉じて大切な人をイメージしてみて下さい!」


「うん・・・分かった!・・・・・・・うぅ・・・うぅ・・・・」




サミュールの誘導で、彩花が目を閉じ大切な人をイメージしている・・・この後の想定はついているが・・・

彩花の表情がより一層険しくなった気がする・・・




「う・・・・・うぅぅぅぅ・・・・・・・・・・・・・・・」


「彩花さん?大丈夫ですか?」


「う・・ん・・・大丈夫だよ・・・でも・・・」


「でも?・・・」


「大切な人が沢山いすぎて全員のイメージが出来ないよ・・・・!!」




ダメだ・・・彩花の頭の緩さと言うものは恐らく天然のものなのだろう・・・

舞花?・・・あなたは昔、どの様な性格だったのだろうか?・・・鷹人・・・は、大体分かるけれど・・・




「では、彩花さん?クリスティアさんのイメージをしてみて下さい?」


「クリスティア?・・・うん!分かった!・・・うっ・・・クリスティア・・・クリスティア・・・」


「では、彩花さんとクリスティアさんが悪い魔族と戦っている最中です。」


「うん・・・(ゴクリッ)」


「魔族が強く、クリスティアさんが剣で敵を倒そうとしていました。」


「うん・・・」


「そして・・・クリスティアさんは敵に襲われ、敵の持つ妖刀で斬られてしまいました。」


「うっ・・・・・クリスティア!!クリスティアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」




パァァァァァァァァァ・・・・・・・・・ドッカーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!




「何だっ!?・・・あの大きな爆発は!!!!?」




「なるほど・・・これは凄いですね!!!!」


「クリスティア?クリスティアァァァァァァァァ!!しっかり・・・しっかりして!!私が・・・私が異世界行こうとか言ったから・・・ごめんね・・・本当にごめんね?・・・クリスティア・・・死なないで・・・お願いだから!!クリスティア?・・・クリスティアァァァァァァァァ!!!・・・・・・・・死んじゃった・・・クリスティアが死んじゃったよぅ~!!!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!!」




第〇回新人女優発掘オーディション最優秀主演女優賞があったら間違い無く彩花がモノにしているだろうな・・・

迫真の演技だったよ・・・そして、私は死んでしまうのだろうか?・・・その続き・・・

後で確認しておきたい・・・




「あの・・・彩花さん?・・・大丈夫ですよ?あなたが想像(ある意味「創造」)した世界ですから、クリスティアさんは生きてますよ?だから安心して下さいね?」




勝手な脳内設定を真剣にフォローしてくれたサミュール・・・すまない・・・後でお詫びしておく事にしよう・・・後・・・出来ればその続きがどうなったのかを聞いてはくれないだろうか?・・・




しばらくサミュールは彩花が出した能力を見た目からの状態、そして体への負荷効力、どれ程の能力の消費であるのか、あらゆる結果を統計として出していた・・・そして・・・




「今の様子から私が解析した結果に基づいてお話したいと思います。彩花さんは、はっきり言って・・・・・測定不能です・・・」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!???どうしてぇぇぇ!?」


「はい・・・これは統計を出すには遥かに度数を超えてしまっているからです。つまりは・・・常識の範囲を越えている能力と言う事になるかと思われます。」


「何だと!?・・・彩花はそんなに強い能力を持っていたと言うのか!?・・・」


「はい・・・私もアルバイトで色々な解析をして来ましたがこれ程の方に出会ったのは今回が初めてです。」


「姉さまは、あらゆるアルバイトを探して来ては私と共に働いて来た言わば、アルバイトのプロフェッショナルなのです!!」




アルバイトのプロフェッショナル?・・・はて?それはまた凄い言葉を聞いた様な気がするな・・・




「私は人間じゃないのかな?クリスティア?・・・クリスティア?どうしたの?」


「あぁ・・・実はだね・・・彩花?」


「何!?・・・やっぱり私、人間じゃないの?・・・どうしよう?・・・私・・・」


「どうしても聞いておきたい事があるんだ!?彩花?」


「何?・・・まさか私が魔王じゃないかって事?」


「さっき、私が斬られた後、私は死んでしまったのだろうか?」


「はい?・・・・」




クリスティア様ぁぁぁ!!!!!そんなに彩花様の想像の中での「死」が怖かったのですかぁ!?・・・・・




「いや・・・何でもないよ・・・仕切り直そう・・・彩花は、恐らく対魔師の2人の間に生まれたから能力を両者から受け継いでいるんじゃないのかな?」


「確かに・・・言われてみれば、パパもママも対魔師だから・・・なのかな?」


「彩花様のご両親はその・・・対魔師?・・・と言う方なのですか!?」


「うん!そうだよ!・・・対魔師は悪い魔族を倒す為に能力を持った人を集めた人間界の・・・日本と言う国に存在する能力者?みたいなものかな・・・」


「そうなのですね・・・ですが通常能力と言うのは両親がいてほぼ均等に分け与えられるのですが、彩花様の場合、どちらかと言いますと、遺伝と言うものもあるのでしょうが、あまりその辺りは関与されていない様な気も致しますね・・・あっ、ミスティーです・・・」




何だ!?・・・流行っているのか?自分の名前を名乗る事が!?・・・トレンド入り?・・・なのだろうか?私もやってみようかな?




「あぁ・・・確かに彩花の両親の能力は恐らく先程のエネルギーを吸収すると言う能力では無かったはず・・・だとすれば、彩花は独自の能力を持っていると言う事にも繋がるかもしれない・・・・・クリスティアだ!」




何!?・・・どうして皆自己紹介しちゃってるの!?私もした方が良いのかな?




