第26話 禁書架
「此処を調べるわよ!」
リリーが指し示す先。
生徒会棟。
独立した建物、豪華な装飾……生徒会への畏怖強化に一役買っている。
学園と生徒が対立した時には、実際に砦として抗争した事もあった。
検閲の結果収集した物、独自に調査した物、その他……多種多様な資料が保管されている。
「生徒会棟……特に結界の類は感じられないが、隠蔽されているのか?」
「貴方、ただの学園施設に何を求めているの……?普通に入れるわよ」
リリーが、扉の鍵を開ける。
「一般生徒が入っても良いのか?」
「生徒会役員が許可すれば大丈夫よ。と言うか、書架はともかく、大抵の場所は普通に入ってくるわよ。役員がいない時は鍵をかけてるけど」
リリーは、ルシフを見て、
「それに、今後ルシフにも色々手伝って欲しいし。生徒会の仕事、結構大変なのよ」
「激務なんだな」
まあ、忙しければ手伝っても良いか。
ルシフはそう思う。
戦力になるかどうかは別として。
建物は、侵入防止の結界は設けられていないが。
素材は堅牢な物、強化の魔法も刻まれていて、学舎よりは堅牢になっている。
演習棟、部活棟はより強固なので、学舎が貧弱なだけだろうか。
教室で魔法で喧嘩とかが起きたら、あっさり倒壊するが、どうするのだろうか?
「……ほう?」
ルシフが、壁の前で立ち止まる。
「流石ね、ルシフ」
リリーが、微笑む。
幻惑の魔法で隠された、鍵付きの扉。
カチリ
リリーが鍵を開け。
現れる、地下への階段。
「此処が……書架……」
「いえ、此処は緊急時用の脱出口。書架は生徒会役員室の奥よ」
「何故開けた」
特に意味は無かったらしい。
カチリ
再びリリーが鍵をかけると、幻惑の魔法が発動。
扉が隠れた。
生徒会役員室。
その奥。
棚がずれて現れた扉。
「封印書架、本来は生徒会役員部外秘なんだけど」
キイ……
雰囲気で分かった。
所々……存在してはならない物がある。
「国家指定の焚書すべき記録、裏取引、国の汚点……歴代生徒会長に鍵は伝えられるけれど、それは資料を新たに封印する為……決して閲覧してはならないとされる……」
見て良いのか?
ルシフはツッコミたい衝動に駆られる。
中には、整然と収められた資料と、白装束を纏った少女──魔物……精霊?
ルシフと目が合うと、ぱちくり、と瞬きをする。
「あの娘は?」
「あの娘はルゥちゃん。この書架を管理している精霊?なのかな」
「精霊付きの書架かあ」
ルシフは、書架に足を踏み入れ、
「資料を見ても良いのか?」
「貴方は資格が有る。ご自由に閲覧下さい──ただ」
ルゥは、困惑した様な表情を浮かべ、
「王城の封印書架の方が、遥かに充実していますが、何故此処に……?」
「お祖父様には内緒で調べ物があるのよ」
「はあ……深くは詮索しませんが、所詮学生が集めた資料、期待する程の内容は無いですからね」
ルゥは、うろんな目でそう言った。
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