第148話 幕間 代々木訓練施設・グラウンド

 どうも。お待たせしてます。

 とりあえず幕間だけです。続きは年内には連投したいと思ってます。できれば5話以上で、場面の一区切りまでは。


 今回は一章以来の登場、甲類5位の槍使い、如月視点です。

 片岡君に絡んで一蹴されただけなので、殆どの人は覚えていないと思います。どんな奴かはお手数ですが一章を読んでみてください。



 誰かの悲鳴が上がった。後ろを振り向くとパーティの仲間の一人、森下が体勢を崩している。

 覆いかぶさるように巨大なアリが襲い掛かろうとしていた


「危ないです!」


 バカでかいドアのような板を持った女の子がアリと森下の間に割り込む。

 無茶すんなと思ったが、板が重い壁のようにアリの進撃を押しとどめた。押し寄せてきた人間サイズの巨大なアリの体が板にぶつかってひしゃげる。


「伸びろ!」


 手に持った槍が伸びてアリをぶち抜いた。射線上のアリが槍に貫かれて次々と倒れる。

 女がデカい板を振り回すと、薙ぎ払われるようにアリが吹き飛んだ。

 アリが警戒したように遠巻きに距離を取る。脳みそは蟲並みでも警戒心くらいはあるらしいな。

 

「おら、サッサと立て、森下」

「助かった如月」

 

「当然だろ、リーダーとして。リーダーは仲間の面倒見るのが当たり前だ」


 森下が両手剣を持って立ち上がる。危ない所だったな。


「そっちのお前もナイスカバーだ」


 メガネ姿に、長めの髪を後ろで丸く編み上げた小柄な女が疲れた顔で頷いた。

 マフラーにもこもこした紺のフード付きダッフルコート。

 背丈から見て高校生っぽいが、使ってるのはデカいドアのようにしかみえない四角い板。

 それを軽々と振り回して戦ってる。なかなかいい動きだな。

 

「こんなことで死んじゃつまんねえぞ、お前ら。

こいつらを守り切ったら魔討士協会から功績点も金もがっぽりせしめてやろうぜ

突然のこんなダンジョンで一般人を守ったなんて大手柄だろうが。テレビのインタビューでどう答えるかを考えとけよ」


 周りはアリとか芋虫のような蟲と、地面から伸びた小さな木のような魔獣に囲まれている

 円陣を組むように迎え撃つ俺たちの中には、能力無しの親子連れだのが15人ほどだ。


 見た感じ施設の外が木のような壁に囲まれている。外からの援軍はまだかかりそうだ。

 それに施設の方からは援護が来る気配も無い。

 あっちはあっちで戦ってるんだろうが……あっちの方が魔討士は数が多いはずだ。さっさと援護に来いや。一体なにやってやがるんだ。


「おい、遠藤、お前は金貰ったら何したいよ?」

 

