第27話 第三章 知りたいとは思いませんか、文明がどこから来たのか。(8)

 そうだ、ヴィオラは上下服ともなぜか汚れている。このままではまずかった。

 しかし、もちろんこの部屋に女物の衣服など一切無い。

 ある訳が無い。同棲していた彼女もイナイし、そもそも彼女がいたことも無いのだから。

「いや・・・マジでどうするかな・・・」

 困り果てている俺を横目に見ながら、ヴィオラは行儀良くちょこんと腰掛けている。

 とりあえず、というかこの時点の唯一の選択肢なのだが、俺が部屋着にしているトレーナーを着せようと思いついた。

 そこで、収納ケースからトレーナーを取出し、ヴィオラに渡す。

 だが、ヴィオラはきょとんとしたままだ。

 うむ、いろんな表情が出てくるのも良い兆候だぜ・・・と思うのも束の間。どうやら「着替えるんだよ」という趣旨が通じていないようだ。

 仕方ないので、俺は身振りで着替えを見せる。

「わかりました」と言いながら、いきなり目の前でシャツを脱ぎだした!

「ちょっ、ちょおっと待った!」

 慌てて止めに入ったが、何が問題か通じていない。またしてもきょとんとしている。

「どうしました?」

 おしとやかな淑女という感じで、ゆっくりこちらを見て小首をかしげる。

 仕草のひとつひとつがゆっくりで、とても上品らしさを感じる。

 元はどこぞの上流階級のお嬢様だろうか?

 それにしてもヴィオラって・・・着痩せしているんだなあ。

 だってピンクのブラの内側には、それはそれは豊かな双丘が。

 ほぼ人生初のラッキースケベ(?)に遭遇したんだけれど、このなんとも奇妙な状況だと、うれしいんだかうれしくないんだか・・・複雑だ。

 しかも、彼女はまったく恥じる様子がない。

 もしかして・・・ヴィオラは何かしらが原因で、日常生活の様々な常識とかを含めて、一切の記憶を失っちゃっているのかもしれない。

 そういえば、コーヒー出しても、飲み方すら分からなかったもんな・・・。

 とりあえず、ヴィオラの手を取って隣の部屋に押し込んだ。

 やれやれ。

 しばらくすると、着替え終わったヴィオラが出てきた。

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