御伽の国の空想少女(メルヘンガール)

柳澤永松

御伽の国の空想少女

プロローグ

「ここで私達がうまれたんですね」



 夜も更けた閑静な住宅街の一軒家、二階の一室は殺風景で飾り気のなく漫画本や筋


トレ道具などが散らばった男の部屋という印象を強く持たせる。そんな部屋に似つか


わしくない、可憐な少女達が三人。一人は興味津々といった具合に部屋を見回してぽ


つりとそうつぶやいた



「改めまして、私はプラセです!私達空想少女メルヘンガールは、貴方を狙う刺客から貴方を守るために御伽イデアの国からやってきました」



 自らを空想少女メルヘンガールと名乗り、御伽イデアの国から来たなどと


嘯くプラセという少女、荒唐無稽で現実離れした話に結び付けられるように、現代の


普段着からは大凡おおよそかけ離れた装飾華美なピンク色の服飾とツインテール


の髪を見せつけられては、大半の人間がむしろその言葉に疑念を抱かずにはおれない


であろう。



「意味不明な作り話を大真面目に語っている危ない女達…と思うのも無理はありませんわ」



 両目を瞑りながら隣で思案をしていた少女が金の長髪を靡かせながらこちらに顔を


向け目を見開き、神妙な面様おもようでそう答えた、年の頃はプラセよりもやや


大人びた印象で、体の起伏によりフリルの衣装にしっかりもたらされた陰影か


らは少女性と母性の入り混じった独特の様相を醸している。



「…ヘンネの言ってる通りだけど、プラセの言ってることは全部嘘偽りはないよ」


 先程からこちらをじっと見つめている少女がようやく口を開いた、ボブカットほど


の青いショートヘアで、身長はプラセと同じくらいであるが、体格がやや細く実際の


背丈よりも少し小さい印象を受ける。こちらもまた飾り気の多いフリルの付いた服を


身にまとっている、男の目をしっかりと見据えるその目つきに敵意や警戒心などはな


く、むしろ興味を抱いているような印象を与える。



「私もヘンネもオピスも、大和くんを狙う者たちを守るためにここにいます。先程のように…」



 そう、大和と少女たちの邂逅はその日の夕暮れまで遡る、大和がこの現実味のない


戯言たわごとのような話を黙って聞き入れているのには、確かな理由があった。

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