第二章

「彩花?・・・本当に君は彩花なのか?・・・」




恐らく今、目の前に現れた魔族と1人の女の子・・・彩花は彩花で間違いないだろう・・・

それでもその様な表情をされてしまうと・・・




「私の名はシャール・・・もうこの子、彩花は私のモノよ?こうしてぇ♪」




♡チュッ




自身の名を名乗った直後、シャールと言う魔族は直ぐ隣にいた彩花の腰を抱き自分の方へ寄せ、口づけを交わした。




「彩花!?・・・」


「恐らくシャールの魅了魔法に掛かっているのだろうと・・・」


「魅了魔法?」




ミスティーのその言葉を耳にして思い出した!聞いた事がある。魅了魔法と言う魔法を使い、自分の虜にさせ、同胞にする魔族が存在すると言う事を・・・確か日本へ来てから鷹人たちに聞いた・・・

やはり鷹人たちの知識が無ければまだまだ私は至らない・・・




「さぁ、私はしばらくアジトで様子を見ているわ♪彩花?私の可愛い奴隷ちゃん♡皆も仲間にしてあげてね?じゃぁ待ってるわね♪」


「待てっ!!彩花を戻せ!!」


「元に戻せと言われて「はい、戻します」なんて言うバカいないでしょ?私の魅了魔法に掛かっちゃったらとても幸せな気分になれて私の事が大好きで大好きで堪らなくなって頭の中がお花畑になっちゃうの?あなたもそうなりたくは・・・無い様ね?あなたの目は芯が強く、私の魔法もひょっとすると効かないかもしれないわね?・・・じゃぁ、またね?」




パァァァァァァ




そう言ってシャールは姿を消した。

どうすれば・・・良いんだ!?




「あれ?私どうしたんだろう?・・・クリスティア?だよね?・・・私は一体?」


「何っ!?・・・彩花?ひょっとして元に戻ったのか!?」


「何だろう?私、確か魔族に捕まっちゃったはずで・・・クリスティア?助けてくれたの?ありがとう♪」


「いや・・・私は・・・何も・・・」


「おかしいですね?普通魅了魔法は相手の魔族が解除するか完全に倒さなければ効果が途中で切れる事など無いはず・・・」


「だったらどうしてだ!?・・・まさか消えたと同時に倒された?」


「恐らくそれは考えられないだろうと・・・空間を移動している訳ですし、アジトへ戻ると言っていた様に思えましたので・・・」


「?・・・そちらの方は?」


「あ・・・あぁ・・・こちらは・・・」


「私はミスティーと申します。情報屋をやっています。色々とお話もしたいので食堂にでも行きましょうか?」




そう言って私たちは街の食堂へ足を運び、ミスティーと名乗る情報屋とこの世界について様々な話を聞いた。




「あまり大きな声では言えないのですが、現在の魔王様に変わられてから色々と悪い方向へと進んでいるのですが、実は私もその被害をこうむっています・・・なので、人間界からの救世主が来られたと言う事ですのであなた方お二人に、是非この世界を救って欲しいと心の底から思っています。」




ミスティーもまた、現在の魔王の悪影響を受けていたのだ!

だが、ミスティーは詳細についてあまり口にはしてくれない・・・

あぁ・・・分かる。私にも、何故、救って欲しいと言っておきながら私たちに大した話を投げかけて来ないのか・・・それは・・・




「これ美味しいね♪私、こっちの世界の料理とか食べられるか不安だったけど、これなら毎日食べても飽きないかも♪ねぇ?クリスティアも食べる?」


「あぁ・・・よく食べるね?・・・彩花ってそんなに大食いだったっけ?」


「ちょっと色々あったからお腹がかなり空いちゃってて・・・えへへ・・・♪」




確かに一見するといつもの彩花の様に見えてしまう。何も企んでもいないし、明るく優しい笑顔のいつも通りの彩花だ・・・だが、ミスティーの表情は穏やかだが彩花を見ている時の目、そして私も引っ掛かっている。先程の魔族、シャールが掛けたとされる魅了魔法・・・それは果たして、ミスティーが言っていた通り相手が解除させるか相手を倒さない限り効果が切れる事は無いのだろうか?