「そうなんだぁっ!?でも、確かにパパもママも能力を吸収して使うって言う話を聞いた事は無かったよ!?・・・それに測定不能の能力の高さって言ってたけど、もしかするとこれも私オリジナルなのかな?・・・」




しまったぁぁぁ!!!自己紹介するの忘れてた・・・今更「彩花です♡」とか言ってもなぁ・・・タイミングが悪いと言うか・・・






「おや?君たち、こんな場所で何をやっているんだい?」




私たちが野原で能力のチェックをしていると周辺の辺りから魔族の・・・格好良い感じの魔族?・・・が話掛けて来た!?




「きゃぁぁぁ素敵ぃ♡」




最初に飛びついたのは何故かミスティーだった!?

でもおかしいよね?ミスティーがそんなに熱心に声を出してこんなセリフを言うなんて・・・




「あぁ♡素敵です・・・♡」




続いてファランドーラが・・・でも反応の仕方が不自然と言うか・・・ファランドーラって確かミスティーにベッタリだったはずじゃ?・・・




「おや?どうしたんだい?私が何か?」


「あなた様のお名前を教えて頂けませんでしょうか?」


「はい・・・私たちきっとあなた様に恋をしてしまったのかもしれません♡」


「あぁ・・・私の名前かい?私はローテンマリゼ・・・リリスティア様の眷属だよ?」




何っ!?・・・リリスティア!?・・・何故か分からないが無性に強い苛立ちを覚えてしまう名だ・・・

ローテンマリゼと言う如何にも歌劇団出身者であるかの様な男優の様な魔族は私たちに話掛けて来た上、ミスティーたちが一瞬で恋をしてしまった・・・

サミュールやセミュールはと言うと・・・




「あれ?・・・確かにあのお方は・・・あぁ♡・・・そうです!私たちはあのお方に出会う為に生まれて来たのでしょう・・・♡」


「姉さま?・・・はい・・・間違いありません!私もあのお方と出会う為に生まれて来ました♡」




ダメだっ!!魔族全員ローテンマリゼに恋い焦がれてしまった・・・

一方私たち人間チームはと言うと?・・・




「ねぇ?クリスティア?確かに格好良いし、某歌劇団所属っぽいイメージだけど・・・そんなに一瞬で恋しちゃう様な感じなのかな?」


「あぁ・・・ここの世界は殿方がいない・・・となるとそれも不思議では無いだろうね・・・けれど・・・私はいけ好かないな・・・」


「そうだよね・・・私もそれ程とは思えないよ・・・確かに格好良いし美形だなって思うけど・・・」




彩花とそう言う事を話しているとこちらへやって来た・・・




「おや?・・・君たちは私には飛びついて来ないんだね?」


「えっ!?・・・あっ!?・・・はい・・・特には・・・」


「こうして君の顎に手を掛けて、君の綺麗な瞳を見つめてもかい?」


「うっ・・・いえ・・・何も・・・」


「そうかい・・・これは面白い子を見付けたみたいだね!では・・・そちらの凄く綺麗な王女様の様な姫騎士の君はどうだい?」




バシッ!!!




「イタッ!!・・・これはツンデレな仔猫ちゃんに出会ってしまったみたいだね・・・増々私の心に火が点いたよ♪」


「すまないがあなたとじゃれ合うつもりは無い!ここから立ち去ってもらおうか?」


「・・・・・どうして?・・・なのかな?・・・私の事を嫌いなのかい?」


「嫌いも何も、出会って早々手を掛けようとしている時点で私の意に反する行い・・・ナルシストも限度を越えると見苦しい・・・」


「ふっ・・・なるほどね・・・確かにリリスティア様の仰っていらした通り、かなり芯の強い人間と言う事だね・・・」


「すまないがその「リリスティア」と言う名前を出さないでもらいたい・・・大方魔王の名前なのだろうが?」


「流石だね・・・魔王様がリリス・・・そうだよ・・・君が考える通りだ!」




うわぁぁ・・・鳥肌が立って来る・・・「リリスティア」とか、名前だけでも聞くと、どうしてだろう?会った事も無いはずなのに・・・生理的に受け付けない・・・大体この魔族は何者なのだ!?・・・馴れ馴れしく話掛けて来ておいて、彩花の顎に手を掛けて口説こうとしていたではないか!!全く、男の・・・いや、女になるのか!?・・・尊厳も何もあったものじゃないな!!吐き気がする・・・




「あの・・・クリスティアが嫌がっているのでこの辺で止めてくれませんか?」


「おや・・・もう1匹の可愛い仔猫ちゃんも私の能力には掛からない・・・人間には通用しないのだろうか?よし、君たち?このクリスティアを取り押さえてくれないかい?ちゃんと言う事を聞いてくれた子には後でご褒美をあげるよ?2人ずつそれぞれをお願いするよ?」


「はい!!私たちが・・・」


「お任せ下さいローテンマリゼ様・・・」




ローテンマリゼが命令した直後、サミュールとセミュールが私の両腕を掴みミスティーとファランドーラが彩花をそれぞれ抱え込み動けなくされた・・・




「さて・・・仔猫ちゃんたちに取り押さえられてしまった可愛い新たな仔猫ちゃん?私と口づけをしよう?」


「うぐっ・・・私はその様な趣味など持ち合わせてはいない・・・貴様は、魔王に洗脳されているだけだ!だから・・・何とかしなくては・・・」


「ふふふ♪・・・なるほどね・・・そう言う事だったのかい?けれど残念だね・・・私はリリスティア様には洗脳されていない・・・」




洗脳された後だからその様に言うのは当然だったな・・・洗脳されている事が頭の中に残っていると抵抗心が現れ洗脳は不完全なものとなる・・・明らかに自身の意志で眷属となったと思い込まされているからこそ自分は洗脳なんてされていないと思ってしまうもの・・・いけ好かないのは間違いないがこの者に直接の悪さと言うものは本来無い・・・だが、どうしてだ?私の中の何かがこいつや魔王はいけないと悟ってしまうのだ・・・




