スマホ家のススメ
やまもン
週刊・スマホマガジン
スマートフォン、通称スマホ。
それ一つで手の中から世界に繋がる文明の利器であり、もはや我々の生活とは切っても切り離せない存在である。
しかしながら、我々が往々にして忘れていることがある。余りにも身近でありふれているが故にそれに気が付かない人もいる。それは、スマホは硬いということだ。
手元にスマホを用意して欲しい。拳で殴るとどうだ?見事に衝撃を返してくるではないか。ご覧の通り、スマホは硬いのである。
ここに一人の男がいる。彼もスマホの硬さに気がついた一人であり、スマホを武道に使い始めたパイオニアである。早速話を聞いてみよう。
Q.スマホを武道に使おうと思ったきっかけは?
A.私は道場の息子でした。子供の頃は大勢のお弟子さんがいたのに、私が継ぐ頃になると訓練場は閑散としていたのです。当時は護身術を教える道場が人気でしたから、これ幸いと私もブームに乗っかることにしたのです。しかし、入門者は増えなかった。私なりに独自性を出そうと口からタピオカを飛ばしたり、両手にドライヤーを持って演武したりしたのですが……。
Q.それで?
A.ええ、どういう訳か入門希望は増えず、私はすっかり自棄になってしまったのです。毎日スマホをいじる日々でした。ところが、ある夜のこと、布団横の棚に置いておいたスマホが寝ている私の顔に落ちてきたのです。その衝撃で目を覚ました私はこれを天啓だと思いました。落ちてきたスマホを振り、自分の顔にバチコンと当てました。スマホを床に置いて殴りつけました。とても痛かったのですが、恐らく私は暗闇の中でニヤけていたことでしょう。最高の気分でした。この鈍痛ですら天からの祝福に違いないと思いました。
Q.……。
A.スマホは硬かった。とても軽くて、硬かった。私は翌朝から行動を開始しました。携帯ショップで格安のスマホをいくつも買い、武道に活かす方法を考えたのです。まず思いついたのは防具としてのスマホです。例えば手の甲にスマホを装着すればナイフを弾くことが出来ますし、股間に装着すれば即席のホールカップとなります。
Q.武器としては……?
A.もちろん使えますよ。ただ、あくまで護身術なんで、スマホを武器として扱うやり方は一般公開してないんです。どうしても気になる方は我が道場の中級門下生コースに入門いただければお教えできますよ。
Q.特別にちょっと公開してもらっても……?
A.うーん、まあいいですよ。ごく初歩的なものですけど、二つお教えしましょう。一つ目はスマホをおでこに装着するんです。そのまま頭を振りかぶり、頭突き!これで大体の相手は沈められます。二つ目は指の第二関節と第三関節の間にスマホを装着し、がむしゃらに殴る方法ですね。メリケンサックのように使えますよ。他にもスマホを振り下ろす時に注意すべき音量ボタンの位置とかいろいろありますんで、気になる方ぜひ中級門下生コースを申し込んで下さい。
Q.随分実戦的ですね。
A.そうですかね。もっとエグい技もあるんですけどね。例えば、至近距離でスマホのライトを浴びせて目潰ししたり、カメラの音を使って間合いをズラしたりも出来ますよ。おっと、話しすぎちゃった。もしそういった超実戦的な技を知りたい方は上級門下生コースへご入門ください。
Q.ところで、スマホは自費?
A.一部コースは自費です。申し訳ないんですが、流石にスマホは高くて……。上級門下生までは訓練でスマホが壊れることもないため、普段使いのスマホをご利用いただけますし、万が一壊れたとしても修理代まで出せるんですが、それ以上のコースになるとスマホを壊す前提の技が出てきまして、申し訳ないんですが自費負担という形になっております。
Q.壊れる前提の技?
A.ええ!そうなんです!超上級門下生コース以降で学ぶ技は殺傷能力を高める為、スマホが壊れる技も扱います。護身術というより武器としてスマホを使っている感じですから、携帯会社と契約を結び、携帯としての機能を省いた改造スマホを使用しております。もしよろしければ、こちらの小説『必見・神ってるスマホ術』をどうぞ。中々面白いですよ。
Q.パラパラ、技がモロバレしてますけど……。
A.大丈夫です。そのレベルの技になると見ただけじゃ絶対に出来ませんから。ちゃんとウチの道場で師範代達に揉まれないと、ね。きょうみがある方は是非、超上級以降の門下生コースにご入門ください。
Q.今日はありがとうございました。
A.いえ、ところで記者さんはこの後暇ですか?午後3時からウチの師範代がスマホ演武をするんで良かったらどうぞ。さっきの小説に乗ってる技もいくつかありますし。
Q.興味ないです。
A.まあまあそう言わず。この演舞の後三十分以内のお申し込みなら入門金がタダになるんですけど……。
次回予告『必見・神ってるスマホ術』本編
今、スマホに捧げる青春が始まるっ!
1/13 夜11時公開
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