私は色々な事を想定し、彩花と上辺だけいつもの様にやり取りする事にした。




「クリスティア様・・・ちょっと宜しいでしょうか?」


「彩花の事だね?丁度今、彩花は入浴中だから今の内に・・・」


「はい・・・お邪魔します。」




ミスティーも私たちに協力してくれる様だ・・・彩花と私が泊まっている宿の隣の部屋を押さえてくれて、様子を伺ってくれている。

私たちの部屋へ入って来たミスティーは少し考え事をした様な面持ちで早速話を始めた。




「クリスティアは既にお気付きでしょうが、彩花様は・・・」


「やはり君の目から見てもそう思うか・・・あぁ・・・いつもの彩花だ・・・表面上では・・・だけれど・・・」


「はい・・・あれは恐らく私たちを油断させておいてその隙に仲間にさせようと考えているのだろうと・・・」


「だとすれば彼女と共にいるのは危険だな・・・だが行動を別にするのも危険・・・」


「はい・・・仰る通りかと・・・」


「魅了魔法の効果を消す為には奴が直接解除させるか私たちが奴を倒すか・・・」


「実は・・・」


「どうしたんだい?何か他にも手段が?」


「はい・・・実は、昼間は他の魔族たちがいた手前、下手に口に出せませんでしたが・・・」




そう言うとミスティーは更に真剣な表情で私に語り始めた。




「実は私、能力を持っているのですが・・・」


「あぁ・・・魔族にも能力者がいる訳だね・・・それは大方察しは付いていたけれど・・・」


「はい・・・私の能力は攻撃型では無く、どちらかと言うと防御型の能力なのですが・・・」


「まさか!?・・・」


「ご明察通りだと思われますが、彩花さんを元に戻せるかと・・・」


「助かるよ・・・君がいてくれて・・・本当に・・・」




ミスティーの能力で彩花を元に戻せる可能性がある事を知り、早速私たちは作戦を練る事にした・・・彩花がシャワー室から出て来るまでに!?






「あぁ~♪サッパリしたぁ~・・・クリスティアもどう?」


「あぁ!私も浴びる事にするよ!疲れただろ?先に寝てくれて構わないから!」


「うん♪ありがとう!少し疲れちゃったみたいだしお言葉に甘えさせてもらっちゃおうかな?」




不自然に笑顔が多い彩花・・・やはり魅了魔法が掛かったままの様だ!

私は念の為用心しながらシャワー室へ入りシャワーを浴びる。

色々と考えていた・・・

学校の校舎の3階に階段が現れて異世界へ繋がるゲートが開かれる話を聞いた所から私はどうして、どうするべきなのか、そしてそのゲートの先が魔界であったとすれば、それ以降の事を私はどうして行くべきなのかを・・・

大体が想定通りに事が運び、運良く私たちを助けてくれる魔族たちもいる事もあり、何とかこちらの世界でもやって行く事が出来そうな事を考えていた瞬間、彩花に魔の手が襲った。




「ティア?・・・クリスティア?」




考え事をしながらシャワーを浴びていると彩花が私を呼ぶ声がした・・・




「ど・・・どうかしたのかい?・・・」




恐らく私が考え事をしている間に結構時間が経ってしまっていたみたいだ・・・

心配になった彩花が私に声を掛けてくれたのだろう・・・いや、違うみたいだった・・・

私がシャワーを止めて扉側に向いて彩花に聞こえる様に少し大きめの声で会話をしようとした時だった!!




ガシャッ・・・バタンッ!!