「答えは導き出せたかい?では、そろそろ口づけを交わすとしよう?」


「ペッ!!!」


「うぐっ・・・」


「我が唾を吐き掛けるなど下品な振る舞いをしたくは無かったが、少々度を越えている様だな?」


「ペロリッ♡・・・これくらいの仕打ち、君を手に入れる事を考えると容易い事だよ?それだけ私は君に惚れている・・・」




ひぃぃぃっ!!!気持ち悪いぃぃぃぃぃ!!!!!!気持ち悪過ぎるぅぅぅ!!!!

ダメだ・・・こいつだけは好きになれそうにない・・・絶対に!!




「ちょっと・・・クリスティアが嫌がってるでしょ!?止めてよっ!!」


「彩花様?ローテンマリゼ様の魅力がお分かりになられないのですか?」


「う~ん・・・全然分からないよ?」


「どうしてなのでしょうか?これ程のお方がいらしたらオーラだけでも私たちは気をやってしまう程なのですが・・・」


「う~ん・・・どうしてだろうね?でも好きになるのに理由は必要無いけど、全員が好きになると言うのもあり得ないと思うんだよね?・・・それに・・・嫌がっているのに無理矢理手に入れようとする気持ちが私には全く理解出来ないよっ!!それと最後になるけど、クリスティアも言っていたけど・・・「リリスティア」って聞いたら私も何故だか分からないけど凄く頭に来て生理的に受け付けなくなっちゃったんだ!!」




やはり彩花もだったか!?・・・「リリスティア」め・・・一体私たちに何をしたと言うのだ!!会ったら思いきり怒鳴りつけてから倒す事にしたいと思う!!






一方魔王城にて・・・




「へっくちっ!!!」


「リリスティア様!?お風邪をお召しに!?・・・大変です、直ぐにベッドへ!!」


「いや・・・大丈夫・・・誰かが噂でもしてるんでしょ?全く人間界から救世主がやって来たとか面倒な事になっちゃったな・・・私も魔王様代理だから詳しい事は分からないんだよね?・・・」






「ふふっ♪君たちは本当に面白いね・・・増々気に入ったよ♡・・・絶対に、私のモノにしてあげるよ!」


「いや、それだけは願い下げだ!どうも我は貴様の様な性分を好きになる事が出来ない・・・」


「私も同じよ!!無理矢理そうやって手に掛けようとする性格が許せないっ!!」


「手合わせ願おう!・・・貴様も剣術は出来ると見た!我と勝負しようじゃないか?」


「これはこれは・・・お姫様と剣術で勝負と言うのかい?・・・けれど君は腕が高いと見える・・・仕方が無い、君の望みを聞き入れようじゃないか!ただ・・・条件を付けさせてくれないかい?」


「条件?・・・そうだな!フェアな条件であるなら聞き入れても良いが・・・」


「そうだね♪・・・君が勝ったらここにいる仔猫ちゃんたちを元に戻して、更に私も君の眷属になろうじゃないか!」


「いや、後者は必要無い!謹んでお断りさせて頂こう!」


「遠慮な不要だ!私が負けると言う事は、それ即ちリリスティア様の眷属として未熟であったと言う証拠・・・自らの意志を持って君の奴隷となる事をここに誓おう!」




♡チュッ




そう言ってローテンマリゼは私の右手の甲に口づけをした。

気持ち悪い・・・吐き気が・・・




「まぁ、それは良いとして・・・私が負ければどうするつもりだ?」


「そうだね・・・では、私が勝てば・・・君たち2人を強制的に洗脳し、私の配下にするとしようじゃないか!」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「どうしたんだい?これで条件は、君が拒んだ分を含めるとフェアだと言えるだろう?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「何か不服なのかい?なら今の内に・・・」


「本気・・・なのか?・・・」


「勿論、本気だよ?・・・お互いに負ければ勝った方の従者として奴隷になる!良い条件だと思うのだけれど?・・・」


「今一度考え直してはくれないだろうか?・・・私が勝てば、貴様のオーラにやられた私の仲間を元通りにしてくれさえすればそれだけで・・・ただ、それだけで良いから!・・・だが、私が負けたら・・・私は諦めて人間界へ戻る事にするよ・・・それでフェアだろ?」


「そんなに私と関わる事が嫌なのかい?・・・」




クリスティアが・・・クリスティアがあんな事を言うなんて!?・・・本当に、心の底からローテンマリゼの事を毛嫌いしているんだね!?・・・




「では、勝負は無かった事にして、君たち2人の事は諦めるよ・・・ただし、ここにいる君たちの仲間である魔族たちは貰って行くよ?」


「わっ・・・分かった・・・最初の条件で良い・・・ただ、彩花だけは除外してくれ・・・私が負ければ貴様の配下に下る・・・好きにすれば良い。1対1の勝負なのだから、お互いの配下に下るのも貴様か私かの何れかだ!」


「良いだろう!・・・」


「クリスティア・・・!?」


「大丈夫、私は必ず勝つ!!いや、勝たなければならない!!もしも・・・万が一負けたら自害するつもりだ!!」


「いや・・・そこまで言われてしまうと流石の私もショックを隠せないよ・・・どうして君たちは私の事をそれ程嫌うのだい?」


「生理的に・・・・・・・だ!!」


「私も・・・生理的に無理(>_<)」




リリスティア様、私は一体どう思われているのでしょうか?人間に・・・




「では、構え!!」




サミュールの掛け声と共に私たちは剣を構えた!




