L部 ~Literary Club

第1話 推理小説

「おい。下僕。暇である」


 文芸部にいかにもありそうなテーブルで推理小説を手に持とうとした瞬間。いつの間に背後にいた部長の葵から、弘樹は無視して椅子居座る。


「よいしょっと」


 大判円形のクッションは昨日。部長が遊んでいて破れていた場所がいつの間にか治っている咲ちゃんが直してくれたのかな。


 それから、リラックスできる空間でページをめくる。


「犯人は誰なんだろう? 殺された奥さんの夫? いや、友人? 裏の裏を読んであの人かな?」


 推理をしながらこの先の展開を予想にかかる。


「おい! 下僕」


 ここで展開が変わった。もう一度推理しなければ。


「おい! ヒロ」


 これだと矛盾が生じる。 これもダメかな。 練り直さないと。


「・・・」


 無言になっていくこれは部長がイラつきのさらに奥に行っているサインだ。

 ここまで無視を貫いていたが、それをこのまま続けると身の危険に晒される。


 この高校に転校してきて三ヶ月、最初は友達などができず苦労をしたけど、今は何とか充実した日々をおくっている。


一つの事を除けば。


「はい、部長なんですか? 今本を読んでいるので手短でお願いしますよ」


 部長と目が合う。無表情だ。


 表すんだったら、夫が不倫していること偶然に知ってしまい、その時は悲しみに陥ってしまうが、、だんだんと夫に怒りが芽生えてきて復讐を決めて平然と夫と一緒に過ごし、この顔が崩れる時の顔を想像に胸を躍らせているかのような目だ。


「・・・」


 じっと見つめあう。これが両想いの愛のこもったものだったら尚よかったのに。


「ぶ、部長…?」


「なぁ、ヒロ」


「は、はいっ!」


 部長の声を聴いて、緊張して声が裏返ってしまった。


「この推理小説。 実は私読んだことがあるんだ」


 しみ一つない白い手が伸びてきて、弘樹の本を取った。


 部長の手は素早くページをめくる。シュ シュ シュ シュと音が鳴る。


「返してくださいよ。 まだ途中なんですから…」


「この推理小説の犯人は実は意外な人物だったんだよな」


 ゴクリ 


 この人はこの世で最もやってはいけないことをやろうとしているのか? まさか、流石に部長も人の子だ。そんなことをするわけではない。でも、心の中にはやりかねないと思ってしまう自分もいる。


「ま、まさか」


「実は犯人は・・・」


 弘樹は動き出す部長の口を塞ぐために手を伸ばすが、予測していたのかこちらの手を払いのけ反撃しようと蹴りをいれようと高く脚を上げるが、体勢を崩してしまい部長は弘樹に覆いかぶさる形になってしまう。


 部長の女性的な所があってしまい弘樹は顔を真っ赤にする。


「は、早くどいてください」


 部長も同じく顔を真っ赤にしている。


「わ、わかってる」


 すると、ごろごろごろとドアが開く音。


 二人は悟った、この展開はよくラブコメで現れる。回避不可能。


「えっ?」


 ドアを開けた後輩の朱璃は素っ頓狂な声を上げて、恥じらうように顔を真っ赤にさせた。


 この空間三人が顔を真っ赤にするカオスの状況になってしまった。


「く、くるしい……っ」


「お前を殺して、私は生きる」


「お、おかしい……」


 狂ったような目で馬乗りになり、首を絞めてくる。


 朱璃が止めに入ってことを終えた。


 三分後。


 テーブルに三人は座る。向かいに部長。隣に朱璃がいる。


「はぁ、はぁ、朱璃ちゃん。事故ってことは理解してくれた?」


「はいぃ そうとは知らず、恥ずかしいです」


 恥じらう朱璃に弘樹は頭をなでる。


朱里は幸せそうな表情をしている。


「結論からすべてヒロが悪い。以上」


「それは、部長が犯人を言おうとしたから」


「私はお前が犯人知りたがっていたから言おうとしただけだ人さまの善意を無下にしたのはお前だ」


 二人はがやがやと言い争いをする。


 ここで朱璃は頭をなでられた感触を堪能していて二人の会話が途切れ途切れしか聞き取ることができなかった。


「ヒロ先輩はこの本の犯人が知りたかったんですか?」


 弘樹は部長との取っ組み合いを中断して、頷く。


「う、うん」


 条件反射で返事をしてしまった。


「そうなんですね!! 犯人は夫の弟ですよ」


「へっ?」

「はぇ?」


弘樹と部長のその場で固まる。


 朱璃の眼はキラキラしている。褒めて褒めてと犬の耳や尻尾が見える。


「ヒロ先輩!ヒロ先輩!」


「あ、ありがとね。 助かったよ」


「はい!」


 弘樹は悲しみながらも、朱璃の頭を撫でた。

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