「あや・・・か?・・・」


「折角だから背中流すよ?」


「いや・・・狭いし良いよ・・・直ぐに出るから・・・その・・・ごめん・・・」


「私に背中流されるの・・・嫌?」




彩花はうるっとした瞳と湿った薄いピンク色の唇を露わにし、私へ訴えかけた。




「いけない、彩花・・・私たち・・・女の子同士じゃないか・・・」




何を言っているんだ、私は!?そう言う事じゃない、今の彩花は・・・彩花は・・・




「ねぇ?クリスティア?ちゃんと私の目を見て?」


「そ・・・そんなに間近に顔を近づけられると・・・」




罠だった・・・けれど私は彩花のか弱い感じの声色に拒む事が何故か出来ずに彩花の透き通った瞳、そして妖しい瞳を見つめてしまう・・・




「良かった♡・・・クリスティア?どうかな?私・・・ずっとクリスティアに見て欲しかったの・・・ほら、私を抱き締めて?」


「あ・・・あぁ・・・彩花・・・綺麗だよ・・・私は彩花の事を・・・」


「うん、分かってるよ・・・ほら、私は逃げないから・・・ね?」




彩花・・・綺麗で可愛くて、私の大好きな彩花・・・彩花・・・様・・・




「ふふふ♪・・・掛かっちゃったね♡魅了魔法♪」


「彩花様・・・私は・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


「初めて使う魔法だから少し不安定みたいだね・・・」






クリスティア様、大丈夫でしょうか!?・・・

私は話の後、隣の部屋へ戻り様子を伺っていました。

ですが、特に物音も無い感じで眠る時間になったその時・・・




♪コンコンコン




私の部屋の扉だ!!クリスティア様でしょうか?




「はい、今開けますね・・・」


「眠っていたかい?すまない、少し話がしたいんだ♪」


「えっ!?・・・あっ、はい、どうぞ・・・」




おかしい・・・凄く嬉しそうな表情?・・・と言うより蕩け切った感じの表情だ!

もしかして・・・

私は最悪の事態に備えて身構えつつクリスティア様を部屋の中へ通した。




「先程はありがとう!色々と様子を見ていたのだけれど、どうやら何も無かったみたいだよ!」


「そうですか!?・・・では、彩花様は・・・」


「あぁ・・・私の見解だけれど、問題無いと思う!」




先程の凛々しく真剣な表情で今の話をしてくれていたら恐らく私は信じていた事だろう・・・けれど、クリスティア様は様子が明らかに違っていた。

完全に何かに酔いしれている様な幸せそうな表情・・・漫画やアニメで言う所の目にハートマークでも付いているのだろうか?とも思える様な蕩けた目をしていた。




「と言う事だから、彩花にも来てもらったよ?入れてあげても良いかな?」


「は・・・はい・・・良いのですが、少しだけ時間を頂けませんでしょうか?」


「ん?・・・それはどうしてだい?」


「えぇ・・・少しだけお話を続けさせて頂きたいもので・・・」




パァァァァァァ




「おや?・・・結界?・・・どうして結界を!?」


「凄いでしょう?この結界私の能力の1つなんです・・・ですが1人を入れるのが精一杯なものですから・・・ほら、どうですか?とても心地良くなって来たでしょ?」


「あぁ・・・確かに・・・何だか・・・眠くなって・・・zzz・・・zzz・・・」


「やはり受けてしまっていた様ですね・・・何かしらの術が掛かっていると私の結界に入れば眠りに落ちてしまうのです・・・クリスティア様、目が覚めたら元のあなたに戻っています。その後直ぐに彩花様を・・・」




♪コンコンコン・・・コンコンコン




「まずいですね・・・彩花様が待っているご様子・・・」




結界内ですが外の世界と会話が出来る手段は持っている私は彩花様にもう少しだけ待つ様伝えた。そろそろ目を覚まされる頃でしょうか・・・




「ん・・・はっ!!ここは一体!?・・・ミスティー?これは結界では!?」


「はい、無事に元に戻ったみたいですね。続いて彩花様を解除させますので、申し訳ありませんが、シャワー室で待機なさっていて下さいませんか?」


「え!?・・・あ・・・あぁ・・・私は確かシャワー室で彩花に・・・分かったよ、すまなかった。とりあえず私はシャワー室にいるから・・・」




さて、彩花様の番の様です!

私は彩花様をお呼びし、部屋の中へ案内した。




「申し訳ありません。お茶の準備をしようとしていたのですが、こぼしてしまいまして・・・クリスティア様に思いきり掛けてしまったもので先にシャワー室へご案内致しました。」




あまり不自然がられると厄介だから私は、怪しまれにくい嘘をついた。




「大丈夫だった!?怪我は無い?」




えぇ・・・大丈夫じゃないのは彩花様の方です。ですがこの上辺の状況はひょっとして元の彩花様のままなのかもしれませんね・・・

さて、彩花様もちゃちゃっと済ませちゃいましょうか・・・




パァァァァァァ




「あれ?・・・ここは・・・結界?」


「そうです!私の能力の1つなのですが・・・如何ですか?お疲れの彩花様には心地が良いでしょう?」


「うんうん♪凄いよ!!とても心地良くて楽しくなっちゃうな♪ミスティーって凄いんだね!!私もこう言う結界張れたらな・・・あれ?・・・何だか急に眠気が・・・あれ?・・・zzz・・・zzz・・・」


