幕間 設定公開・トゥリィ

 月に一度の令和ダンジョン設定公開。

 ……本編書けて無くてすみません、戦乙女と白狼の書籍化のための校正作業とかその他いろいろありまして……(以下グダグダと言い訳が続くので略


 今回は代々木編で登場した異世界ソルヴェリアの兎耳道士、トゥリイです。

 相変わらず本編にはあまり関係ないので、読み物としてお楽しみください。


◆ 


 21歳女性。

 白い兎耳で、銀色と茶の斑っぽい髪を三つ編みにしています。

 目は種族的な特性で赤味がかっています。小柄で少しふっくらした感じの見た目です。


 獣人は人間と比べて寿命が短いため少し年上にみられますが、彼女は年齢より子供っぽく、年齢ではシューフェンより上ですが、見た目では下に見えます。


 本来ソルヴェリアでは女性は家長にはなれませんが、兄が病死、弟が蟲との戦闘で戦死して、唯一の血族である彼女が16歳で家を継ぐことになりました。

 兎士族の他家から男子を受け入れる手もあったのですが、没落気味だったので誰も婿に来てくれなかったという経緯があります。


 家長になると男子扱いとなるので、男と混ざって武器の稽古などもすることになります。

 その時に道術なんて役に立たないと言われて左耳を半分切られました。このため左耳だけ短くなっています。



 兎士族は古くから道術に才を発揮してきた一族です。

 トゥリィの家門はその中でも攻撃系の戦闘に向いた術に長けた血筋です。


 ソルヴェリアが統一される前は、魔獣討伐や戦争で名を上げてそれなりの地位にいたこともありました。

 しかしソルヴェリアの国体が安定し、肉体的な強さ、武術的な強さが序列になったため、戦闘タイプの道術家は地位が下がり不遇を囲うことになりました。


 武器を取らず戦場で守られている道術師は臆病者である、という風潮はソルヴェリアでは根強くあります。

 また、ソルヴェリアの獣人は総じて身体能力が高いことが逆風になっています。

 余程強力な道術を除けば、詠唱をしているよりは武器で切りつけた方が早いわけです。


 こんな感じで道術師の家系が衰退した結果、道術の訓練技法なども散逸し、ますます道術が弱体化するという悪循環に陥っていました。



 このような感じで長らく不遇を囲っていましたが、10年ほど前から始まった蟲達の侵攻がこの状況を変えつつあります。

 日本にダンジョンが現れたのは4年前ですが、異世界側ではもう少し前から蟲達の侵略が始まっていました。 


 蟲との戦いで兵の被害が大きくなっていることを懸念したシューフェンが、皇帝に道術師の登用を進言。

 これは、彼が日本で檜村の魔法を見たことや、魔討士のことを知ったことが大きく影響しています。


 今までの国内の序列を大きく動かすことから反発も多く、シューフェンとしても失敗したら自分の地位を下げかねない賭けでしたが、すったもんだの議論の果てに皇帝がそれを承認。

 道術師として彼女に白羽の矢が立ち、日本に来ることになりました。


 当初は大して期待されていませんでしたが、代々木の戦いを切り抜けたことで大きく成長。

 ソルヴェリアに帰還後に数々の手柄を立て、瞬く間にソルヴェリア最高位格の道術師に駆け上がりました。


 この活躍は皇帝の覚えもめでたく(脳筋武人タイプだけど強さは公平に尊重する)、皇帝の一声で兎士族の待遇は大きく改善しました。


 こんな経緯もあり、彼女のような出世立身を望んで日本での訓練を志願する道術系の家の若者がソルヴェリアでは数多くいます。

 現在魔討士協会と交渉中ですが、やってくる異世界人の数が多いのは情報管理の面など色々と危険なため難航中です。


 しかし、彼女が大きな武功を上げたとはいえ、伝統を重んじる武術系の家門を中心に道術師を重用することについては反発はまだ根強く、ソルヴェリアの火種としてくすぶっています。



 本人は引っ込み思案で臆病な性格のため、あまり戦闘に向いたタイプではありません。

 獣人ならではの優れた身体能力を持っており、反射神経や動体視力は高いのですが、その身体能力は主に逃げとか避けの方に活用されています。


 飾り帯の先端に石を結びつけた分銅のような隠し武器を使います。

 これは兎士族に伝わる伝統的な武器ですが、あくまで護身用で、自分から武器を使って戦うことはまずありません。


 数々の武功を上げた結果、責任も重くなっているうえに危険な戦闘の場に出ることも増えています。

 皇帝に謁見してお褒めを頂き、家禄も増え兎士族のために働けたことをうれしく思いつつも、戦場に出るのは怖いという気持ちと板挟み気味になっています。


 あわよくば引退して家に入りたいと思ってますが、シューフェンや皇帝の許しが出ないため(というか最強の道術師なので出るはずがない)、いまだに戦闘に駆り出されています。

 活躍する前とは別の意味で不遇な環境と言えるかもしれません。



 趣味は甘いものを食べることと花見。

 

 夫であるフォルレアとはシューフェンの仕組んだ政略結婚ですが、夫婦仲は良好です。

 フォルレアは婚儀の前の宣言通り、戦場では彼女の一番傍で彼女を守っており、戦闘が無い時は二人で良く花見をしています。


 妻と家のために戦う男のために家事をするのはソルヴェリアの女性の名誉ある務めと見做されています。

 ちなみに、料理は得意ですが、裁縫は苦手です。


◆ 


 最後に設定マニアの余談。

 トゥリイの詠唱は

 

「【方位角庚・八卦艮漆・天冽太衝・唵響万里・算命教我・好运来了】」


 最初のフレーズは方位、二つ目は八卦と数字。最後の二フレーズは定型文です。

 方位はかのえ、卦は艮の七、(中略)、天命曰く、我らに吉利あり、位のニュアンスです。

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