第40話 夜も眠れません

「何それ……?そんな訳ないじゃない。私は卒業したら、ルシフのお嫁さんになると決めているの。国王になんてなる気ないわよ」


「ですよね」


「おい、待て」


リリーとリブラのやり取りに、ルシフが焦って口を出す。

何時の間にそんな話に?!

いや、リリーを娶る約束はした気もするし、そこに否は無いのだが……

かといって、王の継承問題を放置する気も無い。

それはそれでちゃんと解決した上で……


ルシフの気持ちに気付いたのか、リリーは微笑を浮かべ、


「大丈夫よルシフ……王なら、リブラがいるじゃない」


「待ちたまえ?!」


リブラが大声で叫ぶ。

リブラが取り乱すのは珍しい。


「……ならスピカ」


「バカなの?!あり得ないよ!」


スピカが叫ぶ。


「……ディアナ」


「私はリブラさんを推します」


「そうよね、やっぱりリブラよね」


「待ちたまえ!!」


ちなみに、生徒会の仕事がたまりまくった結果、史学部総出で手伝っている。

……リブラ、スピカ、シリウス、ディアナが主戦力。


「……まあ、その話は今度また、じっくりするとして……何故きみの所信表明の話が出回っているのかね?」


「さあ……想像もつかないわね。根も葉も無い噂よね……」


「火の無い所に煙は立たぬ、と言うがね。何か心当たりは無いのかね?」


「全くないわ」


リリーが断言するからには無いのだろうな。

なら……


ルシフが、ぽつりと言う。


「何か……裏で手を引いている奴が……いる?」


「……やはりそうか……」


リブラが溜息をつく。


「何にせよ、会長。きみの事は、学友と思っている。きみだけに責任は負わせない。何かあれば、頼って欲しい」


「勿論よ。どんどん巻き込むし、ばんばん助けて貰うわよ」


リリーは、微笑む。


何でも抱え込んでしまうトップよりは、どんどん人を巻き込むタイプの方が、遥かにマシだ。

その点では、リリーは安心出来る。


ルシフは、そう思った。


--


ルシフが街を歩いていると。

街頭演説が聞こえてきた。


賤混者ハーフは危険です、賤混者ハーフの追放を。賤混者ハーフに栄誉ある安楽死を。純人間ピュアの、純人間ピュアによる、純人間ピュアの為の国を取り戻しましょう」


この街に来てから、何度も耳にした演説だ。


国の方針には反するが、思想表明の自由は許されている。

拘束される様な事は無い。


「考えてもみて下さい……純人間ピュアに比べて、賤混者ハーフは力が強く、魔法が強力で……その気になれば、一瞬で街を消し炭にする事が出来る者達……同じ街にいる……それだけで、安心して夜も眠れません」


いや、あんた寝てるだろ。

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