「彩花様、申し訳ありません。少しの間眠っていて下さい。直ぐに元に戻れますので・・・」




ですがクリスティア様とは違い結界に入ってからも話が活発だった・・・きっとクリスティア様には無い強さがあるのでしょうか?・・・クリスティア様も結界に入ってから少し間がありましたが、通常、結界に入り何か術らしきものに掛かっていれば即座に眠りに落ちるのですが、このお二方、やはり・・・只の人間では無かった様です。

このお二人ならきっと・・・魔王を倒して下さる事でしょう・・・




「う・・・ここ・・・は?・・・」


「お目覚めですか?ミスティーです。ここは私が張った結界ですよ?」


「あぁ・・・そうか・・・私、完全に操られていたんだね・・・それをあなたが助けてくれたんだね?ありがとう!」


「えっ!?・・・彩花様、それって!?・・・」




確か魅了魔法に掛かった者は解除された後、記憶が完全消去されてしまうはず・・・なのに彩花様は・・・




パァァァァァァ




「申し訳ありません。元の空間へお連れ致しました。クリスティア様~!!もう大丈夫です!!」


「あぁ・・・分かったよ!!」




お二人が戻られた後、詳細についてお話した。

まだお二人共自身の能力について完全に開花されていらっしゃらない様子だった・・・

しばらくの間は私が彼女たちをフォローして行く必要がありそうですね・・・




「ちょっと頭に来たから面白い作戦で倒そうよ?」




彩花様が何か良きアイデアがあるみたいだった・・・

私たちはその作戦でシャールを倒す事にした。




「彩花様?シャールに操られる前後の記憶がしっかりとあるのでしょうか?」


「うん!あるよ!何かアジトっぽい所へ連れ去られて少しだけ話をした直後顔を近づけて・・・その後私はあいつの事が凄く大好きになってしまって、頭が思う様に働かなくなってしまって・・・」


「そうでしたか・・・では奴のアジトへ行く手段は・・・?」


「勿論♪」


「でかした!彩花!!では、早速・・・シャール様の元へ行きましょう♡」


「えぇ♡・・・偉大なるシャール様の元へ・・・彩花様に招待して頂きましょう?」


「じゃぁ、行くよ♡」




パァァァァァァ




彩花にシャールのアジトへ連れて行ってもらった私たちは、早速シャールの待ち構える部屋へと歩いて行った。




「2人共?シャール様にお会いしたらちゃんと土下座をして「お待たせ致しましたシャール様」とお詫びするのよ?こうやってお連れ出来るまでに時間を要してしまったのだから♡」


「はい・・・彩花様・・・シャール様にお会いしたら土下座をしてお詫び致します♡」


「彩花様のお手間を取らせてしまい、大変申し訳御座いませんでした♡大好きなシャール様と彩花様に心からお詫び申し上げたいくらいです♡」




彩花のアイデア・・・全員魅了魔法が掛かったふりをしてシャールを油断させ、しばらく様子を伺いながら隙を見る。

そして一気に倒す手段だ!!

流石彩花・・・だが、万が一シャールが既に我々が素面だと悟っていたとしたら・・・




「さぁ、この大きな扉の中にいらっしゃるわ♪・・・シャール様、只今戻りました。遅くなってしまい大変申し訳御座いませんでした。」


「彩花だな!入れ!扉を開放する!」




ギギギギギギギギギ~~~・・・




大きな扉が開放され私たちは中へと入って行った。シャール!?よくも私にあんな魔法を掛けて操ってくれたわねっ!!今から100倍返ししてやるんだから!!覚悟してなさいっ!!!




