第30話 待ってません

今日も部活、みんなで調べた内容を発表しあう……ルシフは、ちょっと楽しみにしていたのだが。

珍しく、リリーが遅れている。


「ディアナさん、何か聞いていないですか?」


ルシフが尋ねる。


「すみません、教室ではあまり親しく話さないので……王女陛下は人気がおありになるので」


……取り巻きが沢山居るので、割って入るのが大変なのか。


「私が出る時も、数名と話されていたので、それが長引いているのかも知れませんね」


「ふむ……様子を見てこようかな」


別に、賤混者ハーフがAクラスに行ってはならない、という決まりはない。

表向きは。


好奇の目を受け流しつつ、Aクラスへと足を向ける。

クラスメートと話していたリリーがルシフに気付き、


「ルシフ、迎えにきてくれたの?」


「ああ。忙しかったか?」


「いえ、話はもう終わり──」


リリーと話していた少女、赤髪のツインテールの女の子が、ルシフに向かって、


「貴方!賤混者ハーフが神聖なる学び舎に何の用なの!」


Aクラスだけじゃなく、学び舎ときたか。

賤混者ハーフ差別主義者。

ロマニアでも珍しく無く、外国ではほぼ確実にそうだ。


「すまない。友人を迎えに来ただけだ」


「アンナ、彼は私の大切な人なのよ。あまり失礼な事を言わないで」


「お姉様?!」


アンナが驚愕の色を浮かべる。


「お姉様がお優しいのは分かっておりますが……少しは区別を覚えて下さい。その……不用心が過ぎますよ?」


「アンナ……ロマニアでは、賤混者ハーフ純人間ピュアは平等……」


どよ……


アンナだけではなく、周囲がざわめく。

平等ではない。

ちょっと……いや、大分賤混者ハーフに優しいだけだ。

迫害しない、駆除対象にしない……それだけでも、賤混者ハーフにとっては天国。


「行きましょう」


リリーが、ルシフに、嬉しそうな笑顔を向ける。

アンナが、視線だけで殺せそうなくらい、ルシフを睨む。


「ああ、みんな待っている」


ルシフも、リリーに何気無く頷く。

迫害や敵視には慣れている。

祖母のもとを訪れた外国の使者も、基本的には……いや、全員、ルシフに殺意を向けていた。

流石に、祖母の怒りを買う危険を冒してまで、ルシフに危害を加えようとする者はいなかったが。


--


「みんな、待たせたわね!」


「いえ、その様な事は」


リリーの入室。

ディアナは、首を振って否定。


「同行者……確かに、言われてみれば、天才と謳われた者達が同行したのに、リオン様の話ばかりですね」


リブラが、思案気に言う。


「本当に待って無い?!」


リリーが、驚愕の声を上げる。

既に情報交換を始めていた様だ。


ルシフは、再度情報提供がある事を祈る。

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