 さっきから倒しても倒しても敵が減らない。

 終わりが見えないってのは気が滅入る。それに戦い続けて全員かなり疲れが見える。

 だが今は疲れたとか言ってる場合じゃねえ


「そうだな……車が欲しいね。欲しかったオープンカーがモデルチェンジしたからさ、オプションフル装備でほしい。ディーラーで現金一括で」

「帝国ホテルのスイートに彼女を連れ込みたいな。それか二人で旅行。沖縄とか良いな」

「ふざけるな。陽キャは切腹しろ。俺は取り合えず金があればいい。使い方はあとで考える」


 パーティの仲間たち、森下と遠藤、黒川がそれぞれ答えてくれる


「いいじゃねぇか、そのくらい余裕だろ……おい、そこの女、お前は何が良い?」


 板に縋りつくように縮こまってるそいつに声をかける。


「わたしはもう帰りたいです。痛いし怖いし……もう嫌」

「そうじゃねぇ、報酬貰ったら何したいかって聞いてんだよ」


 そういうとその女が首をかしげて考え込んだ


「かわいいコスメとアクセサリーが欲しいかな……あと74シュトルムのコンサートに行きたいです」


 シュトルムは確かアレだな、関西のイケメンアイドルグループだったな。

 大学で誰かが言ってた気がする。


「しみったれたこと言うなよ。魔討士協会にコンサートの最前列のチケット取らせろや。

で、札束バーンと積んで新宿伊勢丹の一階の美人の店員につかせて一番あうコスメでも選ばせろ。お姫様みたいに扱ってくれるぞ」

「でも私まだ魔討士じゃないんで」


「そうなのか?」


 随分動きが良かったが。


「私まだ高校一年です。それに能力があるってわかったの、1週間前なんですよ。今日もちょっと様子見に来ただけなのに……それなのにこんなのになってもう」

「そういうことか、まあ安心しろ。俺が責任もって金も功績点も魔討士協会に捻じ込んでやる」


 まだ未登録なのによく動けてやがるな。いい度胸だ。

 しかし高校生か……高校生魔討士とかいうとクソムカつくあいつを思い出す。


「しかし目覚めたてのくせに中々センスがいいじゃねえか、度胸もあるしな。

なんなんだ、その能力は」

「盾なんですけど重くしたり軽くしたりできるみたいです、よくわかんないですけど」


 成程な。

 四角いドアにしか見えなかったが、良く見ると裏側には持ち手がついていて、表側には四分割された十字架のような枠とそのなかに何かの紋章のような模様がある。


 体よりデカいのを小柄な体で妙に軽々と振り回したり、と思ったら地面に立ててアリどもを止めて踏ん張ったりしてるからどういう仕組みなのかと思ったが、そういう能力なのか。


「おい、お前、名前は?」

「栞です……鈴森栞すずもりしおり


「登録したら俺のパーティに入るか?俺についてこれば稼げるぞ」

「……考えておきます」


 鈴森が言ったところで、施設の屋上の方から何か大きい物がつぶれるような鈍い音がした。

 何が起きたかわからねぇが……屋上からぞろぞろ降りてきてきたアリの群れが減ったように見える。


 何だか知らねぇが少しでも敵が減るなら有難いな。

 そういえば、さっき上の方を銀色の何かが屋上の方に飛んで行ったが、ありゃ一体何だったんだ。


「まあいいが……おい、いいか。魔討士をどうせやるならつくパーティを間違うなよ。命張るんだから下らねぇタダ働きとか能力の安売りはするな。

俺のパーティにはいるならチマチマバイトなんてする必要なくなるぜ、覚えとけ」


 鈴森が分かったんだか分かってないんだか、微妙な表情で頷く。

 一度減った蟲どもがまた数が増えてきて包囲を狭めてきた。改めて槍を握りなおす。


「じゃあ御褒美がイメージで来たところで、気を取り直してもうひと踏ん張りすっか!死ぬなよ、お前ら!」

「おうよ!」

「がんばります……」


 最近停滞気味で5位でグダってたが、まだランク上げて成り上がってやる。

 俺はこんなところで留まる男じゃねぇ。俺は、こいつらともっと上に行く。



 甲5位の如月は伸縮自在の槍の槍使いで突きを軸にして戦うキャラです。

 一応上位帯で態度が偉そうで金にうるさいけど、自分の仲間は大事にする面もあるキャラです。


 鈴森栞はキャラ募集に応じてくれた方のキャラです。

 某ソシャゲの謎のヒロインっぽい高校一年生。


 軽くしたり重くしたり重量を変えられるドアのような巨大な大楯を作り出して操る能力。

 重くして地面に立てて敵を足止めしたり、軽くして振り回して盾での叩きつけシールドバッシュをすることができます。


 能力に目覚めて数日ほどで、まだ魔討士の登録は無し。正式登録したら乙類になるでしょう。

 魔討士とはどんなものかと訓練施設に来たときに巻き込まれた、気の毒な人です。


 普段はおっとりしてて戦闘向きではありませんが、いざ修羅場になると冷静に対処するメンタルを持つ、戦士としての才能があるタイプです。


 募集キャラは引き続き受付中ですが、プロットが固まりつつあるので応募はお早めにお願いします。

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