「良い・・・構えだな!・・・だが我も・・・」


「あぁ・・・流石姫騎士様と言う訳だね・・・手加減は無くて良さそうだ!思いきり勝負が出来る!!」




「きゃぁぁぁ!!素敵ぃぃぃ♡ローテンマリゼ様ぁぁぁ♡」




完全に奴の虜と化されてしまっている様だ・・・だが、このまま私が負ける訳にはいかない・・・

負ければ・・・負ければ・・・うぐぅ・・・




「おや?・・・クリスティア?どうかしたのかい?顔色が悪い様だが・・・?」


「い・・・いや、大丈夫だ・・・では、合図を頼む、サミュール!」


「はい・・・では、開始っ!!」




♪ジャキーン・・・




「剣術だけならず、その鎧をまといながらもしっかりと足を踏み入れ、直ぐに前へ出て構えられる姿勢・・・やはり相当な努力を積んで来た事だろう・・・」


「当たり前・・・だっ!・・・我は国を守らなければいけない立場であり、民を守る必要がある。安易な考え方で剣術を習得して来た訳では無い・・・貴様も熟練の剣術と見たが・・・」


「あぁ・・・流石に目が高いね・・・かれこれ100年程やってるよ!」


「100年だと!?・・・そうかっ!!・・・魔族だから人間より遥かに長生きするのだったな・・・それなら我も負けてしまうかもしれない・・・」


「いや、君は凄く強い・・・私でさえ、こうして余裕に見えてしまうかもしれないけれど、かなり必死なんだよ・・・」




♪ガキーーーーーーーン




この後も長らくの時間剣術に勝負が付かないまま接近戦を繰り広げている・・・

早く・・・早く蹴りを付けたい所だが・・・流石にスタミナがそろそろ・・・




「良い勝負になってるね・・・でも?・・・」


「あぁ・・・貴様、凄く強いな・・・私も流石に・・・流石・・・に?・・・」




何だ!?・・・このドキドキする感覚は!?・・・最初は近づいた途端吐き気がして堪ら無く苦痛であったはずなのに・・・しばらくの時間剣を交えていると段々と・・・段々と・・・




「ふふ♡・・・そろそろ胸が高鳴って来た頃だろ?」


「きっ!?・・・貴様、我に何をした・・・・!?」


「私は何もしていないよ?・・・こうやって剣を振るっているのに精一杯だからね?何か起こっているのは君自身の体だよ?」


「何だ!?・・・段々と息が上がって来て・・・ドキドキが止まらなくなって・・・来た・・・ぞ?・・・」




♪カラーン・・・・




最後の力で剣を持つのが精一杯だった私だったが、遂にはその剣すら落としてしまい、私の腰も抜けてしまう程となってしまった・・・




「いけない!!捕まって!?」




そうして私が倒れそうになった瞬間、ローテンマリゼが・・・ローテンマリゼ様が・・・

私を・・・私の身体を直接支えて下さった・・・




「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・あっ・・・ありがとう・・・御座います・・・ローテンマリゼ様・・・♡」


「ふふ♪礼には及ばないよ?こうやって剣を交え合った中じゃないか?」




何!?・・・クリスティアが!?・・・ローテンマリゼ「様」って!?・・・どう言う事!?




「あの・・・完全なる私の・・・敗北です・・・」


「おや?認めるのかい?」


「はい♡・・・本当に・・・色々なご無礼をどうか・・・どうかお許し下さいませ・・・このクリスティア、この先はあなた様の奴隷となり、一生お仕えする事を誓わせて頂きます。」




嘘っ!?・・・止めて!?・・・土下座なんかして、ローテンマリゼなんかに・・・




「やめてぇぇぇぇぇ!!!!!クリスティア!正気に戻って?お願いだから!!クリスティア?クリスティアァァァァァ!!!!!!」


「彩花?・・・色々とすまなかったね・・・だが、今回は紛れも無く私の敗北だよ・・・心苦しいのだけれど、彩花・・・どうか、この先無事である事を祈っているよ・・・私はもう、この・・・ローテンマリゼ様のモノだから、ついて行く事にする。今まで色々とありがとう。」


「そんな・・・クリスティア?・・・待って?・・・」




クリスティアまで完全にローテンマリゼの配下に下ってしまった・・・

そのまま彼女たちは馬車で向かおうとしていた方面へ走り出してしまった・・・

私・・・どうすれば・・・1人になってしまった・・・

もう・・・このまま死んじゃうのかな?・・・

だって・・・だって・・・




「ここから街なんて歩いて行ける距離じゃないって聞いたもん!!!!!!!!!!」






「ローテンマリゼです。魔族の仲間たちは既に私の手に堕ちましたが、クリスティアも遂に・・・はい、彩花については堕ちていません。道中置いて来ました。恐らく誰かが助け船を出すはずですが、次に会った時には・・・はい、必ず堕としてお見せ致します。リリスティア様・・・帰った後、ご褒美を・・・頂けますでしょうか?」






1人になって次の街まで徒歩で向かっている私は、段々と意識が朦朧として来た・・・

さっきはあんな弱音を吐いちゃったけど、クリスティアたちを助け出さなきゃ・・・この世界だけじゃなくて何れ人間界も悪い方向へ向かっちゃうんじゃないかと考えると私がしっかりしないといけないのだと改めて悟ったのだった・・・




「それでもどうすれば良いのかこんな状況じゃ分からないよぅぅぅ~!!!!!!!」




思いきり愚痴をこぼしながら歩いていると後ろの方から馬車に乗った魔族が通り掛かった。




「あの・・・どうかしましたか?」




私の叫びが届いたのか彼女は私に声を掛けてくれた・・・今、私は心の底から「感謝」と言う言葉が輝いていた!!


