第2話 モンペ姿

どういう事!?

私は急いで庭に出て、周りを見渡した。

白いコンクリートの壁が、茶色の木製の壁になっている。

なんで!?


その時だった。

女の子の笑い声が聞こえてきた。

やばい。見つかる。

どこか隠れるところ……


「きゃああ!」

隠れる前に、見つかっちゃったよ。

「あなた誰!?」

見れば、モンペ姿の可愛い女の子だ。

「どうしたの?きゃああ。」

もう一人、女の子がやってきった。

「お姉ちゃん。」

最初にやってきた女の子が、後からやってきた女の子に、しがみつく。

お姉ちゃんって事は、姉妹か。


「あなた、誰ですか?」

こうなったら、もう隠せない。

「私は……」

私が一歩前に出ると、姉妹は一歩下がった。

「私、杉沢蕾って言います。あの……逆にお聞きしたいんですけど、ここってどこですか?」

姉妹は顔を見合わせた。

「ここは東京です。」

「東京!?」

ここが!?閑静な住宅街は?高層ビルは?何もかも無くなっている。


「本当に東京ですか。」

「ええ。」

私は庭に、ぺしゃっと座り込んでしまった。

「もしかして、幽霊?」

「ううん。足があるもの。」

私はその会話を聞いて、後ろを振り返った。

姉妹は、それでもびっくりしている。

「私、幽霊じゃありません。」

「はい。」

「お姉ちゃん、この人。モンペ履いてないよ。」

「本当だ。」

「あなた、どこから来たの?」

「えっ、いや……私も東京の、はずなんですけど……」


確かそうだよね。

自分が分からなくなって、首を傾げた。


「うそ!東京の人なら、モンペ履いてるよ。」

「そんな、男の人みたいにズボン履いている女の子が、どこにいるのさ!」

姉妹は、結構激しい口調で、私を責めた。

「もしかして、外国のスパイか!」

「いいえ!違います。間違いなく日本人です!」

これなら、泥棒に間違われた方が、よっぽどマシだよ。

ああ、これなら言った方がいいのかな。

頭変だと思われないかな。


「自分は、令和からやってきたんですけど、」

「令和!?」

おっ!意外と好反応!

もしかして、私。ただぼうーっとして、田舎に来ただけ?

「令和って、どこ?どこ地方?」

「えっ?」

「だってあなた、今令和から来たって、言ったじゃない。」

ダメだ。どこかの地名だと思っている。

「えーっと、今って……昭和?」

まさか平成だって、高層ビルはあるよ。

「そうよ。昭和20年よ。」

蝉がミーンミーンと鳴く。

それは、終戦の年だった。

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