「この度はお時間が掛かってしまった事、心よりお詫び申し上げます。」


「土下座か!・・・中々私に対する忠誠心の強さを感じるな!彩花はまだ私のモノになって日が浅い・・・それにしてはよくやった方だと考えていたけれど・・・」


「あり難き幸せで御座います。これからもシャール様の為に命に代えてでもお役に立てる様に努めて参ります。」


「そして・・・?」


「はいっ!!クリスティアと申します。麗しきシャール様・・・この度は彩花様に堕として頂く所で抵抗をしてしまい、ご計画が遅れてしまいました事を彩花様に成り代わり深くお詫び申し上げます。」


「私はミスティー・・・同じく彩花様に堕として頂く事への抵抗の為、お時間が掛かってしまった事をお詫び申し上げます。」


「そうか・・・お前たちも随分と可愛くなったものね♡では、忠誠を誓う儀式へと移りましょうか?」


3人「はい・・・シャール様♡」


「儀式と言うのは私の靴を舐める事・・・出来るわね?」


「えっ!?・・・あっ!!はい♡勿論ですシャール様♡」


「私も勿論、出来ます♡」


「わ・・・私もです♡」


「それでは・・・そうね・・・先ずは魔族側であると見えるミスティー?こちらへ来なさい?」


「は・・・はい・・・シャール様・・・」


「さぁ?お舐めなさい?」


「は・・・はい・・・それでは・・・失礼・・・致します・・・ん・・・」




嫌だ・・・靴舐めるとかそんな儀式ってアリなのかな?・・・でも今は仕方が無い・・・でも・・・でも・・・臭いよ・・・どうしてこんなに臭いが強いのよ!?


「あぁ・・・私のこのブーツは深いし蒸れやすいから既に1日程履いたままだったからブーツの上からでも臭いが強いでしょ?でも私に惚れている今のあなたなら何ら問題は無いはずよ?さぁ、そのままお舐めなさい?」


「うぐっ・・・は・・・い・・・・・・うぅぅぅぅ!!無理ぃぃぃぃダメです・・・」


「ぷっ・・・ぷぷぷぷぷっ!!あはははははは!!それで演技をしていたつもり?」




まさか!?・・・やはりバレてしまっていたのか!?・・・いや、最初から私たちは素面だと気付いていた?・・・




「さて、そこの2人もどうかしら?このまま匂いに過敏である魔族、ミスティー・・・あなたたち人間なら少しだけ・・・ほんの少しだけ我慢出来るかもしれないわね?やってみる?」


「申し訳御座いません。私の魅了魔法が至らないばかりに・・・勿論、シャール様のブーツへ口づけをさせて頂きます・・・いいえ!彩花にさせて下さいませ♡はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」




彩花!?・・・目がハートマークになっているぞ!?・・・まさかまた魅了魔法に!?・・・

彩花がこのまま続けると言うのであれば私も・・・




「私は身も心も既にシャール様のモノで御座います。このクリスティアも・・・あなた様の綺麗なブーツに口づけを交わさせて頂きます。」


「あらあら~・・・まさか、臭いの強烈さで素面に戻っちゃったのかしら?ねぇ?ミスティー?」


「うぅ・・・」




ごめんなさい、折角の作戦が・・・予期せぬ展開になってしまって私が・・・無駄にしてしまいました・・・




「ミスティー?よ~く見ててね?シャール様の儀式が終わったら直ぐにあなたにも魅了魔法を・・・ちゃんと掛けてあげてシャール様を大好きになれる様にしてあげるから♡」


「あぁ・・・シャール様のモノにしてもらおう?私も協力するから♡」




お二人共・・・目が・・・ハートマークになっていますよ?・・・大丈夫ですか?




「さぁ、お舐めなさい?2人共?」




「はぁぁい♡それでは、彩花行きま~す♡」


「クリスティアも参りま~す♡」


「ふふふふふ♪はははははは♪最高の気分よ?2人揃って私のブーツに口づけをするのだから♪こんな最高の気分は無いわ?・・・てっきり全員素面に戻っちゃったのかとばかり思っていたのだけれど・・・ミスティーだけだったとは・・・彩花も随分と能力が高い様ね?」




パァァァァァァァァァァァァ




「クリスティア!今よ!!」


「あぁ!シャール!!覚悟!!」




デクストリードファーーーーーーーーーーーーーーーム!!!!!!!!!!!!!!!




「何だと!?・・・この光の塊は!?・・・何だと言うのだ!?・・・うぐっ・・・」


「我の聖剣の威力とくと味わえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」




ズバシュッ!!!!!!!!!!!!!グサッ!!!!!!!!!!!!!!!!!