「はいっ!!仲間が・・・」




そう言い掛けた直後、私は言葉を止めた・・・

もしかして、この魔族も魔王の仲間だったら?

とんでもない展開に持って行かれてしまうんじゃないかと・・・

そう考えているとその魔族は言葉を続けた・・・




「こんな所で1人でいたら悪い魔族に襲われちゃいますよ?・・・私、アーニャンって言います。」


「ア・・・アーニャン♡・・・可愛い・・・可愛過ぎる・・・」


「ん?・・・どうかしました?急にニヤニヤしちゃって?」


「う・・・ううん!ごめんなさい。私、仲間が洗脳されて連れて行かれてしまったんです。何とか助け出さないといけなくなってしまって・・・」


「それは大変な目に・・・分かりました、一先ず色々とお話もお聞きしますのでこちらへ!!私の住む街までこの辺りからだとおよそ5時間程になります!」




5時間!?・・・って馬車で走ってだよね?・・・だとすれば、私はとんでも無い場所で置き去りになっちゃってたって事!?・・・・・いくら悪い事するからと言っても酷過ぎない!?・・・




色々な話をしながらようやく次の街へ到着した・・・

アイゼスと言う街で私たちが住んでいる人間界での日本と似た感じがした。

私はアーニャンの家にお邪魔する事に!




「さぁ、入って?」


「お邪魔しま~す・・・」


「私だけだから気楽にしてよ?」


「うん・・・ありがとう!」




椅子に座ってと指示され座りながら待っているとアーニャンが温かいスープを出してくれた。




「この街秘伝のスープだよ?口に合うと良いけど・・・」


「あぁぁ!!ありがとう・・・お腹が少し空いていたし、良い匂い~♪頂きま~す♡」




美味しかった。凄く!!そして・・・本当に温かかった・・・

1人になってしまった私を助けてくれて・・・アーニャンには感謝の気持ちでいっぱい!




「美味しいよ♡・・・本当に・・・本当にありがとう・・・うぐっ・・・ぐすっ・・・」




あれ?・・・私今、泣いてる?




「辛かったんだろう?いいよ?胸をかしてあげるから好きなだけ泣いても?」


「うん・・・うわぁぁぁぁぁん・・・」




私は、飛びつく様にアーニャンの胸を抱き締めて泣いた・・・

本当は私、凄く怖かった・・・凄く寂しかった・・・凄く・・・辛かった・・・

クリスティアは私の大切な親友だと思っている。でもそれだけじゃなかった・・・

何か、強くて凛々しくて・・・きっと憧れの存在・・・家族の様な存在・・・

その子があんな風に変わってしまった・・・ううん!変えられてしまった・・・

あのクリスティアの様子を見ていると、最初あれだけ嫌悪感があった相手だった。

でも最後の方は腰が抜ける程ふにゃっとしていた・・・きっとあいつと近くにいたクリスティアがオーラにやられてしまったのではないだろうか?

だとすれば、ひょっとして・・・




「彩花?・・・何となく分かったよ!」


「アーニャン?・・・」


「さっき馬車の中で色々話をしてくれたよね?・・・ローテンマリゼは、噂では聞いた事があるんだけどさ・・・オーラを浴びた子が虜になって自ら手先になりたがるって・・・」


「うん・・・実際目にしたから分かるよ・・・」


「その君が一番大切にしているクリスティア?・・・その人はきっと・・・これは私の推測なんだけどさ・・・最後の自我をあなたを守る為に使ったんじゃないかな?」


「えっ!?・・・それってどう言う事かな?・・・」


「君を置き去りにして行ったのだろう?」


「うん・・・そうだけど・・・」


「クリスティアは、恐らく人間なのに奴のオーラに最後はやられてしまった・・・つまり、自分がやられてしまうと言う事は彩花自身の身に危険が及ぶのは時間の問題・・・だから先に敗北を認め奴と一緒に遠くへ逃げた・・・」


「アーニャン・・・それってまさか!?・・・」


「まぁ、あくまで私の想像だけどね?・・・でも彩花のクリスティアの色々な話を聞いていると多分彼女は君を守る為に行動を取ったんじゃないかなって思ってね・・・」


「そうだね・・・クリスティアなら十分にあり得ると思う!!でも、あんな場所で置いてけぼり喰らわせて来るのって・・・」


「あぁ・・・確かにあの場所って悪い魔族たちが現れる可能性が少し高いけど、まぁ、ほとんど出る事が無いんだよね・・・さっきの件は多分魔王の配下で色々と調べた結果彩花たち通るであろう場所に配置したんじゃないかな?・・・その、リリスティア?って魔王代理がさ?」






魔王城・・・




「へ~っくちっ!!!」


「リリスティア様!!やはりお風邪をお召しになられたのでは!?・・・早くベッドへ!!」


「いや・・・大丈夫だよ・・・私もそれ程やわじゃないと自信があるからね!!それより私、酷い者扱いされてない?・・・確かにハーレム作りたいなってローテンマリゼに話をしたんだけどね・・・どうやら現魔王様って相当酷い奴とか噂が広がってるから、私も正直直接会った事無いから怖いんだよね・・・って言うか豪華リゾートに泊まりに行ってるって噂さえ挙がっちゃってるけど、最低だよね?・・・このままクリスティアとか彩花が来たら私変な誤解されちゃうし倒されちゃうんじゃないのかな?・・・本当まずいよそれ・・・確かに色々と彼女たちにはあったけどさ・・・うん・・・あの時は私が悪かったよ・・・でも今は心も入れ替えて先代の魔王様精神で・・・やれていないか?・・・でも今の酷い魔王様みたいには考えてないからね!!リリスティア概念は、魔族・人を殺めず快楽を以て支配する・・・だったんだけどな・・・」


