第28話 第三章 知りたいとは思いませんか、文明がどこから来たのか。(9)

 手渡したトレーナーを上下に着て佇んでいる。さすがにだぶだぶだ。

 いやーしかし。ここで感動してしまった。

 なんたって、ただの使い古したトレーナーなのに、超絶美少女が着るとこんなにかわいいんだもんな!

「美少女って何を着てもかわいいんだなあ」

 思わず心の声が、盛大に口をついて漏れてしまった。

 我ながら結構名言じゃないか?

 それを聞いたヴィオラは頬を赤らめ、俯いてしまった。

「そんな・・・あの、新しい服・・・ありがとうございます」

 その仕草もやはり可憐そのもの。

 そんな細やかな仕草にも感動した。

 仕方ない、なんたって『彼女イナイ歴イコール年齢』なんだからな!

 ホントはいつまでも鑑賞していたかったが、もう夜も遅い。

 自分のベッドにヴィオラを連れて行き、そこで寝かせた。疲れていたのだろう、すぐにかわいい寝息が聞こえてきた。

 俺はリビングに戻って、オールフリーをもう一缶開けた。


【五月十一日 午前六時四十分 神保町 西郷自宅】 

 目が覚めると、ようやく意識がハッキリした感じ。

 わたし・・・タブレットに惹かれて日本にまで来て・・・気が付いたらここにいた。そして、たしかにタブレットがここにあった。

 どこからどうやってここまで来たかとか、記憶が曖昧だ・・・。

 でもいまはスッキリしてる。

「おはようハチ! 昨日はありがとね。ホント助かったあ」

 翌朝、リビングでボーっとしているハチの肩に背後から腕を回し、耳元で話しかける。

「??」

「どしたの? なんか驚いちゃって」

 と言ってはみたものの、どうしたも何もないよね。

 自分でもびっくりだけど、わたしのキャラ、昨日とはまったく変わっちゃってるもん。

「どしたの・・・って。おまえヴィオラ・・・だよな?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る