バタンッ・・・・・・・・




「彩花様?・・・それにクリスティア様も!?・・・」


「ミスティー?大丈夫?怪我は無い?」


「えっ!?・・・あ・・・はい・・・私は何とも・・・それより・・・2人共?」


「実は、最初の作戦だと少々甘いだろうなって言うのは見透かしていたんだけど、きっとシャールも色々と感じ取ってるだろうなって思ったから何があっても隙だけは出来る部分があるだろうって考えて、クリスティアとはこっちの世界へ来た時に話をしていたの。だから・・・」


「あぁ・・・ミスティー、すまなかった。君にも先に話を通しておくべきだったのだけれど、全く先が読めない状態だったから・・・」


「いいえ・・・それより今のは!?」


「あぁ・・・これは私の持っている剣と私の精神エネルギー・・・彩花の協力もあって実った技なんだよ・・・本当に奇跡が奇跡を生んだ技だよ・・・」


「・・・・・・・私・・・確信しました!!」


「えっ!?・・・何を?」


「あなた方がいらしたら必ず魔王は倒せます!私が断言致します。」


「そうかな?・・・・でもね?今回の一件は私が油断して連れ去られた事に問題があるんだよ?だから私がシャールに操られてしまって、クリスティアにも手を掛けてしまって、そしてあなたが・・・ミスティーが助けてくれたからこうやってシャールを倒せたの!!だから・・・皆のおかげだよ?」


「彩花様・・・・・はい♪・・・私、全身全霊であなた方をサポートさせて頂きますね!」






シャールを倒し、無事に私たちは再度魔王を倒す為に歩き始めた・・・

のは良かったんだけど・・・




「鼻が・・・臭いが取れません・・・臭いです・・・」


「そうだね・・・私たちでもいまだに臭いが残っているくらいだからきっとミスティーはもっと酷い状態じゃないのかな?」


「全くだ!!普通、魔族たちに忠誠を誓わせる儀式で靴を舐めさせるなど変態染みた行為など行わないと書物には記されていたぞ!?一体あいつはどう言う神経であの様な事をさせようとしていたのだ!!」




♪コンコンコン




私たちがシャールに対して愚痴をこぼしていたら誰かが来たみたいだ・・・




「はい・・・どちら様ですか?・・・ってあなたは!?」


「あの・・・足の臭いが強い・・・シャールと申します・・・その・・・」




えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!聴こえてた!?しかもシャールがどうしてこんな所に!?

まずい、早く倒さないと!!私は急いで扉を閉めてクリスティアとミスティーに告げた・・・

すると閉めた扉の向こう側から声が・・・




「あの・・・多大なご迷惑をお掛けしました事をお詫び致します。ご安心下さい。私はもう元の魔族に戻りましたから・・・」




3人「へっ?・・・」




大丈夫だった様なので、扉を再度開けて、シャールを部屋の中へ入れた。




「と言う事は、シャールも魔王に操られていたって言う事?」


「はい・・・操られる直前の記憶は残っているのですが、その後は3人に倒される直前の辺りの記憶しか・・・ですが私、悪い事をしていた様だったので皆さまにお詫びをと思って・・・えぐっ・・・えぐっ・・・」




泣き出してしまった・・・何だか操られていた時は妖艶でセクシー路線を気取ったお姉さまみたいな印象だったけどこうやって元の姿を見ていると私たちと同じくらいの年代の少女と言った感じだった・・・




「仕方が無い事だよ?君はそれ程気に病む必要は無い!全ては操っている魔王が悪いのだから・・・君は泣く必要は無いよ?・・・ほら、綺麗な顔が台無しになってしまうから顔を上げよう?」


「うぐっ・・・えぐっ・・・は・・・い・・・あの・・・クリスティア様?」


「うん・・・私はクリスティアだ!」


「好きになっちゃいました♡・・・素敵です・・・私とお付き合いして頂けないでしょうか?」




ん?・・・私は少々疲れてしまっているのだろうか?・・・確かに最近彩花との異世界での生活に少々気を張り巡らせていた事だし・・・幻聴と言うのだろうか?・・・今とんでもない言葉を耳にした様な気がする・・・いや、人間界にいる時にも告白と言うものは多々あったのだが・・・この状況下で流石に告白など・・・