「あの・・・リリスティア様?・・・随分と独り言が・・・その最後のリリスティア概念と言うものの主旨が私には理解出来ない所が・・・」


「あぁ・・・ごめんね・・・一部の読者さん・・・じゃなかった・・・それはこっちの話だから気にしないで!?」






再びアーニャンの家にて・・・




「それからあの場所って意外と魔族たちが通るからきっとそれも見越しての振る舞いなんだろうと・・・」


「そうなの!?・・・じゃぁ、私、あのままあそこにいても誰かが拾ってくれたって事かな?」


「うん!恐らくそうじゃないかな・・・あんな所で1人で歩いていたら野垂れ死にしちゃうだろうし、周りにも何も無いからね・・・誰でも助けようって思うかと・・・」


「そうか・・・何だか・・・安心したよ・・・ありがとう、アーニャン。」




良かった・・・クリスティアが私の事ちゃんと考えてくれていたんだ・・・

だったらクリスティアを一刻も早く助けないといけない!!勿論、仲間の皆も!!

あれ?・・・そう言えばさっきリリスティアがどうのって・・・




「あの・・・もう一つ聞きたい事があるんだけど?・・・いいかな?」


「どうしたの?私が分かる事なら・・・」


「リリスティアって魔王代理って言ってたよね?・・・代理って?・・・」


「あぁ・・・そうだよ・・・現魔王が何か休息を取る為に魔界を離れたらしいから代理の魔王を雇っているって・・・それがリリスティアって言う魔王らしいんだ・・・」


「じゃぁ・・・悪い事をしている魔王って言うのは?」


「うん・・・魔王自体が悪いと言う評判なんだ!・・・だけど、今、代理が魔王やってるって言う話はほとんどの魔族たちは知らないでいる・・・だから今は恐らくその代理魔王が全ての標的になっているみたい・・・」


「嘘・・・でしょ!?・・・魔王が休息とか・・・じゃぁ、どうしてリリスティアって聞いた時私物凄く嫌悪感を抱いていたんだろう?」


「?・・・・・」







移動中のクリスティアたち




「あぁん♡ローテンマリゼ様とご一緒にいられる幸せ・・・素敵ですね♪」


「そうかい?私も、君たちの様なとびっきり可愛い仔猫たちを仲間に出来て幸せなんだよ?」


「はぁぁぁぁぁぁ♡本当にローテンマリゼ様ってお優しいのですね♡」


「あれだけ抵抗していたクリスティアも今では私の可愛い仔猫ちゃんになっちゃったね♡一生可愛がってあげるね♪」


「光栄の極みに御座います。出会ってからあの様な無礼、心よりお詫び申し上げます。ローテンマリゼ様・・・」






再びアーニャンの家・・・




「ねぇ、彩花?・・・直ぐにでもクリスティアたちを助け出したいのはよく分かったよ!」


「うん・・・でも実際何処に行ったのか分からないし・・・どうやって探せば・・・」


「私が協力するよ!」


「アーニャン・・・ありがとう!凄く心強いよ!!」




アーニャンは私を心底励ましてくれているんだなと身に染みて感じる。

でも、それだけでは無かった。実はアーニャンは・・・




パァァァァァァァァァ




「うん・・・なるほど・・・ここの街は通り過ぎて移動中・・・次の街の近くまで行ったみたいだ・・・」




アーニャンは、突然オーラを出したかと思ったら、目を閉じてその様な事を言って来た。




「うん、間違い無いよ、ここから更に一万二千ペクター程離れた街へ向かっている。恐らくそこで止まる気だ!」


「アーニャン、それって、能力!?」


「うん・・・私の能力は、位置情報キャッチとその情景や様子が見えるんだ!完全にローテンマリゼにベッタリだよ皆・・・」


「そうか・・・おかげで動きやすくなった!でも、どうやって向かえば・・・」


「私が連れて行ってあげる!馬車もあるし、少し時間は掛かるだろうけど馬車に乗った彼女たちもやはり休息が必要だから、その間にきっと私たちも追いつけると思うし!」


「アーニャン・・・ニャーン♡♡♡」


「うわぁ・・・ちょっ・・・ちょっと彩花?どうしたの?急に!?」




良い仲間に出会えたよ・・・クリスティア待ってて!?絶対に私が助けに行くから!!






翌日の早朝、直ぐに私とアーニャンは身支度を整えて出発する事にした。




「ねぇ、アーニャン、ここからだとどれ位掛かりそうかな?」


「うん・・・およそ一万二千ペクターだからこの子は結構早くて身軽に動けるし、今は2人しか乗っていないからね・・・多分9時間から10時間あれば到着するんじゃないかな・・・歩くと丸々2日半程だからね・・・」


「凄い!!そんなに差が出るんだ!?」




うん・・・分かるよ!歩くととんでも無く時間が掛かっちゃう事を!?

最初5000ペクターが歩くと24時間掛かっちゃうって聞いたし、2日半だよね・・・歩くと・・・確かにファランドーラの馬車で5時間程度掛かったから、如何にアーニャンの馬車が早いのかも分かる気がする・・・




「少し急ぐから揺れるよ?途中で少し休憩も必要だからね!じゃぁ・・・出発!!!!」




こうして私たちはアイゼスの街を出て、次の街であるフルディートスと言う街へ向かった。

どうやらクリスティアたちはその街で泊まる気でいるみたいだ・・・

早く助け出したい・・・一刻も早く・・・待ってて、クリスティア・・・そして、皆!!




