第39話 第三章 知りたいとは思いませんか、文明がどこから来たのか。(20)
「・・・空間歪曲制御により、光の進路そのものを変えてしまっている。つまりその効果で、物体の表面擬態などではない『根本的な不可視化』を実現化出来ているのだろうと」
「そうそう、それだ」
少将はエアコンを強めて、葉巻をやり始めた。
ここからは、理論的に難易度の高い話らしく、モーデルが引き継ぐ。
「三つ目は防護フィールドだ。これに関しては・・・これも専門家の推測レベルなのだが、電磁波を超高密度の磁束帯にして、防護壁の様に張り巡らせる。彼らは単に『フィールド』と呼称しているが。特筆すべきは、重力波と電磁波の完全制御だろうというところだ。人類はこれだけ科学を進めておきながら、特に重力についてあまりにも分かっていない。にもかかわらずこれだけ制御出来るというのは・・・いったい・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。それが本当なら、世界の勢力図が本格的に塗り替わっちまうぞ。そもそも核によるパワーバランスだって意味を成さなくなる」
内田は、驚きのあまり一気にまくしたてる。
「結果、世界中がキリスト教徒に席捲されかねない。すると反発するイスラム教などの他の宗教が一斉に武装蜂起して、世界は中世暗黒時代の無秩序状態に戻ってしまうってことだって充分ありうる・・・というか、そもそも国家の枠組みすら崩壊してしまう!」
「事の重大さが分かったかね。これは世界秩序にとって、大変な脅威なのだ」
一服やりながらヴォルフ少将が続ける。
「しかし、クーリア・ロマーナがなんのためにそんな野望を?」
「今世紀に入ってからというもの地域宗教紛争が後を絶たない。実際の国境などあまり意味がない彼らにとって、自宗派の生存地域を護ることは最優先事項なのだよ。国境という概念に縛られている我々大国には理解し難いが」
「しかし、それだけでは動機が弱いのでは? 世界の大国たちを敵に回すんですよ?」
「・・・もしかしたらタブレット獲得をきっかけとして他宗派を一掃し、どのメジャー宗教も夢見た『宗教で世界を統一する野望』を抱いたのかもしれんな・・・それが可能だと思わせるほど、タブレットの中身が凄いということだろう」
「・・・・」
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