「あの・・・クリスティア・・・様?・・・私じゃ・・・ダメですか?・・・」




目の前の幼気 (いたいけ)な少女は目を輝かせながら私に向かってその様なセリフを口にした。


「クリスティア?こっちの世界でもモテモテなんだね!!凄いよ!!って言うかあんな事言われちゃったらそりゃぁ・・・ね?」


「そう・・・ですね・・・凄くお優しいお言葉、それに胸に来る感じが私もします・・・」




どうやら幻聴の様では無さそうだ・・・

つい、無意識に出てしまったセリフだったのだが・・・

そう言えば、この世界には男性が存在しなかった・・・はず・・・

だとすればこの告白はかなり重いものでは!?・・・どうしよう!?・・・

彩花!?・・・助け・・・




「ごめんね?シャール?クリスティアも私も人間界からやって来た者同士だから、一緒になるのは無理なんだ・・・本当ごめんね?」


「はい・・・そう・・・ですよね・・・私・・・迷惑を掛けちゃったのにまた迷惑を・・・」


「ううん!迷惑なんかじゃないと思うよ?こうやって大好きになる・・・無理矢理じゃなくて自然に好きになる気持ちは相手にも不快を与えないから・・・クリスティアも凄く嬉しいんじゃないかな?・・・だから好きでいる気持ちは大切にして欲しいな?」


「彩花・・・さん・・・はいっ!!ありがとう御座います。私、一生忘れません。クリスティア様を好きになった気持ちを・・・だから、また、会って欲しいです・・・」


「あぁ!勿論だよ!また会おう?」




彩花・・・本当に君は最高の存在だよ!!ありがとう・・・彩花・・・

私が彩花に惚れてしまいそうだったよ・・・うん!そう言う断り方があったのだな・・・

うん!私もまだまだ精進が足りないよ!彩花を見習わなければ。




「あの・・・足の臭いはもう大丈夫です・・・私、元々綺麗好きでお風呂にも多い時は日に3回程入りますので・・・」


「えっと・・・・どうやら魔王に操られてから体臭にも変化が生じると言う報告が上がっているみたいです!!」


「流石情報屋ね!!そうだったんだ!?じゃぁ、元に戻れたと言う事は問題も無いって事よね?良かったねシャール?」


「はい♪・・・では、そろそろ私は・・・」


「あぁ!魔王は私たちが必ず倒して見せるから、君も元気でね・・・」


「はい・・・色々とお騒がせしてしまい本当に申し訳ありませんでした。それから・・・道中お気を付けて。魔王を倒される事をお祈りしております・・・では、これにて・・・」




そう言って深々とお辞儀をしてシャールと言う少女は去って行った。

私たちもそろそろ次の街へと向かう事にしよう・・・






「しょっぱなから色々と疲れる展開だったけど、この先どう言う悪い魔族が現れるのか不安になって来たよ・・・」


「いや、きっと大丈夫だろう?・・・今回の一件の様に私たちが協力出来ればきっと上手く行く。私はそう信じているのだが・・・?」


「はい!私はお二方がいらっしゃるだけで確実に魔王を伐採出来ると考えています。」




どう言う世界なのか右も左も分からないまま魔界へとやって来たけど、きっと私たちなら何とかなるよ!待ってなさいよ、魔王!?対魔師の娘として、そして・・・クリスティアのパートナーとして、それから、魔族ミスティーの仲間として、必ずあんたを倒してやるんだからっ!!




「彩花?随分とやる気満々みたいだけれど、次の街まで結構な距離の様だ・・・途中で野宿もままならない・・・大丈夫か?」


「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!野宿ですかぁぁぁぁぁ!?」


「そうですね・・・私たちが今いるのがこちらなのですが、おおよそ5000ペクターですので歩いてだと24時間程掛かってしまうかと・・・」


「5000ペクター?・・・あぁ、単位の事?・・・って言うか24時間も歩き続けるのなんて無理だよぅ~!!!」




私たちの旅はまだ始まったばかりだ・・・

これから先も今回の様な事が多々ある事だろう。けれど、私たちの絆は旅の距離よりも遥かに強く、はっきりとした形で結ばれて行く事だろう。


























第二章 シャールの陰謀・・・彩花の企み・・・そしてクリスティアとミスティーは!? END

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