「ところで・・・君たちは人間なんだよね?・・・どう言う世界なのかな・」


「うん・・・結構こっちの世界と似ている所が多いなって思っていたんだけど、どうやら先代の魔王がゲートで人間界とやり取りをしていて技術を習得したとか聞いたよ?」


「あぁ・・・確かに人間界から貰った技術を駆使して色々と作られたものって結構あるんだよね・・・」


「仲が良かったのかな・・・?」


「そうだね・・・先代の魔王様たちは悪い事は考えなかったと思うよ!むしろ悪く思われていた所を良くして行こうと頑張っていたみたいだけど・・・今の魔王様になってからだよね・・・本当に悪い事をする様になってしまったのは・・・」


「その、さっき言ってた代理も悪い事するのかな?・・・クリスティアが戦っていたローテンマリゼは代理の直属の眷属だって言ってたから・・・」


「う~ん・・・私もその「代理」の噂と言うのは全く知らなくて・・・代理になったのって多分ここ数か月だったはずだから・・・」


「そうだったの!?・・・じゃぁ、まだあまり分からないって言うのも理解出来るよ!!」


「まぁ、代理だからあまり下手な事も出来ないだろうし、立場的には中間管理職みたいな感じで大変なんじゃないのかな?・・・」


「そうかな?・・・でもあの名前を耳にするとどうしても私の中の何かが火じゃなくて炎を出しちゃうんだよね・・・」


「彩花って・・・もしかしてその「代理」に過去に何かされちゃったんじゃないのかな?・・・ははは・・・」


「う~ん・・・こっちの世界に来たのってつい最近だし・・・それまで特に何かあったって事も無いし・・・クリスティアも私と同じ事言ってたな・・・」




彩花が何を言っているのかは、よく分からないけど・・・とりあえずここは話を合わせておくかな?・・・ははは・・・はぁ・・・




途中で休憩を挟みながらようやく到着した頃は既に辺りが暗くなり始める頃だった。

考えてみると朝8時頃に出発したからほぼ10時間程だったと思う・・・こうして次の街である、フルディートスと言う名前の街へ着いた私たちは、今までとは少し雰囲気の違う街並みに驚いていた。




「ねぇ、ここって手前までの街とは全く違った感じがするよね・・・」


「うん!ここは人間界?で言うと外国?と言った感じにしているみたい。」


「アーニャンも結構人間界の事詳しいの?」


「私は少し話を聞いた事があるくらいかな・・・それ程詳しい事は分からないけど・・・」


「そうか・・・魔王を倒したらお互いにまた行き来出来るゲートが出来ると良いのにね・・・」


「うん・・・そう考えてくれる彩花は優しい子だと思うよ。」


「じゃぁ、早速クリスティアたちを・・・」


「ちょっと待って彩花?」




クリスティアたちを早速探そうと思ったその時!?

アーニャンは私を止めた?どうしてだろう?




「今日は止めておこう?向こう側も直ぐに動く事は無いだろうし、少し彼女たちの様子も見ながら対応した方が良いかもしれない・・・」


「う・・・それを言われると確かに・・・」


「先ずは彼女たちの泊まっている宿の直ぐ近くの宿に空きがあるか確認するよ!」




そう言ってアーニャンはクリスティアたちが泊まっている宿の直ぐ斜め向かいにある宿に空きがあるかどうか確認を入れてくれた。すると・・・




「空きがあるってさ!今日はここに泊まらせてもらおう!」


「うん・・・分かった!」




そして夜になり、荷物なども置いて食事をした後、シャワーを浴びた私たちは部屋の小窓から斜め向かいにある宿を見ていた。

こっちよりも部屋数が多い、少し豪華な感じの宿だったけど、窓がいっぱいある為、何処の部屋に泊まっているのか分からない・・・

あっ!そうだ、アーニャンに何処の部屋に泊まっているか聞いてみよう!!




「ねぇ、アーニャン?クリスティアたちって何処の部屋に泊まってるか分かる?」


「そうだね!ちょっと見てみようか?」




パァァァァァァァァァ




「うん・・・3階の丁度私たちの方からも確認が取れる場所だよ!待ってね・・・うん・・・何!?・・・は・・・裸!?・・・シャワーかな?でもおかしいぞ?全員が裸でローテンマリゼを取り囲んでいる・・・一体何をしているんだ!?」


「ちょっと、それまずい展開じゃないの!?・・・早く助けなきゃ!!」


「いや、今行くのは危険だよ!!相手の他に持っている能力があるかもしれないし、何より対策を立てて行かなきゃ彩花だってあいつの罠に堕ちてしまうかもしれない!!」


「う・・・それを言われてしまうと・・・分かったよ・・・じゃぁ、作戦を立てる事にするよ・・・」


「私は特に能力は今彩花に伝えた事くらいだからこれ以上役に立てないと思うんだ・・・でも、彩花の能力の話を聞いた時に、きっと色々と既に習得しているのだろうなと思ったから、とりあえず、最初に言っていた、ミスティーって言う子の能力を彼女たちを1人ずつ呼び寄せられたら使えるでしょ?」


「確かにそうだった!!私もミスティーの術は一度使えた経緯があるから!!」


「じゃぁ、それをどうやって使って行くのか・・・やはりここはミスティーを優先で戻して残りは2人ずつ戻せるからその順番でやって行こうよ?・・・」


「うん分かった・・・ただ、どうやって1人にするかだよね?」


「あれ?・・・待ってね?ローテンマリゼが着替えて外へ出て行こうとしている・・・それに釣られて皆も出て行こうと・・・一体こんな時間から何処へ行こうって言うんだろう?」


「外へ?・・・じゃぁ、ついて行こうよ!!」


「そうだね、もしかするとチャンスかもしれないし!!」




そうして外へ出て行ったローテンマリゼと操られてしまった私の仲間をアーニャンと一緒に後をつけて行った。




「ねぇ、彩花?・・・ここって街外れの森じゃない!?・・・一体何をするつもりなんだろう?」


「う~ん・・・何をするんだろう?こんな夜遅くに・・・」




彩花はまだお子様だろうしあまり深く考えさせない方が良いかな?・・・

まぁ、大人の行為をしようとしているのかもしれないし・・・




いや・・・まさかね・・・でも結構夜も遅いしこんな所でする事と言えば・・・

まさか!?・・・でも・・・流石に大人の行為なんて・・・ね?・・・




「ちょっと待って!?・・・皆、それぞれ離れだしたぞ?・・・何かを探しに出たんじゃないかな?これは罠で無ければ絶好のチャンスだよ!!・・・何々?・・・うん・・・何かを探そうとしているみたいだ!!話し声がするよ・・・ん?・・・あまり聞き取れないけど魔王様にそれを渡す?・・・なるほど・・・魔王へのプレゼントを探すって事の様だね!よし、ミスティーがこちらの近くへ向かっている!大チャンスだよ!彩花!?」


「うん・・・こっちは準備万端だよ!!」


「私が偶然を装って出くわすから直ぐに後ろから口を塞いで声を出せない様にして結界を張って?」


「うん!分かったよ・・・」




よし、こっちへ来る・・・私は彷徨った振りをしてミスティーと接触した。そして直ぐに話を掛ける。




「あぁ・・・・・良かった!!誰もいなくて怖かったんですぅ・・・ちょっとお尋ねしたいのですが、宿はどちらにありますか?私、ここにようやく辿り着いたので分から無くて・・・」


「ふふ♪・・・そうでしたか・・・それはお困りでしょう?・・・さぁ、一緒に参りましょう?私がお連れ致します♡・・・ふご・・・・ふぐぐぐぐ・・・・」




パァァァァァァァァァ




「彩花、間に合ったみたいだね!・・・私は結界外になっちゃったけど、成功を祈るよ・・・」




「あれ?・・・こちらは?・・・もしかして、彩花様?・・・」


「良かったよ!!無事で・・・まぁ、折角だからゆっくりして行ってよ?私が張った自慢の結界だよ?ミスティーから受け継いだこの結界・・・ちゃんと出来ているかな?・・・あは・・・」




どうしてだろう?また涙が出て来ちゃった・・・この涙はどう言う意味だろう?




「私とした事が・・・まぁ、私は術など掛けられていませんのでこの様な結界に入っていても特に変化は・・・な・・・い?・・・あれ?・・・私・・・洗脳とか術とか掛けられていないはず・・・なのに・・・眠く・・・zzz・・・zzz」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・」




ちゃんと戻ってくれているかな?

早くしないと外でアーニャンも待ってくれていると思うから・・・




「ん・・・私は・・・」


「良かった・・・その様子だと完全に元に戻ったみたいだね!」


「彩花様・・・私、まさか!?」


「うん・・・ローテンマリゼのオーラに・・・」


「そう・・・だったのですね・・・申し訳御座いません・・・色々とご迷惑をお掛けした事だろうと・・・」


「それは良いよ!それより、私以外の仲間が全員掛かっちゃったから!それをミスティーにも協力してもらって2人で戻して行きたいの!お願いしても良いかな?」


「はい!勿論です!!・・・って待って下さい!確か奴のオーラは魔族には通用するはずですが人間にはほとんど通じないと・・・以前私の調べた情報では・・・」


「どうやら長く接近しているとオーラに負けてしまうみたい・・・クリスティアはローテンマリゼと剣術で勝負していた最中に奴の虜になっちゃったの・・・」


「そうだったのですか!?・・・それは急いで助けなければ!!」




パァァァァァァァァァ




「あれ?アーニャン?・・・何処に行ったの?アーニャン?・・・アーニャン!!!!!」




まずい!!アーニャンがいない・・・きっと誰かに・・・




「やぁ、彩花?ここまでよく来られたね?」


「クリスティア!!それに・・・アーニャンまで・・・」


「もう、彼女は私たちの虜だ!ほら?口づけをしよう?」


「はい♡クリスティア様♡」


「クリスティアァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!気をしっかり持つの!!」


「ふふふ♪・・・私は正気だよ?・・・彩花こそこんな状況なのに人の事を考えられる余裕なんてあるのかい?」


「何を言って・・・きゃぁっ!!!」




私がクリスティアに話をしていた時、背後からミスティーが両腕を抱え込み身動きが出来ない様にして来た。




「ちょっとミスティー?どうしちゃったの!?ミスティー?ミスティー!!!!!!!!?」


「ふふふ♪君は私の事を好いてくれていた・・・だから折角だから私が君の事を直接手に掛けてあげるよ?嬉しいだろ?ほら近づくよ?」


「止めて・・・クリスティア?本当に止めて・・・今そんな事になっちゃったら私たちどうなるの?魔王を倒さなければいけないんでしょ?クリスティア?・・・お願いだよ、しっかりして?クリスティア!!クリスティアァァァ!!!!!!!!!」

















第四章 彩花の本当の能力とは!?・・・クリスティアの身に降りかかった悲劇とは!?・・・そして、彩花に更なるピンチが襲い掛かる・・・ END

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